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「秋の大文化祭!2024」を振り返る
代表です。
昨日(12/30)の深夜、劇団5454の男性劇団員3名によるYouTube配信があり、年末の片付けをしながら楽しく見た(聞いた)。会話に混じりたい誘惑に負けて途中チャットで参加。すると春陽くんがすかさず反応してくれた。
「弦巻さん、札幌劇場祭の結果どうでした?僕はすごく悔しかったです。」
はい、自分も超悔しかったです。全身全霊で取り組んでいたので。本当に、持てる力の全てをかけた公演だったので。
というわけで「秋の大文化祭!2024」が終了してから約一月、すっかり時間が経ってしまいました。
弦巻楽団#40『ファーンズワース・インヴェンション』はおかげさまでたくさんのお客様に見ていただきながら無事終演しました。全7ステージ。
いかがでしたでしょうか?日本初演となるアーロン・ソーキンの舞台。青井先生から出された課題に自分はうまく答えられたのか、お客様に届けることができたのか、答えはわかりません。反省はたくさんあります。ただ胸を張って集大成と断言できます。どうだ!
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札幌で翻訳劇を一級のエンターテイメントとして成立させる。その難しさは骨身に染みてわかっています。知人の演劇人が鑑賞後、一度劇場を出た足でわざわざ戻ってきて感想を言ってくれました。
「これって、すごく難しくないですか?」
言わんとすることはすぐにわかりました。脚本が難解だから、という意味では全くありません。人情喜劇でも人情悲劇でもなく、身内ノリ(サークル範囲から北海道民範囲まで含め)でもなく、こうした「現代翻訳劇」を成立させること。芸術として成立させる、娯楽として成立させる、そして何より興行として成立させること。この北の試される大地で。
その知人はこうも言ってくれました。
注:弦巻本人になので多少のヨイショも気遣いとして含まれてます。
「この舞台、演出は東京でも通用すると思います。でもこれが札幌で普及するか、と考えたら難しいと思うんです。(大意)」
確かにパッと飛びついてもらえる要素は少ないかもしれない。でも、需要はあると思うし、周りにこうした作品を上演している劇団がないというのはやる立派な理由になるし、観ないと観客もあるいは札幌で活動する演劇人も存在自体気づかないと思うし、なにより、単純に自分が見たいからね、俺自身が。
そんなことを回答した気がします。
熱烈な感想も頂いたり、高校生の時お世話になった演劇指導者の方に絶賛のメッセージを頂いたり、北海道で一番尊敬する演劇人である方からラブレターかと見紛う感想まで貰ったり、ありがたい言葉をたくさん頂戴しました。
反対の意見もたくさんいただきました。それらは決して見当外れではなく、演出として劇団として考えていかねばならない課題を指摘していました。
それでも一つだけ。自分からどうしても言いたい、誇りたい点があります。
それは『ファーンズワース・インヴェンション』を僕たちは今回札幌の俳優だけでやりきった、という点です。
力あるゲストを招集することなく、札幌の俳優陣でやり切りました。
え?それって誇るようなこと?と思った方。
それはある意味幸福なことです。
正直、札幌の俳優のレベルは決して高くはありません。みんな言葉にはしないけど理解はしていると思います。だってもしそうじゃないなら札幌の俳優の需要は全国的に高い筈です。それはけして地の不利が全てだとは思いません。課題は多しです。
俳優教育の問題ももちろんあるでしょう。しかし自分はもっと根源的な、「人間」の基準が、もっと言えば日頃触れ合う人間たちとの関係性の中で紡がれる「人生」の基準のズレだと思っています。
少なくてもここ16年、意識的にそのことを考え作品づくりに取り組んできました。
そうしたことを話し合い、共通見解を探し、努力し、弦巻の取り組みに理解を示してくれる俳優、メンバー、劇団員たち。『ファーンズワース・インヴェンション』に集められた俳優達はそうしたメンバーでした。自分が考える、札幌でこの作品を上演するなら、上演を成立させられるのは、このメンバーしかいない。
みんな本当に献身的に熱意を持って取り組んでくれました。作品を納得できるものにするために衝突し、ギスギスした瞬間もありました。それも人間が剥き出しにされるこの戯曲には必要なことだったと思います。
