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自然と向き合うこと~野生動物との共存

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今回は、森林における生物同士の関わりなどについて研究している小池伸介先生にお話を伺いました。
近年、クマをはじめとした様々な野生動物が畑や住宅街などに出没する事例が相次いでいます。インタビューを通じて、森林生態系の魅力や共存する上での問題などについて興味を持っていただけると幸いです。


<プロフィール>
お名前:小池伸介先生
所属学科:農学部地域生態システム学科
研究室:森林生物保全学研究室

研究のきっかけ


─先生は大学でどのような研究をしているのですか。

いろんな生き物同士のつながりについてですね。動物と植物とか動物と動物の関係とか、そういう関係を種間関係とか生物間相互作用と呼ぶのですが、そういった生き物同士のつながりを研究しています。

ーなぜそのような分野の研究をしようと思ったのですか。

元々は種子散布の研究をしていたのがきっかけでした。
当時私は大学生、森林や動物などの研究をしたいと思っていました。その中で私が興味を持っていたのが、高速道路ができて、動物が移動できなくなってしまうなどの問題です。海外だと、分断されてしまった森と森を繋ぐ橋(コリドー)をかけて、その上を緑にして動物が移動できるようにする取り組みがあって、それについて研究したいと思っていました。当時の研究室の先生に言ったら、そういったコリドーを使う動物というのは行動力のある動物なので、まずはクマのことを知らなくては駄目だと言われて、いきなりクマの調査のプロジェクトに送り込まれました。とはいえ、当時は別にクマについて研究したいわけではありませんでした。そのころはまだ、今のようなGPSを用いた行動追跡の機材などはなかったので、山に行って、うんちを拾ってきて、そこのクマが何を食べているかを調べることになりました。見つけたクマのうんちの中を調べたら、例えばですけれど、サクラのタネが八十何個分入っていましたといった話になって、それから種子散布について研究を進めたのが最初でした。研究を始めたころはクマと植物のタネの関係を調べるだけだったのが、実はそのタネもクマ以外のいろんな動物がまいたりしていて、いろいろな繋がりがあるということを知りました。そのつながりが面白いと感じて、どんどん研究が広がっていきました。例えば、クマがサクラの木に登って実を食べて、そのタネをお腹に入れた状態でどっか行って排泄する。そうするといろんな動物が集まってくる。フンコロガシなどが分解したり、ウンチの中のタネをネズミが持っていったりするなどというように、生き物の繋がりって、どんどん広がっていきますよね。だからそこの繋がりが非常に複雑で、面白いなと思ったのが種子散布の研究を始めたきっかけでした。


野生動物と研究


─これまでかかわった中で特に印象に残った仕事などはありますか。

そうですね。仕事とは少し違いますが、例えば、私が代表を務めている日本クマネットワークというNGOでの活動は印象に残っています。2023年の秋はクマに関するいろいろな問題があったじゃないですか。けれども、実際何が起きてるかということや、クマがどのような生き物かについてはほとんど知られていません。正しい情報を普及していく事でクマの正しい姿が伝わり、人のクマに対する印象がどんどん変わっていきます。大学での研究や教育とは少し異なりますが、違う分野の人や現場で活動する人たちと一緒に仕事するというのも、非常に面白いです。

─なるほど。それでは、今取り組んでいる研究について教えていただけますか。

今は、クマに装着する首輪にビデオカメラや加速度センサーを取り付けたり、別の装置を用いて野生のクマの心拍数を計ったりしてデータを集めています。そのあたりは、情報系や獣医学などいろいろな分野の人と仕事をすすめることで、これまでは分からなかったことを明らかにしています。

(カメラやセンサーが内蔵されたクマ追跡用の首輪)

高校生に向けて


─高校生、特に農工大の農学部の受験を考えている受験生に注目してもらいたい部分はありますか。

大学ごとの農学部の特色ですかね。農学部を受験することを決めた後も、もう一歩踏み込んで調べてほしいと思います。確かに農工大の農学部は特に人数も多いし、研究する分野の幅も広いけれど、農工大の農学部ではできないこともありますし、農工大農学部でしかできないこともあります。だから農学部を志望するというところまで決めたら、そこで何をしたいかというところまで踏み込んで考えたり調べることで、大学に入ってからミスマッチが少なくなるかなと思います。もちろん調べた結果、農工大以外の大学を選ぶならそれもいいことだと思います。

─それでは最後に、学生や高校生に向けて伝えたいものはありますか。

もちろんいろいろな知識はあった方がいいけれど、まずは先入観を持たないことですかね。森に行ったときに先入観があると、やはり見えるものもすごく狭くなってしまいます。もちろん知識がなければもっと狭くなってしまいますが、そのうえで、これはこうであろうなどと決め付けないことが大切だと思います。

─本日はありがとうございました!


文章・インタビュアー:農学部環境資源科学学科1年 鯊
インタビュー日時: 2024年7月26日
※インタビューは感染症に配慮して行っております。

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