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【cinema】ムーンライト

2017年34本目。

一ヶ月半以上前に観た映画。

マイアミを舞台に自分の居場所とアイデンティティを模索する少年の成長を、少年期、ティーンエイジャー期、成人期の3つの時代構成で描き、第89回アカデミー賞で作品賞ほか、脚色賞、助演男優賞の3部門を受賞したヒューマンドラマ。マイアミの貧困地域で暮らす内気な少年シャロンは、学校では「リトル(チビ)」と呼ばれていじめられ、家庭では麻薬常習者の母親ポーラから育児放棄されていた。そんなシャロンに優しく接してくれるのは、近所に住む麻薬ディーラーのフアン夫妻と、唯一の男友達であるケヴィンだけ。やがてシャロンは、ケヴィンに対して友情以上の思いを抱くようになるが、自分が暮らすコミュニティではこの感情が決して受け入れてもらえないことに気づき、誰にも思いを打ち明けられずにいた。そんな中、ある事件が起こり……。(映画.comより転記)

シャロンがシャロンのままでいられたのは、フアンの存在が全てだったと思う。彼の生業が麻薬ディーラーだったのは置いといて、彼なしではシャロンは存在すらしなかったなとさえ思う。父親がいないシャロンにとって、フアンは絶大なる存在で、何より人として大切なことを示してくれたのは彼のほかいなかった。何でフアンは赤の他人のシャロンに対して、そんなふうに接してくれたんだろうか。最初の出会いは通りすがり、いじめられていたシャロンにフアンが出くわしただけ。シャロンの母親に麻薬を売っていたとしてもその界隈のほとんどに売りつけてるんだがら負い目をそこまで感じる必要もない。あまりそのあたりが多くは語られてなくて、それでも2人の絆は親子以上に強くて、私はそこを描ききってほしかったなと思う。気がついたら、フアンは消えていた。

ゲイで麻薬ディーラーの黒人男性が主人公の映画となると、観る側は、最初から身構えてしまう。私たちが普段目を背けている事象をどんどん突きつけられるのに、この映画は何だかとっても静かで(音がないとかそういうのではなく)、燃えたぎるものはあまり感じられない。シャロンの心はいつだって空虚なんだよね。いくら愛する人がいたって、自分を気にかけてくれる人がいたって、彼は自らを固い殻でガチガチに固めて人に接している。誰に教えられるともなく、いつだってそうやって自分の身を守ってきた。彼は、どんな時も、人と向き合おうとせずに自分の心を押し殺して生きてきた。本当に言いたいこと、伝えたいことが、たくさんあるはずなのに、抑えすぎてどうしたらいいかもわからずに大人になった。どんなに屈強な姿になっても、ある種慎ましさを感じられるくらい。

それが痛いほどわかる話。ラブストーリーだのゲイムービーだのいろんなジャンルづけをしようとするけど、何だか私はしっくりこなくて、感想もちゃんと書けないなって今まで放置してた。

私はケヴィンへの想いは、シャロンの人となりを描く付属品であって、これは究極のラブストーリーでもないし、差別や麻薬に関する警鐘を鳴らすものでもないと思っている。

ムーンライト。このタイトルはいい。月明かりの下では、白人も黒人もない。黒い肌も青白く照らしてくれる。必要以上に神経を尖らせることもなく、自分が自分でいられる安らげる時間。それはそんな月夜だけ。シャロンが本当のシャロンで居られた時。それを感じることができた瞬間、瞬間がとても愛おしくなる映画でした。

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