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アニメ語り

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駆け抜けるように全話制覇したい。
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#映画

“ふたり”からみんなへ、そして“ふたり”へ。『映画プリキュアオールスターズF』

“ふたり”からみんなへ、そして“ふたり”へ。『映画プリキュアオールスターズF』

 私がよく使う言葉で、「歴史で殴る」というタイプの作品がある。ある程度の年数を重ねたシリーズ作品が、自身の積み重ねそのものをエモーショナルという名の拳に変えて、観客の心を直接殴るような、そういう作品。登場するキャラクターや作品への思い入れが強ければ強いほどその威力は高まり、シリーズを追ってきた自分の歴史にもリンクして涙を誘われてしまう、集大成ならではの醍醐味。同じプリキュアであれば『映画 HUGっ

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次の10年に進むための引き金を。『劇場版 PSYCHO-PASS PROVIDENCE』

次の10年に進むための引き金を。『劇場版 PSYCHO-PASS PROVIDENCE』

 シリーズ10周年の集大成となる劇場版『PROVIDENCE』を観て、期せずしてタイムリーなものになってしまったこの物語をどう咀嚼するべきか、非常に迷っている。たとえば、今向き合っているこのnoteのエディターにも「note AIアシスタント(β)」なるものが搭載されていて、私が何気なく書いたアイデアを読み込んで書き出しを提案したり要約をしてくれたりして、私の拙文を「正しく」してくれるらしい。それ

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血を流さない革命はあり得るのか?『プリンセス・プリンシパル Crown Handler 第3章』

血を流さない革命はあり得るのか?『プリンセス・プリンシパル Crown Handler 第3章』

 私事で恐縮だが、『ファイアーエムブレム 風花雪月』というゲームにハマっている。このゲームの物語を乱暴に要約すると、「主人公が育てた生徒たちが5年後にそれぞれが兵士となって戦争に参加し、同級生と戦う」というものになるのだけれど、ではなぜ戦争が?となると、そこには因習と差別の歴史が横たわっているのだ。

 何も愛しの生徒たちは、同じ学び舎で過ごした同級生を殺すことに胸を痛めていないわけではない。しか

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想像は宇宙を広げ、何度だって退屈から救ってくれる。『グリッドマン ユニバース』

想像は宇宙を広げ、何度だって退屈から救ってくれる。『グリッドマン ユニバース』

 スマホのカレンダーアプリを開き、日曜日のお昼に「グリッドマン 映画」と記録する。これはどの映画を観る時も行う習性なのだけれど、つい感慨深く画面を見つめてしまった。実写とアニメの媒体の差こそあれ、「グリッドマンの新作映画が上映される」なんて、10年前の自分なら考えもしなかっただろう(同時に、エヴァの監督がゴジラや仮面ライダーの映画を撮っているよ、も含む)。放送当時は物心ついていなかったし、『電光超

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「あの日」から今日までを生きてきた私たちへ。『すずめの戸締まり』

「あの日」から今日までを生きてきた私たちへ。『すずめの戸締まり』

 世界は、あれからずっと狂ったまんまだ。

 劇場で『天気の子』を観た日、劇場を出たら外はどしゃ降りの雨だった。まるで原作再現だね、と友達と笑い合って、駅まで歩いた。それが2019年の出来事で、その次の年から蔓延し始めた感染症に今も苦しめられ、海の外で起きた戦争の影響で物価は上がり続けている。

 タガが外れて世界のバランスがおかしくなって、全部が上手くいかない。そう思うようになったのは、一体いつ

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「Tot Musica」が聴きたくて『ONE PIECE FILM RED』を観に行っちゃった。

「Tot Musica」が聴きたくて『ONE PIECE FILM RED』を観に行っちゃった。

 ONE PIECE を知らないことが、コンプレックスでした。

 おそらく全世界で一番読まれた漫画の一つ。最新刊が発売される度に書店やコンビニでも大々的に特集が組まれる。新作の劇場版が公開されれば、劇場は満員になる。それほどの知名度と人気を誇る国民的作品を、原作もアニメも通らないまま、歳を重ねてしまいました。

 理由は、「ワンピースが好きな人」が嫌いな時期があったから。高校時代、サッカー部に所

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『映画 ゆるキャン△』やはりそれは、極めて優しいファンタジー。

『映画 ゆるキャン△』やはりそれは、極めて優しいファンタジー。

 TVアニメ『ゆるキャン△』には、命を救ってもらった恩義を感じている。

 全世界を混乱に陥れた疫病が広まった最初の年、その感染対策と社内の新規事業に携わったタイミングが嫌な形で合致し、どんなに努力しても売り上げは上がらず、正解のない業務に絡めとられ残業時間は過労死ラインを余裕で突破していた。

