第1202回 なんで勉強ってするの?
父と娘の対話 第六夜
ねぇパパ、なんで勉強ってしなくてはいけないの?
どうしてそんなこと聞くんだい?
だって学校で習うことって社会で役に立つことほとんどなくない?
それはどうかな。
パパは役に立っているの?
学校で勉強することの意味は大きく分けて二つあると思うんだ。
二つだけ?
まず一つ目は知識とか考え方。
まさに習っていることそのものってことね。
そう。確かにこの中には実際に役に立たないこともある。
でしょでしょ!
でも知っていた方がいいことばかりだよ。
それは知らないよりはね。
「知識があると世界の解像度が上がる」って表現好きなんだけど、伝わるかな?
解像度って画像の鮮明さ、みたいな意味?
そうそう。例えば道端の花をよく知らないと「雑草」としか認識できないかもしれないけど
どういう種類で、どういう生態で、どういう経緯でここに生えているのか
それを知った上で見るとちょっと違って見えるよね。
昔から和歌に詠まれるくらい日本人が愛してきたんだ、とか
とっても綺麗だけど外来種で在来種を駆逐して生態系に悪影響を及ぼしているんだ、とか
知らなくたっていいけど、知っていたら世界が豊かになる、
知識があればあるほど社会は面白いと思うんだよね。
確かにそれはそうかもしれないけど「知識があった方が社会が面白く思える」って実感できる人ばっかりじゃなくない?いやいや覚えさせられるとか苦痛だし。
うーん。みんなに興味を持ってもらって勉強が楽しくなってもらえるのが一番いいんだけど、現在の学校教育にそれを求めるのは酷だとは父さんも思う。
ちなみに学校で勉強する意味のもう一つは?
まさにそれだよ。辛くても頑張ることで得られる達成感とか自己肯定感とか。
ちょっとよくわからない。
義務教育は特にそうだと思うけど、反復して覚えることで
点数がついたり、順位がついたりするでしょ?
自分が頑張ったことが明確に数値化されて評価されるって社会ではそうないことだからね。
そうなの?
テストみたいに出題範囲が決まってたり、正解が決まってたりする問題はむしろ珍しいんじゃないかな。
問題がどこにあるか、からはじめなければならないことも多いしね。
うーん、なんとなくはわかるけど。
例えば社会で課題とされていることが何か、って考えるところから始めてみようか。
わかりやすく、ゴミのポイ捨てとかどうかな。
それが社会課題なの?
それはそうさ。マイクロプラスチックって言って環境に悪影響を及ぼすことがあるし、景観を損ねることにもなるよね。
そんなの簡単に解決できないじゃん。
だからって誰も何も行動しなければ、社会は役に立たないよ。
それもそうだけど。
じゃあ、ゴミのポイ捨てに対して自分ができることって何かある?
とりあえず近所のゴミを拾って分別して捨てるとか?
それは確かにいいことだけど、自分一人で拾えるゴミなんて高が知れているから。
じゃあどうするっていうの?
それを考えるのが社会課題解決だよ。とりあえず一つの解として例をあげると
みんながゴミを拾いたくなるようなアプリを開発する、とか。
何それ!
もう実際にその活動が行われているのさ。詳しくは自分で見てみて。
もちろんこれが最適解かはわからないし、唯一ではもちろんない。
点数もつけられないし、決まった答えがあるわけではない。
でも考えて、試行錯誤して、行動すれば何かしらの評価を受ける。
大人になって社会に出てからはできることは増えるけど、失敗したときのリスクも大きくなるし、学校で練習できることはすごくいいことだと思うよ。
うーん。確かにそうだけど、私が求めていた答えとはちょっと違うかな。
そうか。じゃあこの答えに点数をつけるとすると?
45点くらいかな!
これは手厳しい。次回はもう少し点数が上がるように頑張るよ。
でもこんなやりとりができるのは、父さんも怜香も同じような学校教育を受けているから、だと思うよ。
そうかもね〜
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