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2004年4月22日 武道館アースデー・コンサート速報

以下のレポートは『FAR EAST SATELLLITE』(極東ラジオの後番組)のサイトにライヴの翌日4月23日にアップされた「アースデー・コンサート」の速報です。

■ 4月22日 武道館アースデー・コンサート速報 その1
全国ラジオ生中継、それに当日になってインターネット中継も発表されたので自宅で「聴いた」「見た」方もたくさんいたかと思いますが、FAR EAST SATELLITE全スタッフは行ってきましたです、武道館でのアースデー・コンサート。

オープニングMCの光岡ディオンさんにより、本日のコンサートはアーティストがリレー形式で歌をバトン代わりに繋いでいく趣向だということが宣言されて、ファースト・アクト、佐野元春が登場。昨年11月に鎌倉芸術館で観たスポークンワーズのセットで一曲目『ポップチルドレン』。オープニングとは思えないスリリングなムードを作り出すのです。二曲目は椅子に座り、アコースティック・セットでの『ヤングブラッズ』。そしてハナレグミ永積タカシを紹介。昨年10月、SHIBUYA-AXでのイベントと同じような流れです。青のニット帽に上着は赤のジャージ(二階スタンドから観てたので間違えてたらごめんなさい)という姿で登場した永積タカシの第一声は「ハナレグミの永積タカシです。昨晩ニンニクをいっぱい食べたんで、ニンニク臭かったらすみませんね」。武道館というスペースを一瞬にしてライブハウスの距離感に変えてしまう永積トーク。曲は弾き語りで『家族の風景』と『ハンキーパンキー』。前に永積タカシが極東ラジオに出演したとき、宮沢和史に「永積くんの方が俺より強えな、と思ったんだよね」と言われてたけど、たとえば『ハンキーパンキー』の“傷を嘆くよりも出逢えたことを歌いたいんだ”というフレーズにしてもとてつもなく優しく、強い。そしてこういう歌が武道館という大きな会場に満ちていく。二曲を歌い終えた永積タカシが紹介した次のシンガーはbird。

■ 4月22日 武道館アースデー・コンサート速報 その2
京都出身のbirdが最初に歌ったのは『京都慕情』。ベンチャーズの曲ですね。30年ぐらい前の大ヒット曲。続いてbirdのデビュー曲『SOULS』。次に登場したのは高野寛。このコンサートのサウンド・プロデューサーである武部聡志(キーボード)と小倉博和(ギター)、パーカッションの三沢またろうを紹介し、小倉さんからのリクエストということで『Bye Bye Televison』を。一曲歌ったあとにゲストに呼び込んだのは小坂忠。昨年5月のツアーでもカバーしていたSUPER BUTTER DOGの大名曲『サヨナラCOLOR』を小坂忠と高野寛でデュエット。このコンサートのもうひとつのテーマは「J-STANDARD」なのです。次の曲は小坂忠ボーカルでR&B『I belive in you』。小坂忠がステージから去り、残った高野寛が新たに呼び込んだのはCHARA。4年前に息子のために書いた曲という紹介で披露されたのは『大切をきずくもの』。高野寛がアコースティックギターで伴奏です。次に『MILK』。CHARAの衣装は(あくまでも二階スタンドからの感想ですが)アンデスのケチュア族の少女みたいですごく可愛い。次の曲は再び高野寛がセンター。左にCHARA、右に再び登場のハナレグミという布陣での『hibiki』。こちらのインタビューももう一回読んで欲しいです。その上であの“ああ響きあう歌が届いたら この闇を照らす光になるから”というフレーズを聴くと、染み方も違うってもんです。豪華コーラスの『hibiki』が武道館に響きました!

