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キングオブコント2020感想②(1stステージ後半)

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キングオブコント2020の感想について、昨日は1stステージ5番手のジャルジャルまで書いたので、今日はその続き。6番手のザ・ギースからジャングルポケットまで。

ザ・ギース(ネタ:ハープ)

合計得点:457点(設楽:92、日村:91、三村:91、大竹:91、松本:92)

1stステージ順位:4位

私的評価:設定B、展開A、ワードB、演技A、ハマり感A

2008年の第一回大会ファイナリストであるベテランコント師。その際に披露した「卒業式のフォーメーションを伝える」というネタは、発想の奇抜さとポップさ、小道具の使い方が見事にマッチした傑作だった。

それ以降も2度決勝に進出しているが、シュールネタに厳しい近年のキングオブコントの風潮で最も損をしているコンビかもしれない。「和田アキ子を抱きたい!」で大滑りした「ビフォーアフター」も、甘噛みとラストの下ネタがもやっとした「サイコメトラー」も個人的には大好きなのだが。あと爆笑オンエアバトルで披露した「歩行者教習」をYouTubeで見たときは腹が捩れるほど笑った。ぶっとんだ設定と二人の器用さの相乗効果(少しラーメンズを感じさせる)のインパクトがすさまじい名作。

今回、公式YouTubeにも上がっている「SLクラブ」を一本目にやるのでは?という噂もあったが、結局「新聞配達を辞める先輩をハープで送別する」というネタを披露。おそらくこの選択は正解だった。(「SLクラブ」はライブのネタとしてはめちゃくちゃ面白いが、アングラな空気感がKOCの空気と合わないし、笑いどころがほぼ「関東の電車あるある」の羅列なので、分からない人は完全置いてきぼりになるので)

下手をすると高佐(ハープ)と尾関(紙切り)の隠し芸大会になってしまうリスクのあるネタだが、「ハープが弾けること」から「ハープの価格情報」「ハープの音色」「尾関側の伏線の回収」と笑いどころを次々に展開していく巧みな設計でピークを維持しながら最後まで魅せきった。

珍しい楽器を小道具としてネタに使うこと自体は時々見かけるが(ばいきんぐのジャンベとか)、素人が見てもちゃんと弾けていることが分かる上に面白い、というのがザ・ギースの凄さ。ジャルジャルの後というのも影響したか。順番次第ではFinalステージ進出も十分ありえたと思われる。

うるとらブギーズ(ネタ:陶芸家)

合計得点:454点(設楽:90、日村:87、三村:87、大竹:89、松本:87)

1stステージ順位:10位

私的評価:設定C、展開B、ワードC、演技B、ハマり感B

大きなイチモツのネタで荒れた昨年大会でぬるっと2位になったコンビ。個人的には設定もワードも弱くてそこまでの印象だったのだが、なんとなく二人が楽しそうにコントをやっていたので、そのあたりで刺さる層もいるのかな、と思っている(公式YouTubeでネタを何本か見てみたが、その印象は変わっていない)

陶芸家とその弟子が焼き上げた作品の良しあしを判定し、次々と割っていくが、勢い余って出来のいいものも割ってしまう、という天丼ネタ。

冒頭、なんで全部下手なマイムで表現するんだよ、と思ってのだが、その理由が実はネタの根幹だったのが一番の裏切りだった。

二人は楽しそうに演じていたが、審査員が口をそろえて言うようにいくら何でも設定・展開が弱すぎた。「ダメ、ダメ、あ、イイ…バリン」を繰り返すだけなので、それなりに展開を工夫していたとは思うのだがインパクトに欠けた。

とはいえ、去年のネタも構造は同じだったと思うので、なぜ去年の審査員にハマったのかはよくわからない。

ニッポンの社長(ネタ:ケンタウロス)

合計得点:454点(設楽:92、日村:91、三村:86、大竹:92、松本:93)

1stステージ順位:5位(ジャングルポケットと同点)

私的評価:設定A、展開B、ワードC、演技C、ハマり感B

ネットである意味伝説化していたネタ。今回過去ネタを披露してもよいというルール改正によって見事日の目を浴びた。

ケンタウロスの高校生がミノタウロスの少女(?)に一目ぼれをしてラブソングを披露。謎のラップバトルを挟み二人の心が通った結果、ミノタウロスは声を取り戻すがその代償としてケンタウロスは声を失う。なんだこれ、悪夢か?ブンガクか?

