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己と宝塚歌劇団

宝塚歌劇団。
2年前の私にとっては未知の世界だった。
女性が男性役を演じることは知っていたが、失礼な話、正直オワコンだと思ってた。完全にナメていた。これを読んでいる人にも宝塚がオワコンだと思う人は少なくは無いだろう。
だがどうかここは私と宝塚との出会いと宝塚への想いを読んでほしい。

元々幼い頃からミュージカルが好きだった。
しかし劇場は小中学生がそんなに頻繁に行ける場所でもなく、中学時代の「行きたいが行けない」というむず痒さが薪となり、私のミュージカル熱は高校入学と共に爆発した。

とにかく何でも観たかった私はTwitterを始め、公演情報を集めているうちにある情報に辿り着いた。
「『エリザベート』、宝塚の月組でやるよ」という情報だ。

「エリザベート」というと、ミュージカルが好きな人間なら知らない人は居ない。名作中の名作だ。中学生の頃、この公演を観に行けず歌ばかり聴いていた。

それが宝塚でやるという話を聞いて「とにかくエリザベートが観たい!」とすぐにチケットを取ろうとした。
が、私がその話を知ったのはチケット発売日よりかなり後で、無論チケットなど残っていなかった。

しかし流石宝塚、100年以上続いてるだけのことはある。当日券が用意されているのだ。これは行かない訳にはいかない、と覚悟を決めて初めて宝塚の地へ赴いた。

始発から電車を乗り継ぎ、宝塚南口で下車し地図アプリを頼りに劇場まで歩いていた。ほの明るい景色の中で武庫川にかかる橋から見えるオレンジと白の建物たちの作る異世界のような雰囲気に早くも胸がときめく感覚は人生でなかなか味わったことの無い感覚だった。

劇場に到着すると私の前には90人程度並んでおり、座席完売後の販売となる立ち見券の40番台のチケットを買うことになった。劇場は絵に描いたように可愛らしく、宝塚ファンが「夢の世界」と称す通りだった。その可愛らしさに、可愛い!と思ったり、これ現実か?と思ったり、忙しく感情が移るうちにミュージカル「エリザベート」が開演した。

前述の通り当時私は宝塚をナメていたので話だけ解ればいいやという気持ちで出演者の方の名前や顔を調べていなかった。
しかし開演と同時に舞台に現れた方の美しさに数秒前の自分を殴りたくなるほど後悔した。

ヤバイ、とすぐにそう思った。

何が特別ヤバいとかじゃない、言葉で形容できないようなヤバさというかキラキラした空気がそこにあるのだ。
宝塚ファンが口を揃えて言う、「宝塚は生で観ないと良さがわからない」という文句の意味が痛いほどわかった。

想像と違いすぎる宝塚の世界に圧倒されて気付けば幕間になっていた。休憩時間が始まるや否や顔をホクホクさせて「○○さんめっちゃ素敵」と呟く人々と同様に私も顔をホクホクさせて出演者の顔と名前を調べまくってあっという間に30分が経つ折、2幕が始まった。

元々ミュージカルとして世界各地、もちろん日本でも宝塚や東宝で上演されてきた「エリザベート」。
話がトントン進んでいき、あっという間に終演 、、と思いきや、宝塚には「フィナーレ」というものがある。
個人的に1番アガる場面だと今では思っているのだが、このアガりっぷりも形容しにくい。
敢えて雨で表現するとミュージカル上演中のキラキラっぷりが小雨なら、フィナーレは豪雨。キラキラを超えたギラギラがガンガン降ってくる感じ。実際ギラギラのミラーボール出てくるし。
解りにくい表現を辞めて具体的にフィナーレを説明すると、有名なラインダンスや男役による群舞、トップスターとトップ娘役によるデュエットダンス、そして宝塚の代名詞とも言えるスターが大きな羽根を背負って大階段を降りてくるアレだ。

テレビで宝塚が特集されると高確率で話題になるあの羽根、ずっと羽根の意味がわからなくて宝塚を避けていたがやっぱり生で見ても意味わからなかった。
しかし自分でも驚くほど嫌気などはなく、むしろノリノリで周りのお客さんと一緒に手拍子していた。恐るべし宝塚。
フィナーレの頃には羽根のことなんかどうでも良くなるくらい公演の雰囲気に高揚していたからだ。
最後の出演者全員のお辞儀と観客の拍手と共に最高の気分で終演を迎えた。


帰宅後、真っ先に母に
「どうやった?宝塚」
と聞かれた。まだ頭の整理がつかない私は
「キラキラのシャワーかな」
と返事していた。
「あんた、おかしなったんちゃうか?」
全くその通りである。
「いや、あの、多分ハマるわ。」
完璧に“仕上がって”いた。
前日まで「まあ話知るためだけの観劇やから」と声高に言ってた娘がこの変わりようである。
さぞ奇妙だっただろう。

そんな感じで私の初宝塚観劇は終わった。
以後ほぼ毎月1回以上宝塚に通うようになり、宝塚友の会(宝塚歌劇公式ファンクラブ)にも入会したことは言うまでもない。

宝塚は凄い。
なんてったってキラキラしてるのだ。とにかく夢のように美しい世界で、例えば毎日学校でオッサンに叱られていようが宝塚に行けば眉目秀麗な男役さんたちのウインク1つで全部忘れられる。
加えて可愛い娘役さんたちの素敵な笑顔に元気を貰えば、鬱々しい気持ちは嘘のように浄化されるのだ。
多分私だけじゃない。多くの人の心の栄養になっていることは間違いないだろう。

しかし現在、宝塚歌劇団をはじめ多くのエンタメ興行は新型コロナウィルスの感染拡大防止のため公演の自粛を余儀なくされている。
宝塚歌劇団は1度公演を再開したが、また自粛する運びとなった。
政府の発表によるものでもあるが、公演を再開したことに対して批判する意見が多く見受けられたことも一因にあるだろう。

月日は浅いが、1人のファンとして心が痛い。
どうか、この殃禍に耐えてまたあの夢の景色を見せて欲しい。
私には静かに応援することしか出来ないのが全く無念である。
頑張ってください。

1日でも早く新型コロナウィルスの感染拡大が終息しますように。

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