【SS小説】恋愛指南

恋愛は奥手。いつまでも初心者マーク

好きな素振りより
好きじゃない素振りの方が簡単にできてしまう

同じ部署の同僚にいつまでも片想い

さりげなく好みを聞き出しつつも、私からは天気の話と仕事の話
他愛もない雑談ばかり
でも、愚痴は話さず、流行には少し疎いふりをして

お気に入りのキャラを鞄に付けて
「それ何?」と聞かれたら、
「可愛いでしょ?大好きなの!深夜にやってるアニメでね…」と饒舌に、

「…ちょっとあなたにも似てるね」
ココ、恥じらいポイント

いつも同じものを飲んで
「本当それ好きだね」って言われたら
「うん、私、一途だから」って返すの

「おはよう」は目を見て、あなたにだけ「◯◯くん、おはよう」と名前を呼んで、
「バイバイ」はあえて見ないように
少し離れたところからあなたを視界に入れつつ、笑顔で空(くう)を見て言うの
少し名残惜しそうに手を振りながら


『男は好きにさせるの。告白させるのよ。』
私の憧れのお姉さんが言ってた。

無邪気に笑って、少しおどけて、
無駄に敵は作らないように、回りには、女女してません、私は無害ですよって顔して。

あなたにだけ適度に頼み事もする
大げさにありがとー!って少しのボディタッチとお礼の一口チョコ

ポニーテールが好きって聞いたから、ご飯の時にそれとなく結んでみたりもした
「雰囲気変わるね」
「本当?…可愛い?」
「…うん、似合ってるよ」
「んじゃ、明日から結んでみようかなっ!」

あなたが笑った。
よし、いい調子
今日もあなたまで、もう一歩のキョリ

『おひとり様』で牛丼もラーメンもなんのその
あなたの前でも美味しくモリモリ食べる
気取らない方がいいときもある

でもお酒は弱いの
あなたと一緒じゃなきゃ飲みには行かない女よ、私は。

飲み会の帰り。

酔ったふりをして、えいっ!と手を繋ぐ
優しいあなたは握り返す

そのまま繋ぎたいけど駅に着いたら
「助かったー、ありがとう」
と、ゆっくりほどいてしまう

ねぇ、私のこと好きでしょ?
私のこと気になってるでしょ?
あなたもこの先、二人になりたいでしょ?

私、頑張ってるんだから
あなたもちょっとは頑張ってよ
か、帰っちゃうよ?

この先は知らないの
どうしたらいいかわからないの

この後の展開はバイバイしか経験ない
お姉さんも、肝心なこの後は教えてくれなかった

手、強くひっぱってよ
まだ一緒にいようって言ってよ
今夜は帰さないって言ってよ

終電、逃させてよ

「帰り、気を付けてね」

優しいけど嬉しくない

「うん。ありがとう。お疲れ様。」

完全に酔いが覚めた。しっかりした足取りでホームの階段を下る
夢見すぎたかな
好きにさせるって難しいんだな。

私の中の小さな乙女が、悲しい顔をしてこっちを見てる気がする

お姉さん、私、この恋もう頑張れないかもしれません…

~~~~~~

「おはよう、昨日間に合った?」

気まずい

「おはよう。終電?間に合ったよ。ありがとう」

「ううん、アニメ。好きなやつ」

「え…」

あれ、覚えてくれてたんだ。
ていうか、昨日だった!
すっかり忘れてた!

「見れなかった…。」

「そうか、やっぱり。遅かったもんね。」

「…あなたも見てたんだね。」

「君が好きだって熱弁してたからね。面白いね、あれ。」

「そ、そうでしょ!見れなくて残念。」

「録画したよ、今日うちに見に来ない?」

…え?

「明日休みだし。」

え?

え~~~っ!!!

嘘でしょ!どうしよう!
急過ぎてどうしよう!

お、おおおお姉さーん!と思ったけど、
お姉さんからは「ガンバ!」の絵文字。

そんなぁ!

もう仕事にならない!

でも、

私の中の小さな乙女が全力で旗を振って応援している

頑張れ私!と。
踏み出せ私!と。

ポンポンも振っている

一心不乱に踊っている

よおし!
心の中の小さな乙女よ、
私も今日お姉さんになるよ。

「うん!見に行く!」

「…う、うん!あ、仕事、頑張ろうな!」

「う、うん!ガンバロー!」

ひゃー!…アツイ!アツいぜ!

私の心の中の小さな乙女がサンバ笛を吹き鳴らしている

太鼓も叩き出した

おっと…それは…ドラか?
流石に騒がしい

まずは仕事に取りかかろう。

小さな乙女よ…見守ってね。



☆☆☆☆☆

どうも!都楳です。
読んでいただきありがとうございました!
最初のオチは、恋が実らない方向だったんですけど、変えたいなーと思ってもがいていたら、ちょっと個人的にふわふわした仕上がりになってしまいました。笑
気に入っていただけると嬉しいです。

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