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《エピソード21・執着と未練》弱冠20歳で1000万超えの借金、鬱、自殺未遂、親との確執。からの逆転人生を実現させたリアル話。

離れない気持ちと、進みたい希望

S子と住んだ家に戻ると、S子は男と2人きりで部屋にいた。無造作ではなく、覗いた玄関の隙間から見えた仲睦まじく並べられた靴は部屋の中の様子を表しているようでどうしようもない気持ちになった。出ていったのは僕のほうだ。それでも「別れよう」という契約のようなものをしていなかったし、まだ僕の荷物が部屋にあったからどこかで繋がってるつもりでいた。それなのに・・・

サヨナラを言う前に

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「もういいよ!」捨て台詞のようにその言葉を投げ捨てた僕は、どうにもいたたまれない気持ちになった。水商売は許せたのに、なぜか許せなさが残る。スッキリしないまま僕は家路についた。S子は

どんな男を家に入れたのだろう・・

前から付き合っていたのだろうか・・・

決して独りでは答えが出ない問いかけが頭の中を駆け巡る。そして、一つ問いかければ一つ心が欠けていく。そばにある時は気づかない大切なものも、失ってしまったり、目の前で誰かに奪われたり、手の届かないところにいってしまうとなぜだか急にそれが恋しくなり手放したくなくなる。

この気持ちが毎日訪れるのなら、世界中どの二人も離れることはないのかもしれないけど、一緒にいればいるそのぶんだけ”気持ちの希少性”が薄れてしまうのは神様の遊びなのだろうか。腹立たしいくらいにその原則のようなものは何度やっても同じだと感じる。

失った時に人はそれが手元にないことに初めて後悔するんだ。まさしくあの時はそんな感じだった。失ったって決めたのは自分自身だけど、その決めつけはほぼ間違いなかった。

僕はしっかり別れることを決めた。頭の中がS子のことで埋め尽くされながら、きちんと別れを告げようと思った。

「次、荷物持っていった時な・・・」

そう自分に言い聞かせることで、未練と執着を消そうとしていた。S子にサヨナラを言う前にすべてをスッキリさせたい自分勝手だったのかもしれないけど。

別れ

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僕はまたそこへ向かった。二度目の時はS子一人が部屋で待っていた。前の時とは世界が変わったかのように”あの部屋”の扉はすんなりと開く。今日は二階からも、一階からも男女の声は聞こえず静かな街の音だけが聴こえた。

久しぶりの家の中に入ると壁に空いた大きな穴が嫌でも目に入る。

「あの穴、どうしたの?」

その質問を遮るようにS子は言った。

「別に。なんでもない」

もう、僕にはすべてを話すことなんかしないって決めたんだろか。それとも、言いたくても言えない何かがあるのだろうか。あまりにも簡単に僕を部屋に入れたその行為は、何かを僕に求めているのだろうか。何もかもがわからなくなった。

「部屋に男と二人でいただろう」なんて問いただす気にもならなくて「そっか」と力なく返事するだけで精一杯だった。

きっともうその時には、2人には終わりは来ていたんだろうと思う。

「荷物持っていくわ。もう、これで終わりにしよう。家のこととかなにかなにかあれば連絡して。彼と仲良くね」

最後嫌味のようにいった”彼と仲良くね”が、最後に僕とS子の間を割いた。「違う」と言いかけたS子だったけど、もうその事実をバレていることも隠せないこともわかっていたんだと思う。

最後はやけに簡単に終わった。僕はS子から自宅までの最後の道のりを車で走った。スッキリもなにも感じない味のしないドライブだった。

その一年後くらいにS子と再会を果たすなんて、その時は思ってもみなかったんだ・・


続きはまた。

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