デジタルの闇 第三章 Ⅲ
第三章: 「失われた影」
第3回: 「過去の真実」
夏美は黒板のメッセージと手帳の言葉が示すものを考えながら、さらに旧校舎の奥へと進んでいった。廊下はますます荒れ果て、壁のひび割れが深くなっている。窓から差し込む薄い光が、埃まみれの床に幾筋もの影を落としていた。
ふと、彼女の目の前に古びたドアが現れた。上部には「資料室」と書かれているプレートがかかっている。夏美はその扉を静かに押し開け、中に入った。資料室は埃で覆われ、古い本やファイルが無造作に積み重なっていた。かすかな湿気の臭いが鼻をつく。
彼女は棚を見渡しながら、一つ一つ手に取って調べ始めた。古い学校の歴史や行事の記録、そして生徒の名簿など、年代物の資料がぎっしり詰まっている。だが、真奈の失踪に繋がる手がかりは見つからない。
「ここに何かがあるはず…」夏美はつぶやきながら、さらに資料を探し続けた。
やがて、彼女は埃にまみれた新聞の束を見つけた。その中の一枚が彼女の目を引いた。見出しには、こう書かれていた。
「旧校舎での不審者事件—生徒数名が行方不明」
夏美は目を見開いた。この記事は、真奈の失踪と何かしら関係があるかもしれない。彼女は急いで記事を読み進める。
そこには、数年前にこの学校で起きた事件の詳細が書かれていた。旧校舎内で不審者が目撃され、その後、複数の生徒が失踪したというものだ。しかし、事件は未解決のまま、警察も手がかりを見つけられず、被害者の家族たちも無力感に苛まれていた。
記事の中で、夏美は一つの名前に目が留まった。佐藤一樹。事件の当時、行方不明となった生徒の一人だった。その名前は資料の中で何度も出てきていたが、彼の存在が事件の中心にいたことが記されていた。さらに、彼は「旧校舎で何かを見た」と言い残して姿を消したという。
「佐藤一樹…」夏美はその名前をつぶやきながら、彼が真奈の失踪に何か関係しているのではないかと考えた。もし彼が何かを見て、それが彼の失踪の原因となったのだとすれば、同じことが真奈にも起こった可能性がある。
夏美は急いで資料をまとめ、記事をバッグにしまいながら考えを巡らせた。この事件の背後には、何か隠された真実があるのだろうか?もしそうなら、真奈はその真実に気づき、姿を消してしまったのかもしれない。
その瞬間、背後で何かが動いた。振り返ると、資料室の奥に微かな影が見えた。再び、あの影だ。
夏美は恐怖を感じながらも、再びその影を追う決意を固めた。「影を追え」というメッセージが頭に浮かび、彼女は足を動かした。
つづく。