集大成というのはそうした意味です。ここまでやってきたこと、やれること、全部やり尽くした。そう言える公演でした。
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素晴らしい宣伝美術に始まり、神々しささえ感じた舞台美術、エモーショナルでありながら物語の先をゆかない劇伴(音楽)、大恐慌時代の音源まで再現してくれた音響、何よりあのややこしい全120分を端正にまとめ仕上げてくれた照明。こちらも集大成でした。
劇団としては制作面・運営面でもっともっとできたことがあったと思います。これは今後の課題としてじっくり足元を見据えながら取り組みたいと思います。僕たちは先にゆきます。
なぜなら、それが────「次」だからです。
まあそれだけ全身全霊だったので、札幌劇場祭の賞レースにて何も受賞せずで終わったことは残念でした。残念です。座組のみんなにも申し訳なかった。でも仕方ありません。これも結果。難しいことなんです。
今年の大賞は昨年の劇団5454に続いて秋の大文化祭!参加団体、PANCETTAの『声』が受賞しました。めでたい!やったあ!と富良野のホテルで一人“声”を上げました。嬉しい!でも悔しい!2年連続で複雑な感情に身悶えしました。
劇団5454の『ねもはも』もとても充実した公演になりました。知人だけじゃなく、弦巻楽団演技講座の受講生達もそのレベルの高さに驚き、魅了されてました。自分は配信で東京公演を見ましたが、得体の知れないエネルギーが変質していく様が見事に可視化されていて、改めて春陽くんの演出力に、そして出演者の一体感に感嘆しました。
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PANCETTA『声』は舞台スタッフとしてずっと劇場におりましたが、準備中からストイックに、コツコツと世界が作られていく様は感動を通り越しため息が漏れました。すごく緻密なんだけど、その緻密さが有機的にその瞬間、その瞬間偶然のように表現を生み出していく。そんな時間。
こちらが用意した限られた、タイトなスケジュールの中、辛抱強く舞台のクオリティを上げる作業を一宮くんはじめ皆さん取り組んでいました。
そうだよね。みんな命懸けなんだ。魂込めているんだ。
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『声』を観た『ファーンズワース・インヴェンション』のメンバーも感嘆していました。あれはすごいねえ、と。
札幌劇場祭の結果が出た後でも、悔しい気持ちとあれは面白かったものなあという気持ちにみんな引き裂かれている(?)ようでした。自分と同じように。
昨年大賞受賞の劇団5454、今年大賞だったPANCETTA、ですが正直招聘主の自分としてはもっともっと沢山の方に観て頂きたかった。劇団としての力不足を強く感じます。皆さんあんな素晴らしい舞台を引っ提げてきてくれたのに。
特に若き演劇人にもっと訴求したかった。正直、「大賞受賞」という文言も経歴も、そんなに訴求材料になっているようではありませんでした。PANCETTAなんて各地での評判を参考にすれば絶対観たほうがプラスになると思うだろうに!(え?思わない?)そもそもプラスという発想がある筈と思う自分が誤っているのかもしれません。
もちろん、何を目指してとか何がしたくて演劇に取り組むのか、それによってアンテナを広げる方向も変わるでしょう。なので訴求できないのはあくまでこちらの問題です。
だからこそ、知人は「難しくないですか?」と言ったのです。おそらく。
「秋の大文化祭!」は2025年も開催します。来年はどんな素敵な表現者を札幌の演劇を愛する皆さんにお届けしようか、実はまだ検討中です。弦巻楽団の演目は決まっています。こちらは情報公開をお待ちください。
先日忘年会の折、『ファーンズワース・インヴェンション』の出演者の一人に冗談混じりにこう言われました。
「どうして毎年毎年そんな大賞取りそうな団体呼ぶのさ!呼ばないでよ!」
自分も冗談半分に答えました。なので半分は本音です。
「だってライバルが強くないと、こっちも燃えないじゃん。」
来年こそ大賞奪還だ!!!
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