第153回 考古学に期待されていること
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1、考古学を哲学する**
Twitterのフォロワーさんのつぶやきに触発されて
を読みました。
考古学に対して、哲学から、思想から何を言えるのか、というテーマの対談や
考古学者が自明のごとく使う「遺構」「遺物」という言葉に対し疑問を呈し、「考古学的痕跡」とは何かを考察する論考など
色々整理して理解したいテーマが盛りだくさんですが、
中沢新一氏と山極寿一氏の対談を紹介したいと思います。
2、叡智と精神
テーマは「生きられた時代を復元できるか」
中沢新一氏は人類学者というか宗教学者というか、簡単には表現できませんが、人の心を研究している学者です。
個人的には中世史研究者の網野善彦氏の甥にあたり、網野氏の研究の影響も受けていることが印象に残っています。
一方の山極寿一氏は伝統ある京都大学の霊長類研究所の出身で、ゴリラ研究の第一人者。現在京都大学の総長を務められています。
対談の前半はその霊長類研究所の創始者でもある今西錦司氏の研究の淵源が、西田幾多郎哲学にあるとか、京都的思考の影響を受けているとかそんな話から始まります。
考古学とどう繋がるのか、と読み進めるとようやく「アニミズム」という思想に収斂されていきます。
「アニミズム」とはすべてのものに魂が宿っている、という考え方のことです。
これを縄文社会の本質を結びつけて考えているようです。
弥生時代になっても縄文の思想は無意識の中に深くセットされ、さらには民間仏教のなかにつながっていくと解釈されています。
例として山岳信仰と結びついた弘法大師伝説や神仏混合の伝統があげられています。
かなり意外だったのは松尾芭蕉の俳句の中にもアニミズムを読み解こうとしていること。
現代を代表する知性2人の対談は止まるところを知らず次々と飛翔していきます。
3、モノを観察し、解釈するのが考古学
そして考古学の今後に期待されていることも言及があります。
例えば縄文土器を捨てることについて。
縄文土器は人が粘土をこねて造形し、儀式にも長年使い込んだものを、割って壊すことで人間との繋がりを切ることが重要とのこと。
ここに付喪神の発生を見ています。
現代でも古いお札などは神社でお焚き上げしてもらう気持ちにも受け継がれています。
このように日本人とモノ(道具)の関係の哲学については、まだ研究の余地があります。
そこでモノと向き合い、モノを解釈する考古学
ができることがあるはず。もっと柔軟な視点を、というのが論旨ということでしょう。
考古学者に寄せられた期待は大きいようです。
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