■ 4月22日 武道館アースデー・コンサート速報 その3
続いての登場は森山良子。軽やか! 勝手にもっと重々しい方かと思っていました。そして歌声の美しいこと! 「沖縄にちなんだ2曲を聴いてもらいます」ということで『涙そうそう』と『さとうきび畑』をギターで弾き語り。このコンサート、騒々しい司会者もいなければ派手な演出もありません。本当にただ歌うだけ。歌い終わると次のシンガーを呼び込み、歌い、交代し、というまさに歌のリレー。シンプルなアコースティックでの演奏が基本なだけにセットの変換時間もなくてすごくスムース。ただ、森山良子のステージのあとにはMC光岡ディオンさんが登場し、ここまでが前半の終了ですとアナウンス。でも休憩はなしです。ディオンさんのスピーチはこういう場にありがちな「原稿棒読み」では全くなく、平易な、自分の言葉で自分の立場で環境のためにできること(この場では佐渡島のトキについて語っていました)を話していました。後半の一番手は中国の二胡奏者チェン・ミン。喜納昌吉の『花』をカバー。続いて今井美樹が登場し、『PIECE OF MY WISH』と『春の日』を披露。次の出演者、大貫妙子はチェン・ミンと『四季』を。こうやって次々とコラボレーションが行なわれていくのもこのコンサートの素晴らしいところです。『ただ』は友人、仲間、家族への感謝を込めて。こういったリレー形式、コラボレーションありのイベントといえば極東ラジオ/FAR EAST SATELLITE的にはすぐ連想するのが、あの“BEAUTIFUL SONGS”。大貫妙子が紹介したのもその“BEAUTIFUL SONGS”仲間、矢野顕子でした。

矢野顕子、登場するなり大貫妙子の衣装を指し「かわいっすね、これ」。大貫妙子が矢野の頭(巨大なカーリーヘア?)を指し「すごいっすね、頭」。このコンビ面白い。矢野顕子はステージ中央に運ばれてきたピアノでまず『電話線』。次に初めて一緒に歌うという森山良子と『ON THE STREET WHERE YOU LIVE』をデュエット。「わたくしたち何を歌うか考えたんですが」と話してましたけど、自分がもしミュージシャンだったら矢野顕子に「わたくしたち」なんて言われてみたいものだなあと考えたりして。「後半、このステージに登ってるのは女性だけ。このままではフェアではありませんので」ということで、ステージに呼ばれたのは再び小坂忠。(「速報その4」に続く)

■ 4月22日 武道館アースデー・コンサート速報 その4
すいません、『ON THE STREET WHERE YOU LIVE』の後に、矢野顕子ひとりでくるりの『ばらの花』を弾き語りしました。彼女が歌う“ジンジャーエール”という言葉はすごくチャーミングで、思わずジンジャーエールが飲みたくなります。そして、小坂忠です。「歌い継がれてきた歌が、今日ここで聴けます。それを伴奏できる喜び」そんな言葉のあとに演奏されたのが『機関車』。演奏も歌ももちろん素晴らしいのですが、矢野トークさらに冴えます。「いよいよ、いよいよです。私も決して短いキャリアではありませんが、彼女の方がちょっと上です(笑)」という紹介で、本日のヘッドライナー、松任谷由実の登場。武道館、拍手で揺れます。ふたりは20年振りの再会だそうです。「どうしてあなたのあとに私が弾き語りしなくちゃならないの(笑)」とつぶやき、『ベルベット・イースター』のピアノ弾き語り。矢野顕子に対して松任谷由実がこんなセリフを言っているシーンを観ることができたという時点でもううれしい。さらに、『ベルベット・イースター』の後のユーミンのトークがとても印象的でした。「みんなをタイムマシンに乗せて、1974年の芝浦のスタジオに連れていきたい。大貫妙子、当時はまだ鈴木顕子という名前だった矢野顕子、山下達郎が私のアルバムのレコーディングに参加していて~」という内容。矢野顕子が小坂忠を紹介するときのトークもそうでしたが、日本の歴史的音楽シーンが一夜にして目前で展開されているような気持ちに……。バンドでの『やさしさに包まれたなら』(このコンサートのサブ・タイトルにもなってました)、最後に「チェン・ミンでーす」「ユーミンでーす」のかけあいでチェン・ミンが二胡で参加の『春よ、来い』でコンサートの幕は閉じました。終演後「この歌のリレーは来年へと続いていくでしょう」とMCがあったけど、来年ではなく、もうコンサート終了後すぐに観客である僕らにバトンは渡されたような気がします。「矢野顕子と森山良子の共演なんてもう二度と観られないかもね」「×××って初めて観たけど、すごくよかったー」そんな言葉があちこちから聞こえてくる帰り道でした。

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