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エロ同人作家か?VTuberか?いや、両方だ! ~伊東ライフにみる次世代クリエイター像とは

■今回の導入『伊東ライフ大全集』

昨年はオリンピックだけでなく、世界的な状況からコミックマーケット、略称コミケが開催されなかった。それ以外の同人誌即売でも軒並み開催されない状況下であった。

ただ、同人誌即売が開催されないだけで、オタクでもない、一般人にとっては関係ない話と思うかも知れないが、意外にそうではない。印刷業を始めとして打撃を与え、大きな影響を与えている。
それは新聞メディアなどでもオタク文化としての面白い話ではなく、経営の切実な問題として報道している。

また、そういったひっ迫中で同人作家達も持続化補助金を頼る話も多く耳にした。そして、それらの申請も通っていると聞く。同人作家はフリーランスとして扱われる時代なのだろう。

すこし話は逸れるが、同人誌販売で教員が地方公務員法違反になったり、ゲーム動画投稿で収益を得た陸自隊員が懲戒処分されたというニュースもあった。
公務員は法律で副業を禁止されているにせよ、同人誌販売、動画投稿で処分される中では歴とした収益ある職業と認められたわけである。同人作家であっても、持続化補助金が貰えるのも当然となる。

さて、昨今の状況だけでも語っていると長くなるため、本題へと入っていこう。同人作家達はこの状況下だからこそ、新たな道を模索する必要があった。

そんな年末に出てきたのが、『伊東ライフ大全集』である。

これは単に今まで発売された同人誌の電子版での詰め合わせではあるが、これが色々と凄い。期間限定の半額セールでも1万円を超える、同人誌セットが(電子データではあるが)山のように買われているのだ。

この凄さをVTuber伊東ライフという側面から、今回は読み解いていきたいと思う。

ただ、伊東ライフという人物は『伊東ライフ大全集』からも分かる通り、エロ同人作家である。なのにVTuberの面から読み解くというのには、きちんとした理由がある。

そして、これが今回の肝であり、次世代クリエイター像についても見えてくる。

また、『伊東ライフ大全集』はエロ同人誌なので、 成人向けです。金額も高いので購入は18歳以上になってから行いましょう。

■年末年始で数千万を稼いだ男(バーチャル美少女サキュバスおじさん)

『伊東ライフ大全集』が目に見えて凄いのは、販売数である。

上記のタイトルからも分かる通り、年末年始の数日で数千部が売れて、数千万円近いお金が動いたのである。

現時点でも販売数は7000超え。セット販売以外でも、単体でも同人誌は売られており、それらを合わせれば、数だけでも如何に脅威的か分かるだろう。

ちなみに出版業界は不況で、小説、漫画など初版の目安である1万部を超えないどころか、数千止まりも珍しくないと言われている。

これと比較しても、1万円を超える同人誌セットが、ここまで売れるのは更に脅威的と分かるだろう。

ちなみにこの売り上げに対して、伊東ライフにいかほど支払われるのか正確には分からない。ひとまず販売サイトであるDLsite.comの出品者向け説明ページにはこのようにある

※4000円以上の場合、卸価格は販売価格の80%となりますので、別途お問い合わせください。

80%ぐらいとは他の配信内でも語っているので、これで計算した場合、『伊東ライフ大全集』だけで今、現在の販売数7000部から見ても5千万近い金額を手にしたことなる。逆に販売サイトでも数千万の手数料である。

金額で見ても驚愕である。今後、売り上げ1億超えることも十分にあり得るところである。

ただ、昨今の同人作品で数千万、億に近い額を超える収益を出す事は別に珍しくはない。それに、これは電子版とはいえ再版といった形だ。過去の販売でも結構な数は売れていたはずだ。

今までは同人誌販売ではそういった収益の事実は、本人だけしか知り得ない情報だけに分かりづらかったが、昨今ではDLサイトが販売数と手数料が明らかにされている中では、明確な収益が他人からも見えている。

現に『伊東ライフ大全集』での収益は、赤の他人である私でもあって、このように公開されている情報からおおよそ割り出せている。

そもそも、伊東ライフ自身配信内でも同人作家としての収益を明確には語ってはいないが、同人活動のみでも人並みが生活できることは語ってる。これは他のYouTube活動をしている同人作家達も語っていることである。

当然、職業として捉え、商業として展開している同人作家の収益であって、趣味の延長であったり、同人作家として出始めではこの収益性は確保できない。

同人作家1億円プレイヤーはプロスポーツ同様、雲の上の存在ではある。

■なぜ、電子化なのか?なぜ、売れたのか?

