鉄塔に関する限り、ここは横山操の街。

鉄塔のある街に越してきた。

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もちろん今まで住んだ街にも鉄塔はあったし、認識もしていた。でもそれは遠い風景であって、特別意識するものではなかった。目の前にそびえ立たれるのは、初めてだ(暗くて見づらい写真でなんだけれど)。

その、ものものしげで無骨な姿は、まるで横山操の絵画ようだ。

横山操は日本画の大家。彼の作品は、静かななかに荒々しさを秘める。噴煙がもうもうと駆け下る十勝岳、爆発する桜島の絵には、スピードというよりずっしりした重みを感じる。溶鉱炉や変電所などを描かせると、そこには朴訥で無頼な存在感がある。ほかにも骨のような枝ぶりをさらす枯木の原野などには、しんと静まる厳しさしかない。

横山の絵画には、無言の凄絶さがある。

目前の鉄塔も、住宅街の風景や空を無機質に切り取り、その鋭い骨格を泰然とさらしてそそり立つ。

鉄塔関する限り、ここは横山操の街だ。

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