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「切なさ」の意味を、BUMP OF CHICKENは教えてくれた

【BUMP OF CHICKEN/『話がしたいよ/シリウス/Spica』】


半径1メートルのフォーク・ロック"話がしたいよ"と、壮大な宇宙で煌々と輝く恒星の名を冠した"シリウス"、"Spica"。

楽曲の手ざわりやスケール感はそれぞれ異なるにもかかわらず、しかしこの3曲は、バンドの揺るぎない想いのもとに、確かに繋がっている。

僕は以前、BUMP OF CHICKENの全国ツアー「PATHFINDER」の映像作品についての記事(2018年9月1日公開)に、自分なりの一つの結論を書いた。

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BUMP OF CHICKENの表現の出発点、そして核心は、いつまでも変わることはない。

それは「切なさ」である。

「過去」と「今」と「未来」は一直線上にしか存在することができない。

自分自身の時間軸しか生きることができない僕たちは、大切な人の「過去」を遡ることも、「未来」を覗き見ることもできない。

同じ記憶を積み重ねて、同じ明日を思い描くためには、同じ「今」を共有するしかない。

だからこそ、残酷に過ぎていく一瞬一瞬があまりにも尊い。

そして、当たり前のように隣に居ることができている時間でさえ、どうしようもなく切ない。

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映画『億男』のエンドロールで流れる"話がしたいよ"を聴いた時、僕はこの確信をより深めた。

《どうやったって戻れないのは一緒だよ/じゃあこういう事を思っているのも一緒がいい/肌を撫でた今の風が 底の抜けた空が/あの日と似てるのに》

そう、BUMP OF CHICKENの音楽に心を揺さぶられるのは、やはりその「切なさ」ゆえだ。

孤独とひとりぼっちは違う。そんな温かな気付きを与えてくれるこの曲に、僕は思わず涙ぐんでしまった。

まるで、友人の部屋に招かれたかのような親密さ。日本のロック・シーンの王座に居続けるバンドが放つ楽曲とは思えないほどの、その等身大の距離感にも改めて驚かされる。

囁くように、呟くように、そっと言葉を伝えたとしても、しっかりとリスナーに伝わるという確信が、今の彼らにはあるのだろう。

僕たちとBUMP OF CHICKENが長きにわたって育んできた信頼が、これまでにないほどにカジュアルな形で結実した。そんな新たな名曲が誕生したことが、心から嬉しい。

そして、TVアニメ『重神機パンドーラ』のオープニング曲"シリウス"。

《これは誰のストーリー どうやって始まった世界/ここまで生き延びた 命で答えて/その心で選んで その声で叫んで/名前さえ忘れても 何度でも呼んで》

極めてロジカルに構築された数学的なギター・アンサンブルは、圧倒的な熱量と感情の密度、そして何より、宇宙規模の壮大なスケールを感じさせる。

今思えば、藤原基央はこれまでにもずっと、宇宙へのロマンを音楽に託してきた。だからこそこの曲は、BUMP OF CHICKENのギター・ロックの真骨頂であるといえる。

"話がしたいよ"は「時間」を通して、"シリウス"とエンディング曲"Spica"は「空間」を通して、僕は今回も、BUMP OF CHICKENの「切なさ」を確かに感じ取ることができた。

《終わりのない闇に飲まれたって 信じてくれるから立っていられる/描いた未来と どれほど違おうと 間違いじゃない 今 君がいる》("Spica")

藤原基央の、そしてこのバンドの表現の核心は、やはりブレない。だからこそ信頼できるし、毎回のように心を洗われる。

近々リリースされるであろう、次のアルバムにも期待したい。


※本記事は、2018年11月22日に「tsuyopongram」に掲載された記事を転載したものです。

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