ではなぜ今、電子化か。これは時代の流れからは不思議ではない話ではあるが、これに関しては、大方ご自身の口から語っている。

さて、これらを読み解いていこう。

まず、伊東ライフが自身の同人誌の電子販売に対して、以前から意欲的である事は度々配信内でも語られていた。
そもそもが、こういうご時世と同人誌販売も電子化という流れで必然であった事は伊東ライフだけに限った話ではない。

そういった話を聞いてか、大手の販売サイトDLsiteとFANZAの双方から直接、販売の勧誘の声がかがっていたという。

この勧誘という点ではクリムゾンと西義之の対談の中でも出てきている。

この二つの点からも同人であっても、動画配信サービス同様で有名所を専売、独占を狙って営業をかけているのは間違いないのだろう。

この専売、独占という考えは、配信によってサービスを提供するところにとって、大きな武器となっている。また、割引セールに関しても、売れているから展開できる手段でもある。

そんな伊東ライフ氏は意欲的であっても、作業時間が取れないからと電子化に対して、良い返事ができなかった中、DLsiteは電子化に対する作業を引き受けた事で契約を結ぶ事ができた。
そうして、『伊東ライフ大全集』が世に出る流れとなった。

ここに関しては、そこそこ売れている同人作家であっても、このように作業を引き受けてくることはならなかっただろう。ネームバリューだけでなく、当然、労力も加味して収益性が見込めないといけない。

実際、『伊東ライフ大全集』というセット販売によって販売サイト側でも今でも数千万以上の手数料を得ている。これなら、労力を買っててでも契約を結ぶ事はDLsiteとしても惜しまない話である。

それでも『伊東ライフ大全集』は予想以上の販売数らしい。その発言をした時点でも確か数千超えた頃だったので、当初の目標は大全集で数千部、単体の方をメインとしていたのだろうか。
それでも余裕で数千万程度の売り上げである。その時点でも数百万以上近くはDLsiteに入る見込みだっただろう。

その上、年末という事もあり、クーポンで他作品にも誘導を図っている。『伊東ライフ大全集』以外の販売で購入者お得となる為、他作品にも誘導している。
今回、DLsiteと伊東ライフはWIN-WINな関係ではあるが、やはりDLsiteにとっては、それ以上の有益を生んでいる。

では、次になぜ売れたのかに移ろう。

ここで大事になってくるのは先にも語ったVTuber伊東ライフである。現在、伊東ライフには3つの職歴、段階がある。エロ原画家、エロ同人作家、そして、現在のVTuberである。

エロゲー時代から今も追っている人なら、最古参となるだろう。私も長く、エロゲーを嗜んでいたが、私がエロゲーに離れた空白期に伊東ライフが出てきていたため、私がその名前を知ったのはエロ同人作家として知名度が出てきた頃であった。

確か、その名前を聞いたのは即売会で修正の甘さから黒マジックで、その場で修正した頃だったはず。
これも今となってはエロ同人作家、伊東ライフの伝説の一つであろう。

その後も、『伊東ライフ状態』、『1伊東ライフ=30000円』などの生きた伝説を生んでいる。

現時点での一番の伝説は、エロ同人作家が愛園愛美、「にじさんじ」の絵師(ママ)となった事だろう。そして、 それだけではなく議員系Vtuberおぎの稔をも生み出した(現在は第二版として緒方ていが務めているが)。

