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小説✴︎梅はその日の難逃れ 第21話

凛は自分の部屋で
毛布にくるまっていた。

やっぱりあんな事、言わなきゃ良かった。もう顔合わせられない。
春くん、追いかけてくれなかったし。

「終わったわ」

こうなる事は分かっていた。なんとなく……。
でも実際、落ち込むよね。

涙が流れるままに、毛布は
すでにグチャグチャになり
鼻をかんだティシュは
散乱している。

白い海に溺れてるみたいだ。
息が苦しい。

春くんへの想いを告げることで
心の引っ掛かりは
自由になったけど、こんなに苦しくなるものとは、思わなかった。

足を得て、自由に歩けるけれど
引き換えに声を失った人魚姫みたい。

止めどなく涙は出てくる。

それでも明日はくる。

次の日、泣きすぎて頭が痛かったけど
進路指導で個別面談のある日。
休むのは諦めて学校へ行った。

進路指導室の前に行くと
次の順番を待つ千鳥が居た。

「あれ、ドリちゃん、私の前?」
「ううん、木杉さんの次。早めに来ただけ」
「そ、私さ、すぐ終わるからさ」

そう告げて、凛はドアを開けた。

「失礼します」
「木杉。まだ進路カード未提出だな」
椅子に腰掛けながら凛は、先生に向かって
「はい。すみませんでした。でも、先生!私ね決まりました!」
「え?」
「私、大学受験します。そして、資格もたくさん取ってキャリアウーマンになってバリバリ働きます。
男に頼らない自立した女を目指します!」
「木杉、いきなりどうした?」
「先生、私ずーっと片想いした人に振られました。だからもう男無しの人生歩みます」
「随分と短絡的だなぁ」
「切り替えは大事です」
「そうだけどな。で、どこ目指す?」
「うーん。私の成績で頑張れば行ける大学どこがいいですか?」

進路指導の先生を驚かせつつも
手こずると思っていた凛の相談はあっさり終わった。
告知した通りだった。

「ありがとうございました」
凛は勢いよくドアを開けて
外にいる千鳥に顔を向け
「ドリちゃん。ね?早いでしょ?じゃ、どうぞ」
そのままドアを開けたまま
千鳥を招いた。
「あ、ありがとう」
頭を下げつつ、千鳥は部屋へ入った。


よし、これからはめっちゃ勉強する!
春くんを忘れるくらい。
会えなくて寂しいとか思わないぐらい
めちゃくちゃ勉強する!

流した涙の分、少し大人になれた気がした凛だった。

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