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#25 つるん→ウミウシさん(2019/06/21)

ウミウシさんへ

「ペーパー・プレーン・レターズ」に参加してくれて、ありがとうございます。
「おはなしごっこ」、面白そうです。ぜひやりましょう。
ウミウシさんとは、なんともいい出会いでした。そもそも絵の展示をすること自体が初めてで、ギャラリーという場所もほとんど未体験だったので、始まる前は、きっともうゴリゴリのアーティストたちが集って、その鋭利な心の切っ先で血みどろのアート談義を繰り広げ、ツワモノドモガユメノアト的な感じになるんだろうというとんでもない想像をしておりました。
なんちゅう先入観だ、と思われたかもしれませんね。
いや、だって、ほら、実際、初めての場所に行ったり初めての人に会うのは怖いじゃないですか。
その割にヘラヘラしてましたよね、僕。
楽しかったんです。ウミウシさんたちと出会い、作品に囲まれ、確かにこの人が作ったんだと実感しながらいろんな話をできたことが、本当に嬉しかった。
なんとなく、なんとなくですから間違っていても怒らないでほしいのですけど、ウミウシさんは小さい頃、一人でいる時とかに、よく折り紙とか、あやとりとかしていた人かなぁと思っていました。友達と遊んだり、漫画を読んだりもする中で、何か手作業を始めると特別に没頭してきた人かなぁ、と。手のひらに何かを載せてじっと観察したりとか。
僕も、「折り紙」と「紐を結びまくる」が趣味の子どもでした。そこに小説とラグビーとヒップホップとお酒が加わって、まぁよくわからない人間に育ったわけで、なんでしょう、そんな奴ですけど、それでもやっぱり僕からもウミウシさんにシンパシーを感じることがありますよ。人生のいろんなエピソードの中で、似通った時間や日々、瞬間との巡り会いが、あったのかもしれませんね。
そうだったら、もしかすると小説を読んでくれるんじゃないかな、と思って託しました。
本当に、読んでくれてありがとうございます。
ちょうど、最近は詩も書き始めていて、蠕虫舞手(アンネリダ タンツェーリン)も読んでみました。
なんという描写。ずっと何時間も、飽きずに、水の中の蠕虫を眺めている姿が目に浮かびました。読んでいると、自分まで一緒になって水の中を覗き込んでいるようでした。
僕の好きな詩も紹介します。
谷川俊太郎さんの「かなしみ」という詩です。
ずっと心の中にあって、不思議ですけど、この詩があるから、僕はまだ遺失物係の前に立たないでいられるんだな、なんて思います。
さて、おはなしごっこです。
小学校6年生の卒業間近、クラスの女子2人ともう1人男子と僕とで、交換日記を回していたことがあります。僕はそこに小説を書いていました。ウミウシさんの提案に、一気に懐かしさがこみ上げてきましたよ。
おはなしを、繋げますね。


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気づくと、彼は教室にいた。
誰もおらず、窓を割ることのできなかった陽の光が、すうっとガラスの表面で広がっていくのを見つめていた。
背後でカン、カンと音が鳴る。教室の後ろのドアを開けると、踏切があった。右を指す矢印が赤く灯り、バーが降りてくる。鐘の音が彼の心を打ち、廊下の向こうから、一陣の風が吹き抜ける。
確かに何かが踏切を通過していった。
上履きの中で、彼の親指は強く、リノリウムの廊下を掴んでいた。
「明日だよ」
教室の中を振り返ると、黒板の前に男が立っていた。
前のドアから入ってきたのだろうか、でもさっきまで、廊下には誰もいなかったはずだ。
男はもう一度言った。
「明日だよ」
それから、ゆっくりと言い聞かせるように、
「明日だからね」
と。
彼は教室を飛び出した。


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お返事、楽しみにお待ちしております。


としより

前の便りはコチラ
#19 ウミウシさん→つるん(2019/06/12)

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会社員です。「ペーパー・プレーン・レターズ」という、向かい合って紙飛行機を投げ合うように手紙をやり取りする企画をやっています。ぜひご覧くださいませ。
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