そもそも、コミケであっても堅実さを売りにしてきたと公言するほどに、ネタとなる伝説はあれど炎上、負の伝説は見受けられる事はない。

つまり、伊東ライフの知名度とは伝説の積み重ねによって、広まっている。もちろん、それに付随した作品の質も裏付けしている。

だが、エロ同人作家である伊東ライフにとって、商業的に流通に乗った作品はエロゲーと一部の書籍のみ。それの発売にしても2010年代の頭である為、これらの入手は難しい。過去の同人誌などは更に入手は厳しい。

VTuber伊東ライフから入った層には既に伊東ライフの作品を手に入れる機会とは少なかった。そんな気持ちを金額に還元するにはスパチャぐらいしかなかった。

そんな知名度が知れ渡った中で、全ての成果物が公開、購入できるとなれば真のファンとなる為には必須のアイテムといえよう。

それは読者のレビューでも現れている。ただ、『伊東ライフ大全集』を購入してなお、赤スパチャ(10,00円以上)する強者もいた。

『伊東ライフ大全集』がなぜ売れたのか。

それは今まで知名度だけが先行した伊東ライフの作品集が手軽に買えたこと。しかも、半額1万超えとはいえ、同人誌40冊以上とコスパがいいので、決して高くはない。

こうなると、もはや商品が単に売れただけの話ではない。ここまでくると『鬼滅の刃』に近い側面があるのかもしれない。ただ、知名度だけで手に取る層が出てくるほどに、商品以上に作者の作品として。

■「ブランディング」~自身のブランド力

伊東ライフの配信内で「ブランディング」という単語をよく口にする。

ブランディング、またはブランドマネジメント (英: branding, brand management)は、ブランドに対する共感や信頼などを通じて顧客にとっての価値を高めていく、企業と組織のマーケティング戦略。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

これはエロ原画家時代に培った感覚なのだろうと思う。
実際、原画家だけでなく(エロ)プロデューサーという肩書きも持っていた。これはネタではなく、所属していた『MOONSTONE』内でも伊東ライフを中心に新ブランド『MOONSTONE Cherry』が立ち上げられており、企画・原画と共に担当していたとある。

そんなプロデューサー業では「ブランディング」は重要になる。

そして、『MOONSTONE』を退職後、フリーとなった今、伊東ライフの「ブランディング」とはすべて自身の名前と行動になってくる。

都市伝説的なエロゲー業界の枕営業に関しても、民安ともえの対談でも中でも常識的な回答をする当たりは、自身の「ブランディング」に基づいた意見なのかもしれない。
だから、枕営業に対して肯定、否定ではなく、リスクとリターンが割が合わないとシンプルな答えである。当然、業界の内情も加味しての答えてはいるが。

先も語った様に『伊東ライフ大全集』は伊東ライフという名前だけで売れている側面がある。実際、それは『伊東ライフ大全集』という商品名のタイトルだけでなく、商品画像の中心にもVTuber伊東ライフが表示されている。

まさに伊東ライフの、伊東ライフによる伊東ライフのための作品集ともいえる。

これが仮に伊東ライフの代名詞である「がんばれ♥がんばれ♥」をタイトルにしていた場合、売れ行きが変わっていたのではないだろうか。

そもそも、VTuber伊東ライフを知っていても、「がんばれ♥がんばれ♥」を知らない人もいるだろう。その元ネタは同人誌である。
『伊東ライフ大全集』がなかった今までは、現物で確認するのは困難であって、言葉だけが専攻していたのが現状であった。
(その代名詞である「がんばれ♥がんばれ♥」も頻繁に出てきているわけでもないらしい)

やはり大事なるのが生産者、伊東ライフである。それが「ブランディング」の成果といえる。

昨年、ブームとなった『香水』の歌詞の中には『ドルチェ&ガッバーナ』というブランドが出てくる。この『ドルチェ&ガッバーナ』はデザイナー2人の名前を冠したブランドである。

自身の名前が作品だけでなく看板、ブランドとして背負う事は別に珍しい話ではない。

■個人ブランドと有名出版社ブランド

個人がブランドとなって、何千部と作品が売れてしまうと、有名出版社から出る作品が数千部止まりでは出版社は名折れとなってしまうだろう。

『鬼滅の刃』のように1億も超える部数を出す反面、数千部も売れない作品も世に多く出ている。

また、よく小説投稿サイトで『有名』という、うたい文句をよく使って書籍化した作品をアピールしているが、これでは出版社の成果は何もない事を露呈させている事になる。あくまで出版権を獲得して、出版しているだけになる。

