見出し画像

ロック・バンドは、死なない。THE 1975の一大傑作『NOACF』を聴いた。

【THE 1975/『Notes On A Conditional Form』】



「ロック」の時代は、終わった。

そう叫ばれるようになってから何年も、何十年も経つが、その度に「ロック」は、「ロック・バンド」は、力強く再興の音と言葉を響かせてきた。

だからこそ、

他ジャンルの隆盛により「ロック」が完全に相対化され、その求心力が失われつつある2020年の今、THE 1975が、今作『Notes On A Conditional Form』をドロップしたことは、まさに時代の必然だったのかもしれない。

「ロック」の眩い可能性を証明する一大傑作の誕生を、僕は全力で祝福したい。



今作は、エレクトロ/R&B/ヒップホップ/アンビエント/ジャズなど、全編にわたって軽やかにジャンルを往来し続ける、まさに多彩な魅力を放つ作品である。

しかし、やはりと言うべきか、通奏低音として響きわたっているのは、間違いなく「ロック」のバイブスだ。

脳天を打ち抜かれるような痛撃なロック・チューンもあれば、耽美的でロマンティックなロック・バラードもある。

それでいて、それぞれの楽曲は幻想的なインタールードによって繋がれていて、アルバム全体が描き出していく景色は、あまりにも美しく、壮大である。

この総合力を発揮できるバンド、更に言えば、あらゆる表現を「スタジアム・ロック」へと昇華できるバンドは、この時代において、やはり稀有だ。



このアルバムを聴きながら、僕は何度も確信した。

「ロック」って、最高にクールで、エッジーで、果てしなくポップな表現なんだ。

「ロック」って、圧倒的にリアルで、熱量に溢れていて、それでいて、どこまでも知的で批評的な表現なんだ。

そして何より、「ロック」って、究極的にエモーショナルな表現なんだ。

あらゆる角度から光を当てながら、総体としての「ロック」の可能性を、僕たちに、もう一度信じさせてくれる。

このアルバムは、ロック・リスナーの希望だと思う。



まだ実現するかは定かではないが、9月に予定されている来日公演は、2020年代のロックシーンの幕開けを象徴するものになるだろう。

期待して待ちたい。




【関連記事】


この記事が参加している募集

コンテンツ会議

最後までお読み頂き、誠にありがとうございます。 これからも引き続き、「音楽」と「映画」を「言葉」にして綴っていきます。共感してくださった方は、フォロー/サポートをして頂けたら嬉しいです。 もしサポートを頂けた場合は、新しく「言葉」を綴ることで、全力でご期待に応えていきます。