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WEBデザイナーのキャリアパスについて考えてみた

私は都内の事業会社でデザインチームのマネージメントを経験後、今はフィンテック系のスタートアップで1人目デザイナーとして奮闘中です。

この記事では、私が前職での約2年間のデザインチームマネージャー経験を通して感じた、成熟した事業会社で働くインハウスWEBデザイナーのキャリアパスについて書いてみたいと思います。

WEBデザイナーに求められるスキルとは

まずWEBデザイナーとして必要な最低限のスキルとして、
・情報設計/配色
・デザイン系ソフトの操作
・HTML+ CSSでのコーディング

があると思います。

新卒入社のデザイナーには実務を通してレクチャーしていきますが、中途採用ではまずはこれらの実務経験を確認します。

それに加え、各プロジェクトのデザインチームのリーダーとして活躍する意思やポテンシャルがあるかを擦り合わせます。
これが何を意味するかというと、「デザイン・コーディング面の進行管理も含めて活躍する意思があるか」ということです。
前職ではひとつのプロジェクトにデザインチームから、デザイナー、フロントエンドエンジニア5名程度がアサインされることが多かったため、その中で、デザイン・コーディングのスキルに加え、「デザイン面でプロジェクトを推進する」、要は調整ごとを担えるディレクションスキルのあるメンバーの存在が必要でした。

その意思のすり合わせを行いつつ、どんなサービスが好きか、普段どのような情報収集をしているか、数年後どんな自分になりたいか、などの話題でコミュニケーションを取ってお互いに仲間になりたいかどうかを判断していました。

広義のデザイン、狭義のデザイン、ディレクション…デザイナーとは何か?

実際に業務に入ると、まずは開発環境に慣れる意味合いも込めて、デザインからコーディングまで一通り経験します。
そして経験を積むと、大きなプロジェクトのリーダーとして、チームを取りまとめていきます。
この頃になると、「実際にソフトを使ってデザインし、コーディングする時間」と、「会議や調整ごと、ドキュメントを作成する時間」が少しずつ逆転していきます。
デザインを提案したら決定事項を仕様書まで落とすのがデザインチームの役割として定着していたので(でないと期待通り実装されない)、だんだん比重の逆転にギャップを感じる人も少なくないように思いました。

その上、プロジェクトにおいてのデザイナーに求められる最大の役割は、「サービスを利用する上での体験やインターフェースをデザインし、会社に提案すること」です。
事業責任者に対して、体験設計からインターフェースまでのデザインの提案を、普段はスケジュールの管理や細かめのUIレビューをしているメンバーが行います。
なのでスムーズにいくことは少なく、なかなか開発に進めないとなることが多いです。

「よりよいユーザ体験の実現」という点で目的は同じものの、「体験設計」のデザイナーとしての職能と、「それを実現・実装する」デザイナーの職能どちらもカバーするには、かなり幅の広い知識やスキルが必要でハードルが高く、どちらも得意とするメンバーは1人もいませんでした。

実際にはディレクションスキルばかり上がる問題

ディレクションスキルが上がるのはまったく問題ではなく、問題なのは、ディレクターとしての時間が実質的に長くなるので、デザインスキル、特に、実装方法にとらわれず、事業やユーザー含めた全方位的な広い視野でTO BEを描き提案するスキルが上がらない、チャンスが少ないのが問題です。

四苦八苦してデザイン提案をし、作るものが固まると、「デザインの実現」に向けての開発が始まります。
下階層のデザインを経験の浅いメンバーに任せて品質を引き上げたり、コーダーさんとマークアップ設計を詰めたり、エンジニアと折衝しデザインの実現方法をコミュニケーションしたり、決めたことが分からなくならないように仕様書を書いたり、あちこちから溢れ出てくる課題やスケジュール調整に追われたり。

プロジェクトのプロセスとしてはこの期間が一番長く、この期間PLはほぼデザインツールを触らない場合も多いため、ディレクションスキルはめきめき上がるものの、デザイナーとしてのスキルアップは、プライベートの時間で自主的にやるしかなくなってきます。

そして疲れ果て、最初から作る工程を意識しすぎた、開発ベースのデザインしか提案しなくなっていく、という負のスパイラルが始まります。

「体験設計」の工程を実装者から切り離したら

だったら体験設計と実装者、「考える人」と「作り人」で分業すれば良いのでは、という話は当然ながら出ます。
ただ、分けるとなっても下記の問題は少なからず起きます。

●体験設計者としてのデザイナー
・ステークホルダーと対等に話せておらず、事業として必要な要件を握れていない
・意思決定された中で大切にすべきことを実装デザイナーに伝えられていない
・今いるメンバーでの実現可能性を怠り、絵に描いた餅で終わってしまう

●実装者としてのデザイナー
・仕事が取られる感やキャリアパスへの不安
・自分が意思決定に関われない劣等感
・上記によるモチベーションの低下

これらのような課題をあらかじめ解消できないまま進んでしまい、両者に一度亀裂が入ってしまうと、修復するのはなかなか大変です。
自主的にお互いが歩み寄れればよいのですが、横断的にマネジメントしていける人の存在が必要になります。
自主性に任せるにせよマネジメントが入るにせよ、当事者同士がお互いの能力を尊重し、話し合いながら進めていかないと、この切り離しは成功しないんだろうなと強く実感しました。

デザイナーに求められていること

考える人と作る人、うまく線引きをしてチームを分けたり、デザインとフロントエンドで線引きをしてデザイナーのカバー範囲の負担を減らして成功している会社さんも多くあるようなので、組織の規模に合わせて変えていくのは良いことだと思います。

ただやはり特化して行った先に何があるかのロールモデルは少ないなぁとモヤモヤと考えていて、自分の中でまだ答えは出ていないのですが、そんな中 @yhassy さんがこんなツイートをされていて、確かにそうだなぁと納得しました。

でも、両方がんばったっていいと思う

会社の規模感や求められること、自分のスキルによって一概には言えないとは思いますが、自分にどこが向いているかを探ることも含めて、意思を持って両方チャレンジしていくのはいいことだと私は思います。
むしろそれが、昨今界隈で話題の「デザイナーの市場価値」を上げることなのではないかなとも思っています。

どちらも良いサービス、良いユーザー体験を作るための手段でしかないので、サービスがローンチできれば良いのです、と聞こえの良い言葉を唱えれば良いサービスができるわけではないのは重々承知で、だからみんな悩むんだと思います。

悩めるデザイナーの力になりたい

作るものを決める、ベストな手段で作る、どちらにも貢献できうるデザイナーは稀有な職種だと私は思っています。
ただ、業界で叫ばれている課題感や、デザインと呼ばれる領域が広すぎて、目指す方向ややり方を見つけかねているデザイナーも一定数いるのではないかと感じています。

そんな悩めるデザイナーのために、もう少しファシリテーションを勉強して、今年中には何かやりたいなと思っています。

まだ何も決めていませんが、決まり次第noteやTwitterでお知らせしたいと思います。