当然、コミカライズ、アニメ化などの権利に繋がる行為だから、全てを否定的いうわけではないが、それが数千部止まりでは意味が無い。ただ、それが無いように出版社も売れるだけの、知名度の知れた『有名』な作品を探しているのだろう。

先も語った様に『伊東ライフ大全集』は知名度の知れた『有名』を体現している。そして、成果として何千部と売れている。出版社の印税と同人販売の手数料を考慮に入れれば、収益性ではもはや有名出版社に頼る利点はなくなる。

今回の『伊東ライフ大全集』もDLsiteがそれを代行しているのだが。当然、同人誌である以上、出版社が扱える題材ではない。それにエロという成年コンテンツでもある。

しかし、VTuberの知名度に注目する出版社も出てきている。月ノ美兎のエッセイ集などはKADOKAWAストアの限定版も予定されている。

限定版を想定している当たりは、ファン層に向けているアイテムと分かる。

■エロ同人作家か?VTuberか? 雀魂公式の思惑

『雀魂 -じゃんたま-』で公式を示す肉球マークがあるのだが、大手VTuberは軒並み取得されているのに、伊東ライフは配信、活動から公式にも貢献しているのに長らく、肉球マークが貰えてなかった。

そんな中、ようやく貰えた肉球マークも娘である愛園愛美がいとも簡単に賭けてしまい、没収される自体になってしまった。

これは今後のVTuber伊東ライフの伝説となっていくのだろう。

ただ、これは考えてみれば変な話である。

佃煮のりおはYostarとはイラストレーターとしての縁があって、麻雀初心者でながら、息子の犬山たまきにもあっさりと肉球マークもくれたと聞く。

これらを元にして考えると、雀魂公式は伊東ライフをエロ同人作家であるがイラストレーターとしてではなく、VTuberとして芸人のように扱っているのである。

何度も言うようだが、伊東ライフは愛園愛美も生み出した人物だ。その実績、知名度ではエロという障壁はあるにせよ、雀魂がキャラクターの依頼しても、別におかしくはない。

それよりも伊東ライフをVTuberとして芸人のように扱った方が、雀魂公式は得になると判断しているのだろう。確かにこれだけの面白いネタを供給してくれている以上、見ている側も納得ではあるが。

少なくとも雀魂公式は伊東ライフをイラストレーター、エロ同人作家ではなく、VTuber、芸人として位置づけているのだろう。

この背景と昨今の状況的な判断からか、伊東ライフ自身も今年の活動割合をイラストレーターよりもVTuberに重きを置くと宣言している。

■では、伊東ライフの位置づけとは?

タイトルにもあるように伊東ライフはエロ同人作家か?VTuberか?

その答えは先に語った通り、自他共に両方を認めてられている事になる。

マルチなタレント性はシナジー効果もあって、「ブランディング」にもつながり、作者、作品の知名度に繋がっていくだろう。
今後のクリエイターにとって大事になっていく部分と思う。

しかし、『MOONSTONE』時代から原画、企画だけでなく、Webラジオで広報活動も行っていた。これほどのマルチな活動を1人でするのは難しい。おじさんと認めるほどの年齢的な経験値があるにせよだ。

ここは伊東ライフ自身も、それは理想であって、仕事であれば他人には強要できる話ではないと振り返っている事ではある。

こうなってくるとマルチなタレント性とは語ったが、実際は唯一無二タレント性なのかも知れない。
そうなってくると真似したくとも真似は出来ないモノではある。


さて、この先は申し訳ありませんが有料記事となります。無料公開して語るに少しリスクのある部分であったりするためです。

例えば、『伊東ライフ大全集』とスパチャ1億の女性との比較であったり、雀魂公式は本当のところ安パイを切っているなどとなります

若干、与太話ともなりますので興味のある方は、お付き合いください。


――――――有料パート――――――
ここからは有料記事となります。


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