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amazarashiが「言葉」に託す「希望」について。

来週6月9日(火)、2018年に開催されたamazarashiの武道館公演「朗読演奏実験空間“新言語秩序”」の模様が、期間限定で無料配信されます。

おそらく今回の配信は、SNS上の誹謗中傷をきっかけとして起きたあの悲しい事件に端を発していることが予想できます。僕は、あのニュースを耳にしてから、「言葉」を生業とする者として、胸を締め付けられるような思いを抱いています。

そして同時に、いつだって「言葉」に「希望」を託し、懸命に音を鳴らしてくれるamazarashiのことを思い出していました。


今回の配信について、秋田ひろむは、次のようにコメントしています。

「新言語秩序」は、一般市民同士の相互監視によって言葉が奪われた社会を描いています。このテーマが時を経て、より深刻に感じられてしまう今の社会のムードが悲しいです。
amazarashiは希望を歌ってきましたが、それは人間の良心に依拠した僕の幻想にすぎません。現実は僕の想像よりずっと無情だったように思います。
この作品を通して、心の中に自問自答や葛藤のようなものが芽生えてくれたら、それが巡り巡ってどこかの誰かの希望になりえるのではないかと、そうであってほしいと願っています。


今回は、amazarashiの武道館公演「朗読演奏実験空間『新言語秩序』」について綴った過去記事を転載します。

amazarashiが「言葉」に託す「希望」が、一人でも多くの人に届いたら嬉しいです。


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今、日本のメジャーシーンにおいて、これほどまでに「過激」な表現に果敢に挑むアーティストは、amazarashiだけかもしれない。

「僕らが今できる表現を全て注ぎ込んだ記念碑であり、これからのamazarashiを占う試金石です。」と秋田ひろむが語る、11月16日の開催を控えた日本武道館公演。その公演名、そしてリスナー参加型のプロジェクト名が「朗読演奏実験空間『新言語秩序』」だ。

amazarashiは、「言葉のディストピアの物語」を、音楽、小説、アプリ、そして日本武道館公演を通して描こうとしている。

アプリ上で公開されている小説に登場する、自由な発言を検閲する自警団「新言語秩序」。そのモチーフになっているのは、現代のSNS上の言葉狩りや、表現に対する狭量さだ。「言葉を取り戻せ」というこのプロジェクトのメッセージは、現代社会への鋭い批評でもあるのだ。

そして、先日公開された"リビングデッド"の「検閲済みMV」は、あまりにも衝撃的な内容だった。

冒頭に表示される「本楽曲はテンプレート言語を逸脱しているため、新言語秩序が検閲しました。テンプレート歌詞に一括置換済みです。」というメッセージ。オリジナル楽曲のメロディはノイズで潰され、画面は、典型的歌詞フレーズ生成技術をもとにしたテンプレート歌詞で埋め尽くされる。


「声を聞かせてよ」
「いつだって君のことを感じていたの」
「どこまでも続く道をずっと一緒にいて」
「同じ空の下で」
「終わらない夢を見ていた」
「二人の心には抱えきれないほどの愛」
「あなたの人生は希望であふれているあなたの人生は希望であふれているあなたの人生は希望であふれているあなたの人生は希望であふれているあなたの人生は希望であふれているあなたの人生は希望であふれているあなたの人生は希望であふれているあなたの人生は希望であふれているあなたの人生は希望であふれているあなたの人生は希望であふれているあなたの人生は希望であふれているあなたの人生は希望であふれているあなたの人生は希望であふれている」


「新言語秩序」の行動理念に則った検閲後の表現は、そう、明らかに常軌を逸している。アプリ上では「検閲解除済みMV」を閲覧することができるが、その中で描かれる「再教育」のシーンは、あまりにも過激なものであった。

秋田ひろむは、こう語る。


「傷つけられた言葉。嬉しくて嬉しくてたまらなかった言葉。そういう『言葉』の積み重ねで僕らは形作られています。是非この抵抗運動に参加して、この言葉たちの行く末を見届けてください。」


これまでamazarashiは、目を覆いたくなるほどに残酷でグロテスクな世界観を描くことを通して、絶望の中にある微かな希望を提示してきた。その表現の核は今回も変わらないはずだ。

いったいamazarashiは、11月16日の日本武道館公演で、どのような結論へ僕たちを導いてくれるのだろうか。

いずれにせよ、既存の価値観を覆す、全く新しい音楽体験になるのは間違いないだろう。





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