見出し画像

作品打ち切りのもっとも大きな原因の1つは「キャラクターを描くためのストーリー、設定」をつくっていないことである!

「打ち切り」これは、作者にとっても、そして読者にとっても、もっとも悲しいことである。
マンガや小説、ライトノベルなどさまざまなメディアで毎年多くの新しい作家がデビューしているが、その中で作家として作品を掲載、出版し続けることができる人はほんの一握りしかいない。

なぜ作品は打ち切られてしまうのか、なぜ続巻がでなくなってしまうのか? 長く続く作品、シリーズの続巻が続く作品とそうでない作品は、何が違うのだろうか?

今回は、アマチュアもプロも知っておきたい「作品打ち切りの1つの原因」「打ち切られないための対策」を考えてみたい。

もっとも大きな打ち切りの原因は「作品をつくる目的、意図」にある!

まず述べておきたいのは、作品が打ち切られてしまう原因は1つではないことだ。

ときには、時代に合わなかったり、時代よりも先に行き過ぎていたり、あるいはマーケティング、販売戦略のミス、アピール不足など、やさまざまな不運や要因が関係している。

これは本当にたくさんある。
めちゃめちゃ面白い名作や新人の傑作が人気が出なかったり、売れなかったりすることを非常に多く目にする。

しかしこれは、その作品がダメだったわけではなく、作者の力量に問題があったわけではなく、ただただ販売戦略がうまくなかっただけなのだ。

作品が面白ければ、販売戦略を見直すか広報に力を入れなどして改善することが可能である。
もっとも、販売スパンが非常に短い昨今では、スピーディーに対応しなければならないのだが……。

そういった「販売戦略の原因」は非常に重要だが、今回の記事の趣旨から逸れてしまうのでまたの機会に譲るとして、今回述べたいのはそういった販売に関わる原因以外で、作品の側に問題がある場合だ。

つまり、これをすれば高確率で打ち切りになるという「もっとも大きな原因」についてである。

その原因とは、

「ストーリーを描くための作品をつくってしまう」

……ことだ。

あるいは

「設定を描くための作品をつくってしまう」

……ことである。

どういうことかというと、物語づくりに関しては、次の3つの考え方、目的、意図がある。

①ストーリーを描くために物語をつくる。
②設定を描くために物語をつくる。
③キャラクターを描くために物語をつくる。

①は、特定のストーリー展開が浮かんでいて、そのストーリーを実現させたい! という目的でつくる場合である。

②は、自分で考えた異能や魔法体系、特別な武器やアイテムなどの設定や舞台を登場、実現させたい! という目的でつくる場合だ。

③は、描きたい人物が浮かんでいて、その人物を描きたい! という目的で物語をつくる場合である。

それぞれのつくり方で完成した物語は、一見同じに思えますが、じつはまったく違うものが出来上がる。

なぜなら、物語をつくる目的、意図が違うからなのだ。

この目的、意図は、「優先順位」と言い換えるとわかりやすいだろう。
「何を描くことを優先させて作品をつくるか」だ。

たとえば、①の「ストーリーを描くためにつくる」なら、そのストーリー展開を描くことが物語づくりの中でもっとも重要視、優先され、そのストーリーの実現こそが最終的なゴールとなり、そのストーリーを実現できれば、それ以外の要素(人物、設定)は、ストーリー実現のための駒や材料、道具という考え方で、ストーリーを描くことに重点が置かれた作品ができあがる。

②の「世界観や設定を描くためにつくる」なら、物語のすべての要素や描写の分量よりも「設定を描き、実現する」ことが優先される。結果的に、その世界観や設定を描くことに重点が置かれ、そのための作品ができあがる。

同様に③の場合も、その人物、キャラクターを描くことがもっとも重要視、優先され、すべての要素は人物を描くための道具であり、人物を描くという目的のための作品ができあがる。

そして、この①~③の3つのつくり方の中で読者が離れていく作品は、

①「ストーリーを描くための作品」
②「設定、世界観を描くための作品」

……なのだ。

もちろん、物語ではストーリーも設定も描かなくていいわけではなく、この2つの要素も面白くなければ、読者は離れていってしまうだろう。

しかし、このストーリー、設定、人物の3つのどれを「優先」するかということになれば、読者が読んでくれて、しかもお金を出してでも「買いたい」と思ってくれるのは、

③の「人物を描くための作品」

……なのである。

「キャラクターの魅力」を描くためにつくったの作品でなければ、すぐに打ち切られてしまう!

