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【roots】老年期 《27章》歩き出す時

オスカーがデイブの家に来て3ヶ月が経っていた。
オスカーは料理を手伝う事で口数も増え笑顔も増えた。
ルビーとすっかり仲良しになりオスカーの優しい繊細な部分が引き出されていった。
*****

ある日ルビーに「僕そろそろ行ってみようかな」とオスカーが言った。ルビーは優しく受け止めて「待ってるわ。どんな一日だったのか聞かせてね」とオスカーの背中に手を当てた。じんわりと温かく勇気が湧いた。
「まずはオーウェンに相談してみましょう」
「うん」力強くうなづいた。

デイブがルビーに聞いて、オスカーの部屋を訪ねて来た。「オスカー、行くんだって?」
「うん。行ってみようかなって、思えて」
デイブはオスカーのベッドに腰掛けて真剣な面持ちで話し出した。
「そうか…オスカー、僕はあの旅で良いものだけを見て、ただ友達を作ったわけじゃないんだ。知ってるよね」
「うん」
「負けないで進む事が大変な時もある。それから知らないから怖いって事も忘れないで。この先にあるものを手にしたい!と強く、強く思って進むんだ」デイブは自分の胸を叩いた。
「はい。デイブを心に行くよ」とオスカーが自分の胸に手を置いた。その上にデイブの年老いた手が重ねられた。
「待ってるよ。どんな体験だったとしても、必ず帰って来るんだ。必ず。オスカーには僕たちがいるんだよ」
「うん」オスカーはその言葉を心深くに飲み込んだ
*****

夜オーウェンが来てくれた。
「早速来てくれてありがとう!」とオスカーがオーウェンを出迎えた。
「おぉ!オスカー、会いにきたぞ」明るい口調で答えてくれた。オスカーの作った夕食をみんなで食べて沢山笑った。
オーウェンが「今日、俺の所に泊まってそのまま行こう。帰りは明後日。準備はいらない。デイブなんてハンカチ一枚持って無かったんだから」と笑った。
「オーウェンが一緒に行ってくれるの?」オスカーが聞く。
「入り口までな。俺は獅子門の番だからな」
「獅子門?」「物事の始まりの門だよ」デイブが答えた。
食事の片付けをしてオスカーはルビーに「明後日。あのスープが食べたいな」と言った。
「とびきり美味しくつくるわ。ケガに気をつけてね」と笑顔で答え、泡の付いた手を握り合った。
オスカーはこのルビーの温かさが好きだった。
「ありがとう。行ってきます」と笑顔で言った。

「デイブ。ハグして下さい」オスカーがデイブの前に立って恥ずかしそうに言った。
デイブは愛おしい気持ちが伝わる様に力強く抱きしめた。
「オスカーには僕がいる。何かあれば必ず助けに行くよ」
「ここで待ってて。きっと見つけて来るから」
オスカーの頼もしい言葉に涙が溢れそうになるのをグッと堪えて、オスカーとオーウェンを見送った。

オーウェンの家に着くとリリーが迎えてくれた。あの美味しいクッキーと紅茶で少し話をした
「もしも一日でなく、もっと旅を続ける事を選ぶとしたら、ここには帰れなくなるんだ。でもいつかオスカーが訪ねてくれれば…辿り着くかもしれない。ただし、何才のどこに行き着くのかは俺にはわからない。オスカーが手にした事によって道が作られて行くからね」とオーウェンが言った。
「でも僕。ルビーに明後日帰ったら食べたいものをリクエストして来ちゃったし…」オスカーが考えてもみなかった事を聞いて心配そうに言うと
「大丈夫だよ。あの2人なら。オスカーは頑張っているんだなって喜んでくれるさ」とオーウェンがこたえた。
その言葉に待っていてくれている2人を思った。
「明日、起きたら行こう。荷物は何もいらない。元気な体一つでいいからな」
オーウェンは優しく笑ってオスカーの不安な気持ちを撫でてくれた。
行くと決めたんだ。覚悟がいる。
何が起きるかわからないんだ。

リリーが客室を用意してくれて、新しいシーツに包まれてよく眠った。
目覚ましもせず6時に目が覚めて、リリーの用意してくれた朝食を食べた。
一つ一つ丁寧に用意された朝食に感激した。
「ご馳走様でした。とっても美味しかったです」
「また食べに来てね」リリーの言葉が優しく胸に響いた。「はい」返事をして食器を台所へ運ぶとオーウェンが「よし!行こう」と言った。
急に空気がピリッと引き締まった。

「こっちだ」オーウェンについて行った先は、地下に降りる階段だった。
オーウェンの家からそんな世界へ行けるなんて驚きだった。戸惑うオスカーに「言ったろ?俺は獅子門の番人なんだ」と優しい声で言った。
そして、真っ暗な廊下へ出た。

「これって、あの廊下?」とオスカーが尋ねると
「似てるけど、オスカー用の廊下だからデイブのとは違うよ」とオーウェンは当たり前のようにサラリと言った。
「僕用…」不安そうなオスカーをみてオーウェンは勇気づけるように声を張り上げた。
「一歩踏み出した瞬間にオスカーに必要なものが見えて来る。思いっきり楽しんで!知ろうとして!行ってこい!!」肩をバンとたたいた。
「ありがとうございます。あの…デイブに伝えて。行って来ますって元気に言ってたって」
オスカーが言うとオーウェンは微笑んで
「伝える。また会おうな!」とハグをした。
オスカーはくるりと廊下を前にしてふうっと息を吐いて真っ直ぐ前を見た。


to be continue…

今日もワクワクとドキドキと喜びと幸せを🍀


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