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#21 つるん→「  」(2019/06/12)

お返事ありがとうございます。
「天才てれびくん」、懐かしいですね。
天てれは僕にとっても青春だし、MTKで流れた曲の原曲を探すところから洋楽に入っていったクチです。
そのMTKについて一晩中語らおうと、神戸まであなたを訪ねたのはいい思い出です。
新幹線の乗り方も分からず、各駅停車に乗ってしまって、とても長い時間、車窓から景色を眺めていたのを覚えています。
もう7年ほど前のことになると思います。
月日が巡るその間に一度会社に就職し、ひと月の半分は地方へ日帰り(たまに連泊)の出張という日々を経験し、新幹線にも慣れました。
今、その会社を離れてまた新幹線の乗り方を忘れようとしています。
何かから離れてしまうと、忘れてしまうことの方が多いですね。
ただ、もう20年以上前のことなんですが、未だにはっきりと覚えていることがあります。保育園にいた頃のことです。
当時、おそらく5歳か6歳くらいだった僕は、廊下にあるロッカーから自分の荷物をいじっていました。すると、僕の後ろを、友達が歌いながら大げさな動作で走り去っていったのです。
その時の歌詞をずっと覚えています。
「おれたちゃみんな、生きているんだ」
言葉も、リズムも、間違いないと言えるほどしっかり覚えているんです。
ユニークな友達だったので、この歌についてはずっとずっと笑い話として人に語ってきました。
もう正確な名前も顔も思い出せず、今どこで何をしているのかも分からないのですが、この強烈な言葉を、なぜ彼が僕の心に20年以上も残すことになったのか不思議でなりません。
まさか彼の歌を覚えたまま大人になるとは思ってもみなかった。
おれたちみんな、生きているんだそうです。
嘘だろ、って思う日もあるし、そうだよな、って思う日もあります。
おれたちって誰だよ、そこにはおれも入ってるのかよ、って思う日もあります。
おれもそこに入ってるよな、って思える日もあります。
文字だけではリズムを伝えられないのが本当に残念なんですが、聴いたら、たぶん爆笑しますよ。
今度会う時に歌います。
iTunes storeにも、Spotifyにもない、だけどかつて確かに歌われた、名もなきこのワンフレーズを、完璧に覚えている振り付け(大げさな動作で走り去るだけ)と共に贈ります。
イヤホンの世界に浸る時間があまりないということですが、この歌は頭の中で再生する用なので、お子さんと過ごしながらでもいつでも聴けるかと思います。
お子さん、そうか、もう4歳ですか!
グループ展で買っていただいた絵画「Rane Town」、ご家族で眺めているとのこと、嬉しいです。
「心電図に似ている」という言葉、驚きました。
実は心臓に穴が開いているという欠損を持って生まれてきたので、3歳で手術をしました。それから20歳を過ぎるまでずっと心臓の健診を受け続け、そのたびに心電図をとられてきたんです。心電図、くすぐったくていっつも笑ってやり直しでした。これは20歳になっても。笑うと、針がぴくっと跳ねるらしいです。
もしかしたら、その心電図の動きを、僕は無意識にインプットしていたのかもしれませんね。
絵はほぼ一筆書きに近い方法で書いているので、まさしく心電図の線が引かれていくような感じです。
子どもの素直な感想を、こんな風に意味ありげに僕の体験につなげていいものか分からないのですが、恐れ入りました、という感じです。
くすぐったいといえば、エコーも弱くて。ジェルを塗って、バーコードリーダーみたいなのを胸にあてるのですが、先生は手元を安定させるために小指を胸につける癖がありまして。その小指のソフトタッチが、2,3日は感触が残るくらいくすぐったくて。
「君はいつまでたってもくすぐったいの弱いよね」と先生も笑うほどでした。
その先生は小児科医で、僕の手術の執刀医でもありました。そのため、20歳になってもずっと小児科で受診していました。
走り回ったり、ぐったりしていたり、不安そうに静かに座っている子どもたちに混ざって、モニターから流れている「アンパンマン」を観るという珍しい体験をしました。
健診に行かなくなって10年経ちました。
これもまた、離れてしまっても忘れないことの1つです。
ふと、いつまでも忘れないことは、実は記憶に頼っていないんじゃないかと思うことがあります。
覚えている、というのは、身体に染みついて、自分の一部になってしまうことなんじゃないか。
それを記憶と呼ぶのかもしれません。でも、記憶と自分の一部になることはどうしても別な気がします。
数が増えて重たくなっていくばかりの人もいれば、力になっていく人もいるのかもしれません。
でもとにかく今は、それが思い出せる限りは、おれたち、みんな、生きているんじゃないか。
友達が歌いながら走っていくということ、それを今もおもいだせるということ、これが生きているということなんじゃないかなーなんて思います。
いや、でも、この歌は、本当に爆笑しますよ。

2019/06/12 昼下がり、曇天の仕事先のバーで

前の便りはコチラ
#12 「  」→つるん(2019/05/27)

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