まあまあな尺を使うケツの歌シーンに、「野次ワクチン」の鹿沼さん来てほしいな、と思ったが、ラップバトル⇒心通う⇒声取り戻す/失う、の流れのむちゃくちゃさは逆にライド感があって面白かった。下手にシュールに逃げるよりも、パワープレーで押し切った方がよいタイプのネタだったと思う。

問題なのは冒頭の「ケンタウロス高校生あるある」の場面。大喜利としてはどれも面白かった(ケントなのにケンタウロスに引っ張られてケンタって呼ばれてる、とか)が、バグったネタ設定と中盤以降のオフロード走行な展開を踏まえた上で振り返って考えると、目先の笑いを取りに行った?と思えてしまった。

なお、ここから設楽が92点を連発して仕事をしなくなる。

ニューヨーク(ネタ:余興)

合計得点:461点(設楽:92、日村:90、三村:92、大竹:93、松本:94)

1stステージ順位:2位(Finalステージ進出)

私的評価:設定B、展開A、ワードB、演技A、ハマり感B

ニューヨークはバナナマンMCのコントvs漫才番組「爆笑ドラゴン」で東京03がネタ指定してOAされた「曲作り」が初見。そのため悪意・偏見起点のネタを作るコント師という印象があり、個人的にも面白いネタは性格が悪くないとできないと思っているので、結構応援していたコンビでもある。去年のM-1は毒が中途半端に弱かったので、うーんという感じだったが。

「曲作り」の頃は、かなりストレートな悪意を感じるネタが多かったが、公式YouTubeのネタ動画を見ると、悪意をぶつける先自体はベタ(シェアハウス、ストリートミュージシャン、フラッシュモブ、キャラ芸能人、言葉売り等)な一方、その切り口が捻ったものになっていて、絶妙な設定に唸らされる。

なので当然悪意ネタだと思ったのだが、まさかの嶋佐ワンマンショーネタでびっくりした笑。結婚式の余興で嶋佐が披露する余興がどんどん常軌を逸してく、というネタ。屋敷がM-1の際に松本から否定された「笑いツッコミ」を封印して強めにツッコんでいた(屋敷のにやけツッコミ、個人的には、ニューヨークらしくて好きなのだが)

序盤はスロースタートで、嶋佐の顔色の悪さや、明らかに弾いていない楽器パフォーマンス(ハープの後だからなおさら)、屋敷の野次を完全に無視する「野次ワクチン」感に邪魔されてあまり笑えず、この設定でこれは弱すぎないか?と心配になった。

ただ後半、石が出てきたあたりからの畳みかける展開は確かにすさまじく、ドリルや拳銃など、下手すると観客が引いてしまう小道具を笑いに繋げる、嶋佐の絶妙なバカバカしい演技でいつの間にか世界観に引き込まれていた。

今回、後半一気にギアを上げて畳みかけるタイプのネタが少なかったので、それも功を奏して高得点に繋がったか(91点平均くらいかと見込んだのだが、実際はそれより高かった)

ジャングルポケット(ネタ:脅迫)

合計得点:454点(設楽:92、日村:91、三村:88、大竹:92、松本:91)

1stステージ順位:5位(ニッポンの社長と同点)

私的評価:設定B、展開B、ワードC、演技B、ハマり感C

なんだかんだで4回目の決勝進出トリオ。斉藤ツッコミのネタは「トイレ」「エレベーター」と傑作ぞろいなので今回も期待したのだが。。

ヤクザ(?)が斉藤を脅迫するために、娘を人質にとるのかと思いきや、近所のゴシップ情報をダシに情報を吐かせようとする、という意外な展開のコント。

設定は普通に面白く、展開も「エレベーター」と同様、前半はただただ困惑する斉藤が、後半はむしろ二人のボケに乗っかっていくという2段構え構成でストーリーに動きもある。しかし、設楽・日村が指摘していたように、何かが噛み合っていなかった。

おそらくそのズレの要因は二つある。それは、「セリフで説明される設定の複雑さ」と「緩急の無さ」だ。

今回のネタは、太田とおたけが交互に説明する、斉藤の近所で繰り広げられている泥沼の不倫設定が大きな要素となっているが、大声かつ早口でまくし立てるにはちょっと設定が複雑すぎる。もちろんその設定の複雑さが、ホワイトボードのボケに繋がるのだが、フリとしては長すぎるし、ちゃんと話についていく必要があるので、観客に笑ってる余裕がない。

また、セリフ量が多く、お互いに声を張るタイプのネタだからこそ必要な、「緩急」「間」が、セリフの応酬の中でほとんどなかった(多分1-2か所程度)

「トイレ」では、随所に挟まれる斉藤の「うんち、あるぅんだよぉ!?」というセリフ、「エレベーター」では、エレベータの開け閉め動作+エレベーターが開いたときの斉藤のマイム、でそれぞれ「間」が取れてメリハリがあった。今回のネタは3人が思いっきり声を張り続けるため、ネタ中に「間」がなく、メリハリがなくて間延びした印象を受けた。

そもそも、ヤクザ設定である必要があったのだろうか(太田もおたけもチンピラがはまり役なのはその通りだが)。例えば、ちょっと怖めの悪徳マルチ業者から契約を強制されている、という設定にして、セリフももう少し落ち着いて静かに話す、くらいでもよかったのでは?


とりあえず、1stステージ10ネタの感想は以上である。個人的には空気階段とジャルジャルが2トップ。ニッ社はこのネタを見れて良かった。一発目の笑いまでが丁寧なネタが多い一方、設定バラシで大爆発するネタはなかったという印象。Finalステージに進んだ空気階段、ニューヨーク、ジャルジャルのネタはどれも、後半にかけて盛り上がっていくタイプの構成だったか。

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