 そんな折にふと1話を再生して、じんわりと暖かいスープを飲んだ時のような安らぎにふと涙してしまった。1

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初めて『アイカツ!』の時が動き出す瞬間に立ち会った。

初めて『アイカツ!』の時が動き出す瞬間に立ち会った。

 『アイカツスターズ!』の1話を再生したのが昨年の7月ということで、彼女たちのアツいアイドル活動を見守り始めてもうすぐ一年が経とうとしている。そして今日は、そのシリーズの最新作と偉大なる初代の続編が劇場公開され、新たに時計の針が進む瞬間を目にしてきた。女児向けアニメへのアンテナが低い私にとって、『アイカツ!』の最新話を諸先輩方と同じ目線で、同じタイミングで「立ち会う」ことは初めてで、朝一の上映にも

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いるはずもない碇シンジを追い求めて、『劇場版 呪術廻戦 0』を観てしまいました。

いるはずもない碇シンジを追い求めて、『劇場版 呪術廻戦 0』を観てしまいました。

 2021年、エヴァンゲリオンは終わった。

 神話になった少年は自らの願いで世界を創り替え、神の座に至ろうとする大人の野望は潰え、ついでに声帯が神木隆之介になって、宇部新川駅から巣立っていった。

 その背中を見送りながらも、それでも作品世界から離れがたくて、ずっとその影を追っていたいオタクは、というと……。

呪術廻戦を観に来ていたのである。

きっかけは二か月前 あれは確か、『劇場版 少女☆

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『アイの歌声を聴かせて』愛を歌うAIは命の輝きを機械の身体に宿す。

『アイの歌声を聴かせて』愛を歌うAIは命の輝きを機械の身体に宿す。

 『攻殻機動隊』が大好きだ。と言っても、繰り返し観るのは押井守が手掛ける劇場二作や、神山健治氏のTVシリーズ『STAND ALONE COMPLEX』なのだけれど。

 これらの作品では、人間は生身の身体を捨て義体化する者が現れたり、生身を維持しながらも自らの脳を電子化された脳、すなわち電脳へと換装し、自身の身体一つで広大なネットワークに接続する時代が到来している。また、作内に登場する多脚戦車はA

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『劇場版 少女☆歌劇 レヴュースタァライト』は運命を燃やし尽くし、舞台少女は“再生産”される。

『劇場版 少女☆歌劇 レヴュースタァライト』は運命を燃やし尽くし、舞台少女は“再生産”される。

 未だかつてないほどの期待と不安を胸に秘め、電車とバスに乗られて二時間強、その劇場―いや、舞台は、首を長くしてこちらの到着を待っていた。この作品においては、観客である我々も舞台装置の一つであり、そして観客が望む限り舞台に立ち続けるのが、舞台少女の在り方だった。なのだけれど、その理に「本当に?」という問いを叩きつけてきたのが、他の誰でもない『劇場版 少女☆歌劇 レヴュースタァライト』なのであった。

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『プリンセス・プリンシパル Crown Handler 第2章』逃げる場所など、どこにもなくて。

『プリンセス・プリンシパル Crown Handler 第2章』逃げる場所など、どこにもなくて。

 毎度毎度、祝日の木曜公開、本当にありがたい。王族に謁見するのだから国民の祝日になるのは正しいし、何より“噛みしめる”時間が必要なのだ。わずか60分にも満たない映画に、心を乱されている。

生き方を選べない者たち 王位継承第3位のリチャード王子の暗殺未遂、そしてケイバーライト爆弾の強奪。王国と共和国のパワーバランスが揺らぎ、戦争への火種が燻る中、白鳩の面々は爆弾の奪還に挑む。プリンセスの実家事情が

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商店街育ちには眩しすぎたよ。『サイダーのように言葉が湧き上がる』

商店街育ちには眩しすぎたよ。『サイダーのように言葉が湧き上がる』

 暑くなってきたので、髪をバッサリ切ってもらった。髪質が特殊なので髪形は幼少期から変わらないが、髪を切った後は頭が軽くなって、気持ちも前向きになる。このまま家に帰るのが勿体なくて、映画館に行くことにした。予告編もあらすじも知らない、Twitterで誰かが絶賛してたな、くらいの認知度しかなかったけれど、シネコンのポイントが溜まってて無料で観られるし、何かの縁だと思って『サイダーのように言葉が湧き上が

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TVアニメ10話までしか観ていないのに無限列車に乗せられた話

TVアニメ10話までしか観ていないのに無限列車に乗せられた話

 「私がお金払うから一緒に観て」という古き良きキンプリヤクザの手法でとある映画を観ました。日本で最も売れた映画こと『劇場版 鬼滅の刃 無限列車編』です。

 オタクと呼ばれる人種の中には、常日頃から自分の沼に誰かを引き入れる努力を惜しまない人がいます。そしてぼくのTLには「ぼくにプリキュアを観せたいオタク」と「ぼくにアイカツを観せたいオタク」、最上級として「ぼくにプリキュアとアイカツの両方を観せた

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