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【書評】読書という荒野/見城徹/幻冬舎

読書という荒野/見城徹/幻冬
(このnoteは2019年4月14日に他サイトに掲載した記事の転載です)

半年くらい前になるかな、本屋で目に留まり、「はじめに」を立ち読みした時に、全身に鳥肌が立ち、

「これは読みたすぎる。絶対に読む。でも、心して読まないともったいない気がする」

という謎の敬遠行為に走ってしまっていた。

アスリート×書評というテーマで書評活動をし始める前に読むべき本だったんじゃないかという説もあるが、ここまで3ヶ月ほどやってきてみた今だからこそ感じる部分があったと思うし、「たった一人の熱狂」という見城さんの本を読んでいたことで、見城徹という男の前提知識もあってか、この本の理解度はより深いものになったと感じる。

「たった一人の熱狂」を読んだ時に感じた、

みんながみんな頑張れないのではないか

と思ったことも、今回この本を読んでまたちょっと違う捉え方で認識することができた。

それに関しては「3 死を意識すること」で説明する

この一冊を通して、立ち読みした時に感じた鳥肌を超える学びがたくさんあった。ありすぎた。

いつもの通り心に残ったことを3つにまとめるのは困難だが、より心にズドンと感じたことを紹介する。1 他者への想像力2 見城徹の感じ方3 死を意識すること

―――――

1 他者への想像力

なぜ読書なのか

この本の中で何度も使われる言葉が

「他者への想像力」

というワードである。

人間が一生の人生の中で経験できることなんてたかが知れているが、読書を通して、無数の人生を体感することができる。その繰り返しによって他者への想像力が育まれる。人間社会を生きていく上で、多様であり様々な価値観を持つ他者への想像力を持たない人には成長はないのだ。

また、自分自身の行動や思考を客観的に見直し、修正する。自分の成長のためにも自分一人では想像できないような世界を知ることが、読書をすることで可能になる。

この「他者への想像力」について。

組織のリーダー的なポジションにいる人は誰もが感じることかと思うが、

今所属するチームのキャプテンとして戦っていく中で、自分自身、何度もぶつかる大きなテーマである。

60人近い選手、コーチングスタッフ、マネジメントスタッフ、トレーナー、チームを形成する全員が望む「勝利」を目指していく上で、お互いに理解し合うこと、リスペクトしあえる関係性、正直に言い合える関係性は必須である。

もちろん選手たちとのコミュニケーションを密に図っていくことで、そういったチーム関係者たちへの想像力を養っていくのはもちろん。

読書を通して、「こんな人もいるんだ」と思える経験をたくさんすることで、

様々な価値観をもつ仲間たちを心から理解する手助けになるのではないかと感じた。

「チームメイトとのコミュニケーション」をより良いチーム作りへ向けた「練習」とするならば、

「読書によって他者への想像力を養っていくこと」は、その土台を作る「ウエイトトレーニング」のようなものなのかな。

読書によって、「他者への想像力」を鍛える。

2 見城徹の感じ方

「はじめに」のタイトルにもある、

“読書とは「何が書かれているか」ではなく「自分がどう感じるか」だ”

という言葉に全てが集約されている気もするが、

見城さんの「読書によって培われた物事の捉え方」にとても感銘を受けた。

読書によって培われた他者への想像力によって、

関わる他者(もしくは出来事)の表面的な言葉や行動だけじゃない、その奥にある本質を捉え抽象化する能力がズバ抜けて高い

と感じた。

前田祐二の「メモの魔力」の中でも紹介されていた

ファクト→抽象化→転用

という思考作業を自然と行なっている。というか、圧倒的な読書によって身につけられているのだと思う。

「本から何を読み取り、どう動くか。どう自分の生き方に作用させるか。読書は単なる情報収集の手段ではないのだ。」

という言葉に込められた意味を自身で体現している。自然に。

見城さんが、吉本隆明の「転位のための十篇」を読んだ時に、

「この詩から学んだのは、戦いとは常に孤独であるということ。」

という感想を述べている。

別にこの本に「戦いとは常に孤独である」と綴っているわけでない。

その本を読んだ、その時にそう感じたのだ。

自分がこの「アスリート×書評」をやっていく中で最も身につけたい能力である。

読むだけでなく、どう感じ、どう動くか。この活動をしていく中で自然とそういう思考になれる人間になるぞ。

3 死を意識すること

前に「たった一人の熱狂」を読んだ時に、

圧倒的な努力によって、人生を生き抜き、死ぬ時に納得できる人生にしたい。と、常に死ぬ時のことを意識して休息なく生きている見城さんに対し、

誰もがみんな死を意識して生きるというのはできないのではないかな

と感じていた。

しかし、この本を読んでいるタイミングで、

イチロー引退の特集番組でイチローのその一言を聞いた時に、自分にとっての「死」を考えさせられた。

「選手にとって引退っていうのは、ある意味死と同じなんですよね」

プロスポーツ選手である自分にとって、突き刺さる言葉だった。

いつか来る引退する時は、選手として「死」を迎えるということ。

そう思って、見城さんが死ぬ時を意識して毎日を必死に生き抜く様をこの本を通して読んでいくと、自分にはまだまだ選手として高め抜く伸び代が無限にあるように感じる。

実際の「死」に関しては自分にはまだ強く意識しづらい部分があるが、

スポーツ選手としての「死=引退」の瞬間を意識して日々を過ごしていくことは、簡単なことではないが、自分にもやり切れる。

もちろん選手が終わった人生の方が圧倒的に長いし、そちらの人生はさらに輝かせたいと思う。しかし、この一つのスポーツを極めることのできるこの限られた時間の中で、自分にできる全てのことをやり抜きたい。

そしていつか迎えるその時に「自分のラグビー人生はまんざらではなかった」と思って次のステージに堂々と進んでいきたい。

―――――

この本から考えさせられることはたくさんあった。

自分が今までそんなに読んでこなかった恋愛小説や古典などにも手をつけてみよう。読む本のジャンルも一辺倒にしていたら、本の世界に飛び込んでいる意味がなくなってしまう。

そう思って本を検索してみたり、本屋さんに行ってみると、

読みたくなる本が山のように出てきた。

完全に他人の人生を体感することにハマっている。



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