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アイドル・ポップスの革新史。KinKi Kidsの25年にわたる軌跡を振り返る。

【7/17(日) KinKi Kids「24451~君と僕の声~」 @ 京セラドーム大阪】

はじめに結論から書いてしまえば、1997年のCDデビュー以降の四半世紀にわたる旅路を共に祝い合うような、とても感動的なライブだった。

そして、今回のライブを通して、改めて再確認したことが大きく2つある。


まず1つは、2人の音楽の旅は、出発した時から現在に至るまで、数々のレジェンドアーティストたちによって導かれ、支えられ、彩られてきた、ということだ。

山下達郎は、ジャニーズ事務所から与えられた「デビュー曲のミリオンヒット」という使命を、"硝子の少年"を生み出すことで見事に達成してみせた。その他にも、デビュー曲の候補でもあった"Kissからはじまるミステリー"や"ジェットコースター・ロマンス"をはじめ、KinKi Kidsにとって永遠の代表曲となるような楽曲を次々と送り届けてきた。

また、織田哲郎は、KinKi Kidsの表現を次のステージへと導いた"ボクの背中には羽がある"や、ライブの定番曲となった"Anniversary"などを手掛け、2人の声に秘められた哀愁を美しいポップソングへと昇華させていった。

そして、KinKi Kidsの表現に深く豊かな文学性を与えているのが、作詞家の松本隆である。デビュー曲"硝子の少年"における《ひび割れたビー玉》という言葉は、2人の繊細で純粋無垢な一面を的確に抽出した名フレーズであり、アイドルのデビュー曲でありながら、2人が秘める翳りにフィーチャーした同曲のインパクトは、四半世紀を経た今も一切変わっていない。

また、今年リリースされたシングル曲"高純度romance"における《真実の蝶結びだね》という一節は、2人の奇跡的なバランスで成立しているKinKi Kidsというグループの本質を見事に射抜いた素晴らしいパンチラインだと思う。

他にも、吉井和哉(THE YELLOW MONKEY)が手掛けた"薔薇と太陽"をはじめ、KinKi Kidsの楽曲には、往年の「アイドルソング」の表現を何段階もアップデートしてきたものが非常に多い。そして、数々のレジェンドアーティストたちに、そうした楽曲を書かせてしまうKinKi Kidsの求心力に改めて驚かされる。

どこまでも自然体でありながら、同時に、クールな批評性を感じさせる佇まい。そして、自分たちの音楽を懸命に追求し続けるストイックな表現姿勢。そうした2人の姿が、数々のアーティストたちにポジティブな刺激を与えているのだろう。そうでなければ、山下達郎や松本隆との幸福な関係性は四半世紀も続いていなかったはずだ。

今回のライブは、ここでタイトルを挙げた楽曲が次々と披露された非常にメモリアルなものであり、改めて、KinKi Kidsのディスコグラフィーの豊かさに感動した。



そして、もう1つ、今回のライブを通して再確認したことがある。それは、堂本光一、堂本剛それぞれが誇る作詞家・作曲家としての溢れる才気である。

KinKi Kidsの歴史において大きな転換点となったのが、恩師・吉田拓郎との出会いだ。2人は彼から、ギターの弾き方、そして、世の中にはいろいろな音楽があり、様々な楽しみ方があることを教わったことで、その後、本格的に音楽の世界へと足を踏み入れていく。そして2人は、ただ与えられた楽曲を歌うだけではなく、自分たちでゼロから楽曲を生み出していくようになった。

今回のライブの中盤でメドレーとして披露された"好きになってく 愛してく"、"恋涙"、"愛のかたまり"の3曲は、全て2人が作詞・作曲を手掛けた楽曲であった。その中でも特に"愛のかたまり"は、自分たち自身の歌声が重なった時に生まれる切なさを最大限に活かしたドラマティックな楽曲で、また、女性目線で綴られた歌詞が秘める憂いは言葉を失うほどに美しい。

そして同曲は、決定的なジャニーズ・アンセムとして、数え切れないほどの後輩たちによって歌われている。自分たちの代表曲となる楽曲を、自分たち自身で作詞・作曲したアイドルグループは極めて稀有であり、何より2人は、今もなおフレッシュな姿勢で創作の道を追求し続けている。現行トップアイドルとしての確固たるポジションを築きながら、同時に、作詞家・作曲家としての成長を続けるその姿に、間違いなく、後進のジャニーズたちは大きな影響を受けているはずだ。

今回のライブを観ながら、この国における「アイドル」「アイドルソング」の在り方を革新し続けてきた2人の旅路が、いかに深い意義を持つものであったかを改めて再認識した。



そしてラストに披露されたのは、山下達郎が作曲を手掛けた最新シングル曲"Amazing Love"であった。同曲が描き出していく鮮やかで晴れやか景色は圧巻で、達郎節全開のグルーヴを乗りこなしていく2人の歌唱は、今回もどこか切ない響きを放っている。まさに、多くのファンが待ち望んでいたであろうKinKi Kidsの新たな王道ナンバーだ。

同曲の歌詞は2人が共同で手掛けたものである。CDデビュー25年周年のタイミングで2人がファンに向けて送ったのは、決して懐古的な言葉ではなく、次の5年、10年、さらにその先を見据えた未来志向のメッセージであった。

青く  輝き放つ  信じた時代  いま  ここにあるよ
君と僕の声は  Amazing Love
赤く  輝き放つ  信じた未来  いま  ここに歌うよ
君と僕の声が
僕と君の声が
ここから始まるよ
Our Love!

KinKi Kids "Amazing Love"

ここからまた、デビュー30周年、35周年へ向けた新章が始まる。2人なら、ジャニーズの、いや、この国におけるアイドルの歴史を、これからも幾度となく更新し続けてくれると思う。そう強く感じさせてくれる名曲であり、名演であった。

これからも、全力で支持したい。



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