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#12 「  」→つるん(2019/05/27)

としくん、こんにちは。手紙をありがとうございます。
誰からか手紙を貰うのは、とても久しぶりのことのような気がする。
年賀状を書くのも最近やめてしまったし、そもそもあの葉書は、手紙ではないしね。
まあ、このメールも、手紙ではないのか。

メールでの文通は、中学生の時にはやっていたような気がします。
周りに、『天才てれびくんワイド』を愛する同級生が居なかったからです。
クラスメートはいつの間にか大人になってしまって、洋楽とかを聴いていて、
僕は中学生になっても天てれとズッコケ三人組が好きで、
みんなどこに行ってしまったのだろうと思いながら、
インターネットで探した仲間と言葉を使って遊んでいました。
あの頃のネットの友達は、どこで何をしているのだろうと思う時があります。
自分も自分で薄情なもので、いつどうして彼らとの交流を止めてしまったのか、
よく考えても思い出すことができません。読み返せるホットメールももう無い。

手紙の返事、最初は全然別のことを書こうと思って考えていたのだけど、
不可思議/wonderboyという若い人の存在を知って、他のことが手に付かなくなりました。
僕は彼のことを残念ながらまったく知らなかった。
今日、初めて、としくんのオススメなら聴いてみようと思ってイヤホンを耳に刺したのです。
週末は4歳の子供と過ごしていると、イヤホンの世界に浸るタイミングがないので、
月曜になってやっと色々仕事など放り出して、じっくり聴いてみたというわけ。

何も知らなかったので、こんなに真っ直ぐな表現力と技術を持つ若い人がいたんだと驚いた。
興味を持ってインターネットで調べると、もうこの世にいないんだということも知った。
2011年に24歳で急逝。

もう会うことはできないのかと残念に思ったのと同時に、もう一つ驚いたことがあった。
2011年に24歳。

胸騒ぎがして、慌ててパソコンの電卓で引き算をした。
僕、2011年に24歳だった。

不可思議/wonderboyは若い人だったが、僕より若い人じゃなかった。
2011年は、僕がとしくんと、あと3人の仲間たちと軍艦島へ遊びに行った年で、
忘れもしないがそのちょうど1ヶ月後に東北で大きな地震と津波と原発事故があって、
それからさらに3ヶ月後、僕の25歳の誕生日に不可思議/wonderboyの通夜が営まれていた。

『生きる』ってなんだろう。
不可思議/wonderboyは『生きる』という素晴らしいラップを創ったが、僕より生きなかった。
僕は『生きる』ことについては全然分かっていないが、かろうじてまだ彼よりも生きている。
当時は同じ『生きる』という題名の、東京事変の曲を、大阪の寒い夜によく聴いていました。
あの頃の方が今よりみんな、『生きる』ことについて考えようとしていたのかもしれないね。
でも、分かってしまうと、もう生きることはできなくなるのかもしれない。
僕は高校の同級生を20代で3人亡くしていて、彼らはみんな僕より思索の深い人だったので、
その頃から、深く考えることは怖いな、と思うようになった気がします。

僕はラップや小説を創る集中力もなく、目の前の世界と一人で向き合うタフさもなく、
SNS上に140文字の散文を日々もがき散らしながら、どうにか生きています。
これがいつか何かに繋がるかもしれないという希望と、
繋がったらもう生きられないかもしれないという恐怖を抱えながら、
何はなくとも子供は可愛いなーと思う、
持ち前の雑さと生命力とで今を生き抜いているようです。

雑なことは、往々にして器用だと褒められたりもします。あまり嬉しくはないけど。
器用でなくても、今と向き合い何かを残そうとしている人を僕は尊敬しています。

としくんが描いた「Rane Town」は、子供の本棚の上に飾って毎日家族で観ています。
ちょうど先週、それを観た子供が「心電図みたいだね」と言っていて、
この子は僕よりも遠くへ行けるかもしれないな、なんて思ったところです。

そんなとしくんが何かを残そうとする新しい活動に、参加できることを嬉しく思います。
このやり方ならば、僕も少しだけ何かを残せるかもしれません。

またお返事、お待ちしています。

2019年5月27日  とても暑い日の午後、ボスが居ないオフィスにて

前の便りはコチラ
#07 つるん→「  」(2019/05/24)

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