物語で読者がいちばん関心があり、興味を抱くのは「キャラクター」である。
これは日頃から筆者が繰り返し述べていることだが、読者はストーリーや設定ではなく、キャラクター、すなわち「人間」を好きになるのだ。

読者はそのキャラクターに「会う」ために作品を読み、「いつでも会える」ように、「ゆっくりじっくりそのキャラクターと時間を共有」したい、そのために物語を手元に置いておきたいと思って、お金を払って作品を買ってくれるのだ。

そして続編もシリーズの続巻も、読者はストーリーや設定を楽しみたいからではなく、ただただ「お目当ての、大好きなキャラクターに会いたくて、手元に置いておきたくて」続編やシリーズを買ってくれるのである!

読者がお金を払う対象は、ストーリーや設定ではなく、キャラクターなのだ。
だから、キャラクターの魅力を描くことを最優先して作品をつくるようにしなければならないのである。

もちろん、プロはキャラをまったく描いていないわけではない。

アマチュアに比べたら、プロ作家のキャラ造形とキャラ描写のレベルの高さは圧倒的である。
そして、プロ作家をサポートする編集者も素人ではない。作品の面白さについてはもちろん、売上とシリーズ継続にとってのキャラの大事さを誰よりも痛感している。

プロの作品に限っては、まったくキャラが描き足りないという作品はほとんどない。

しかし、それでも打ち切りになってしまう場合があるのである。

つまり、他のプロの作品でもっとキャラを描いている作品があり、プロはその作品と対峙していかなければいけないということなのだ。

すなわち、今以上にキャラを描くことを優先し、もっとキャラを立てなければならない、そうしなければ「プロ同士の競争」に負けてしまう

「ストーリーを読めせる作品」であっても、いや、ストーリーを読ませる作品だからこそ、今以上にその作品の中心、核となる「魅力的なキャラクター」を用意し、その魅力をあらゆる手練手管を駆使してもっともっと描かなければならないのである。

それが、他のプロとの弱肉強食の実力主義のエンタメ業界で、長く作品を続ける秘訣なのだ。

とにかく「始めからフルスロットルでキャラクターを立てて魅力を描き切る!」

打ち切りにならずにシリーズが続く作品に見られる「打ち切りにならない特徴」を述べたいと思う。

その特徴とは、物語が始まって「すぐに、最速、全力で、すべてを差し置いてキャラクターを立てること」である。

シリーズが続く作品は、総じてこれが徹底されている。
物語の中でキャラを描き、立てるのは、早いに越したことはない。

なぜなら、読者はちょっと読んで面白くないと感じるとすぐにページをめくるのを止めてしまうからなのだ。

この「面白くない」という感想は、キャラクターに興味がわかない、関心がわかないということに他ならない。

だから、まず読者にキャラ(主人公)を好きになってもらう、こいつ面白そうだゾ!こいつのこと気になるゾ! と思わせなければならない。

そのためには物語序盤開始直後から、「フルスロットル」でキャラを立てていかなければならない

とくに、始めはストーリー展開などを描く前に、とにかくキャラクターを描き、引き立てることを行うべきなのだ。

ストーリーはその後から走らせていく。
これがシリーズが続く、人気が出る作品の大きな特徴なのだ。

もっとも、キャラ立ての間はまったくストーリーが進展しないという意味ではなく、ストーリーが始まりつつ、その過程で徹底的に主人公を描き、引き立てていくようにするのである。
いや、キャラ立てそのものがストーリーになるといったほうが正確かもしれない。

打ち切りにならずにシリーズが継続している作品は、「魅力的で強力な存在感を放つキャラクターが登場し、さらに作品のスタート直後から徹底的にそのキャラを立てる」ことが行われている。

つまり、そのキャラが登場する前から、そのキャラの存在感を高め、キャラを立てることが行うのだ。

以前にも例に挙げたが、マンガ『らんま1/2』の第一話などを見るとそれがよく分かる。かなり戦略的に、計算づくでキャラを立てることが行われている。
この第一話は本当にスゴい。

