いのちの終わりに

大切な人のいのちが
終わろうとしている時

それでも 話しかけてください

目は瞬きをしなくても
口から言葉が返ってこなくても
もう 握り返してくれることは
なくなった その手も

それでも
話しかけてあげてください

あなたの声は
ちゃんと届いています。

あなたの言葉を
ちゃんとキャッチしてくれています。

伝えたかったこと。
言えなかったこと。
伝えてみてください。

そして 手を握り
その温もりを感じてみてください。

その温かさは
当たり前じゃない。

血流が止まると
人間ってびっくりするほど
冷たくなる。

ガラスのコップくらいに
冷たくなる。

血が流れてる
呼吸をしている

それは、
その人の細胞たちが
温度を持ってまだ生きているということ。



大切な人の最期の時

伝えてみてください、医療者に。

触れさせてほしい。
抱きしめたい。
身体を拭かせてほしい。
最期に何か出来ることをしたい。

医療者から見れば
その人は 患者さん

でも

その人は
誰かの子どもであり
親であり
友人であり
また彼とか彼女であり

生徒とか
もしかして先生だったり

もしかしたら もしかしたら
もう一度生きることを教えてくれた
カウンセラーとか

病気を診てきた医者かもしれない。

母より先に
人生を終える子どもだっている。

手を握ってあげてください。

その人が親であれば
握ったその手は
生まれたばかりのあなたを大歓迎し
抱きしめてくれた

時には その手で
叩かれたこともあるかもしれない


それから ずいぶん経ち
触れることもなくなって

その手を借りなくても
もうすっかり
自分のことは自分で出来る
大人になった。


最期の時 看護師は

最期を生ききった
その身体を清拭し 姿を整える。


大切な人との最期の時間
伝えてみてください。


4万人以上の 老若男女の
手を握りいのちを看てきた看護師より。

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