お兄ちゃんになりたかった

誰かを守れる人になりたかった。
こんな逃げてばかりの人生は嫌だった。
家族や友人や世の中に生きる人を大切にして、叱れるときに叱れて、包み込むような愛を持って戦えるときに戦える人でありたかった。

昔からヒーローが好きだった。
主人公に憧れていた。
でも主人公を演じようとするといつも失敗していた。
その度に私は人を引っ張っていく力がないんだって、弱いんだって痛感した。

私は人に怒れない、叱れない、戦えない。
守るべきものがあったら少しだけ怒れる、自分を傷つけようとするものからも少しなら守れる。
でも威嚇と時間稼ぎをするくらいしかできない。

人に何かを命令することもできない、指示ができない。
お兄ちゃんに生まれたかった。
悔しい思いを沢山した、もっと自分が強ければ、もっと人を引っ張る力があれば、もっと人を支えることができれば、って。

でもどれもうまく行かない。
結局へなちょこな自分でしかない、自分を自分で大切にすることも苦手。
苦手なことを我慢することもできない、頭を切り替えたりする器用さもない、感情に支配される毎日。

目を当てたくないと思った。
人にすがって生きるのはかっこわるい。
本当は1人きりでも生きていけるような人だったらよかった。
1人きりで生きて、ある日道端でのたれ死んでしまう、そんな人生も悪くないかな。


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