Football Life vol.31
6月17日カイザースラウテルン
この日はあの忌まわしい記憶が残る地でイタリア対アメリカ。
この頃になると試合開始2時間前にスタジアム周辺について雑感を撮り、試合開始30分前には帰りのICEに乗る取材スタイルがすっかりルーティーンになっていた。
なので、特に語ることもないから、僕にとってのアイドルの話を少しだけ。
僕にとってのアイドルはロベルト・バッジオだ。後にも先にもあそこまでハマった人間は他に存在しない。
当時、出版された雑誌はほとんど買っていたし、彼のポスターが付録で付いていようものなら、観賞用と保存用で2冊購入することさえあった。どうしてそこまでハマってしまったのか明確な説明はできない。
でも94年アメリカ大会の彼の姿は今でもハッキリと脳裏に焼き付いている。
ブラジルとの決勝戦。激闘の末、0-0で迎えたPK戦。5人目のキッカーとしてボールをセット。少し長めの助走。小刻みに踏むステップ。これまで何度となくアズーリを救ってきた右足。ゴールポストを遥かに越えてしまったシュート。両手を腰に当てガックリとうなだれる背番号10。
まるで彼がPKを外して、イタリアが敗れるあの瞬間のために瀕死のイタリアがローズ・ボウルまでたどり着いたと言いたくなるくらい印象的な姿だった。
あの瞬間、アメリカ大会は彼の大会になった。
少し大袈裟かも知れないけれど、僕と同じように感じた人は少なくないのではないかと思っている。
あれから12年が経ち16歳の高校生だった僕はカメラマンとして、イタリアとアメリカの試合を取材するためにドイツにいることに少しだけ誇らしい気持ちだった。
それにしても、敗者に興味を抱いてしまう性質は子供の頃から変わっていない事実に驚いた。少しは成長したと思っても、人間の本質なんて所詮は変わらないんだなぁと、さらに14も歳を重ねて実感した42歳の梅雨。
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