同作のストーリーや舞台、状況設定などがすべて主人公(早乙女乱馬)を引き立てるためにあり、またすべての登場人物が乱馬について話し待ちに待ってついに登場する主人公の印象的な登場シーン、そして主人公の意外な秘密の暴露など、さまざまな手法が主人公早乙女乱馬というキャラクターを立てるために用意されている。
しかも、第二話以降も徹底して乱馬のキャラクターを立てるストーリーが展開していき、乱馬は「男に戻る」という目的を達するために行動し、その行動がストーリーとなり、いつも乱馬はそのストーリーの中心に位置している。

つまり『らんま1/2』という作品は、早乙女乱馬というキャラクターを描くためにつくられているのである。

キャラを好きになってもらえば、ストーリーはその後から付いてくる。
ぶっちゃけてしまうと、読者は主人公や好きなキャラクターが活躍すれば、どんなストーリーでもいいのである。そのキャラの魅力を感じることこそが、読者が求めていることだからなのだ。

魅力的なキャラクターは、面白いストーリーを生み出す。
それが、打ち切られずに作品を続ける秘訣なのである。

一度離れた読者は、キャラクターの魅力を徹底的に描くストーリーに変えることで再び戻ってくる!

キャラクターよりもストーリーや設定を重視して読者が離れてしまったら、いくらストーリーや設定を面白くしようとしても、離れた読者は戻ってこない。

読者をもう一度呼び戻すには、主人公を中心にキャラクターの魅力をこれでもかと描くことだけである。

つまり、ストーリーをキャラの魅力を描けるものに変えるのだ。

そうすれば、もう一度キャラクターに魅力が宿り、その魅力が高まれば、必ず読者は戻ってきて、再びその作品を読んでくれるようになるだろう。

新人賞の攻略法「ストーリーはキャラの後から付いてく来る!」

最後に、新人賞を目指す方に向けて、新人賞のもっとも有効な攻略法をお伝えしたい。

新人賞の攻略法はハッキリしている。

それは「魅力的なキャラクターをつくること」、そして「そのキャラクター魅力を描けるストーリーをつくること」だ。

これが、もっとも有効な新人賞を勝ち獲る方法である。

そのために大事なのは、「すでに決まっているストーリーをキャラクターに辿らせる」のではなく、キャラクターが自分の意志で何をするかを自分で決めて行動することだ。

作者は事件や問題を起こすだけで、それに対してどう対応するかはキャラクターにすべて委ねていくのである。

つまり、ストーリーというものは先にあるのではなく、「キャラクターの後から付いてくるもの」なのだ。

もし、「目的地も指示されて、すでに整えられた道を行く人」、「自分でどこへ行くかを決め、そこへ通じる道がなくても、森や茂み、砂漠、荒れ地など道がないところを道を切り拓きながら必死に進む人」がいたら、果たしてあなたはどちらの人の旅に興味を持つだろうか? 
どちらの旅のドラマの方が、その人物の人間性や活躍を描けるか?

おそらく、ほとんどの読者が後者と答えるのではないかと思う。
じつはこれが、キャラクターからストーリーをつくるということなのだ。
つまり、キャラクターの行動がそのままストーリーになるのである。
このようなストーリーづくりをすれば、その人物の魅力や活躍を描きやすい物語ができる。

もちろん、ストーリーや設定が重要でないわけではない。
面白いストーリーがなければ、キャラクターの魅力を十分に描くことはできない。
巧みな設定がなければ、キャラクターの魅力を引き出し、引き立てることができない。

しかし、キャラクターの魅力を描き、存在感を引き立てることを目的とし、ストーリーも設定もその目的のためにつくるならば、キャラクターの「立った」、読者が好きになり、身近に感じ、共感と憧れを抱き、応援したくなるようなキャラクターを描き出すことができるのである。

---

打ち切られない作品をつくるために、そして主人公のキャラクターをもとに、キャラクターからストーリーをつくる具体的な方法についてさらにお知りになりたい場合は、以下のテキストでくわしく解説されています。
ご興味のある方は、ぜひ合わせてご一読ください。
(表紙だけリニューアルしました。購入済みの方は、更新すると新しい表紙になります)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?