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きっと、西野七瀬の未来は、もっと眩しい

【乃木坂46/『帰り道は遠回りしたくなる』】

「西野七瀬には、いくつもの意外な部分がある。自分について多くを語らないから、意外に思うだけなのだろうか? 彼女の魅力はその神秘性にある。」

秋元康は、西野七瀬についてこう語っていた。

日本の音楽シーンにおける、現行トップアイドル・乃木坂46において、グループ最多7度目のセンターを担う西野七瀬について、そう、僕たちは、まだまだ知らないことばかりだ。

彼女は、長所を尋ねられたら「ずっとゲームができる。」と答えるようなメンバーだ。バラエティ番組で、他の出演者がコメントを絞り出す中でも、彼女は絞り出した結果、「特にありません。」と答えるような人だ。

ファッション誌「non-no」の専属モデルをスタートした号では、「人見知りで、動画サイトを見るのが大好き。こんなネクラな私ですが、よろしくお願いします!」と自己紹介をしていた。

どこまでも自然体、自分の感情に素直。そして、自分については多くを語らない。

乃木坂46としての活動をスタートさせてから7年、多くの人が彼女に魅かれ続けているのは、たしかに、その「神秘性」ゆえかもしれない。


それでも、言葉で語らずとも、彼女の活動から明確に伝わってくることもある。

2014年、西野七瀬が初めてセンターを担うようになってからだろうか。常に柔らかな空気をまとい、時にフラジャイルな可憐さを感じさせる彼女が、少しずつ、表現者としての芯の強さを見せ始めた。

初めてセンターを務めた"気づいたら片想い"は、西野七瀬の放つ「儚さ」を最大限に表した楽曲だった。しかしその後、自らのパブリックイメージを覆していくように、"命は美しい"、"インフルエンサー"といったハード&クールな世界観の楽曲のセンターを堂々と担っていった。その表現の幅、ダイナミクスには、思わず息を飲んだ。

今では彼女は、乃木坂46のライブパフォーマンスを、圧倒的な存在感をもって牽引する存在となった。

そしてすぐに、数々の映像クリエイターたちは、等身大の彼女から溢れ出す未知なる可能性に気付いた。彼らは西野七瀬に女優としての才能を求め、彼女は確かな実力をもってしてその期待に応えてきた。


アイドル、モデル、女優と、少しずつ活動の領域を広げていきながらも、ストイックに乃木坂46の活動に打ち込み、青春の全てを懸けてきた西野七瀬。その彼女が、今回センターを務める楽曲"帰り道は遠回りしたくなる"。

アップリフティングなリズムが高揚感を引き立て、J-POPとEDMを融合させたようなシンセとオーケストレーションの調べが、推進力と疾走感を生んでいく。その上に、目の前の景色が明るく開かれていくような、輝かしいメロディがそっと光る。

だがしかし、そう、これは別れの曲だ。

西野七瀬の卒業シングルでありながら、過度なドラマ性を拭い、あくまでも前向きに彼女を送り出そうとするメッセージ。

《風のように 風のように/思うままに生きてみよう/過去がどんなに眩しくても/未来はもっと眩しいかもしれない》

僕はこの楽曲を聴いて、これから先、西野七瀬とメンバーたちが歩んでいく道筋に明るい希望を感じ取ることができた。


おそらく、彼女が既に卒業を意識していたであろう今年の5月に発売されたフォトブック「わたしのこと」は、次の言葉で締めくくられていた。

「恐れる気持ちが消えた。そこには、自由になった私がいた。変わる自分、変わらない自分。どちらも受け止めてこの先へ。」

僕たちは、西野七瀬について、まだまだ知らないことばかりだ。それでも、次の世界に踏み出していく彼女の魅力を、これからも新たに発見していけるはずだ。

心からそう信じられるからこそ、こんなにも晴れやかな卒業シングルが実現したのだと思う。

7年間、日本のトップアイドルとして表現力を研ぎ澄ませ続けてきた西野七瀬。彼女の次のステージに期待したい。



※本記事は、2018年11月14日に「tsuyopongram」に掲載された記事を転載したものです。

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