見出し画像

「soar」と、わたしと。

昨日、わたしは憂鬱な気分で渋谷の夜の街を歩いていた。
通院からのその足で、渋谷に向かったわけだか、夜の繁華街を一人で歩くというのはそれだけで胸がやりきれなさでむせそうになるというに、その日は主治医の言葉が珍しくきつく重く、道玄坂まで歩いて、華やかなイルミネーションを見ても気は晴れなかった。

「そんなに焦ったって駄目でしょ、ギャラリーだってなんとか動かせてるんだし、ギャラリー始めてから精神が安定してるだけでもまず吉としなきゃ」。
そう言われたのは「稼ぎが出なくて夫に申し訳ない」とこぼしたときだった。というのも、ここのところ将来を考えるとこの貯蓄では全くやってけないという家計に直面し、これも自分がちゃんと働けないためと自分を責める日々だったのである。渋谷に来たのも仕事を探すためだ。

重い気分のまま、わたしが足を伸ばしたのは、前から興味があったNPO法人soarの活動説明会だった。soarとは「障害者・マイノリティ等の社会的弱者に光を当てた記事を多く載せているウェブサイト」とそのときわたしは認識しており、そこでライターを募集してることを知ったので、どうせなら少しでも、ハンドメイド以外でも、自分の興味ある分野でライティングの仕事をし、少しでも家計の足しにしたいとそこを訪れたのである。

といっても活動内容の定期的な説明会であり、求職説明会ではないから、そんなにすんなり「食い扶持」が見つかるわけでもないのはわかってた。とりあえずやりたいことを知るための場を知るために来たのだったが、それが幸いするとは、会場に足を踏み入れたときには、まだ、気づかなかった。


まず幸いだったのは、会場の柔らかな雰囲気である。来ている人と話せば、みな、わたしのような目的の人ばかりではない。ようはここで働いてやる、というギラギラした雰囲気ではない。ただ興味があるからという方も多く、それが会場を朗らかな空気にしていた。まずわたしはそれにほっとした。ほどなくこれまたもの柔らかなスタッフの方の進行で、会が始まった。

代表の工藤瑞穂さんの説明から始まると思ったら、違った。自己紹介であった。それも全体に、ではなく、席の近い人と小グループにわかれての自己紹介タイムだった。これがよかった。本当に多様な人が来ていると分かったし、ぐっとリラクッスすることができた。で、そのあと工藤さんのsoarの「そもそも話」。どうしてこのNPO法人を作ったか。と、活動の説明。そしてそのあとはまた、小グループにまた分かれ、soarの活動をどう感じたかのワークと続いた。


…本当は工藤さんの話をはじめとした内容も詳しく書きたいところだが、それは割愛して、会に参加した個人的な感想を、以下は綴らせてもらおう。そのほうがsoarの意義が通じると思うから。

とにもかくにも幸いだったのは、工藤さんの話を聞いた上で、その場の「なんとなく」で終わってしまいそうな感想を、言葉にして他人と「共有」することではっきりとお互いに示して再認識したことであった。これは得がたい体験だった。ただ話を聞いて終わりかと思っていたので。他者と意見を交わしている内に、自分の大切にしたい「多様性」という価値観、障害当事者としての視点、仕事を求めてきたライターとしての意識がはっきりと心に浮かぶ。いつのまにか憂鬱な気分は晴れていた。

一番感銘を受けたのはsoarのコンセプト「人の可能性が広がる瞬間を捉えるウェブメディア」ということば。わたしは、可能性ということばが、好きというか、とても深いものと捉えている。人は可能性の生き物だと捉えている。なぜ人を殺してはいけないかと問われたら、「人間にはあまたの可能性があるから、それがどんなものであれ他者が奪うことは許されない」と即座に答える。だからそこの素地が自分と共通している活動と出逢えたのは、とてもうれしいことだったのだ。だから自分もギャラリーやらライターやら、奮闘して生きているわけだし。

そして、その共感を見知らぬもの同士で交わせたのは、それこそその場から「希望が生まれそうな可能性」を感じられたもんだから、それはリアルにsoarを体感したと言っても言い過ぎではないと思う。とても、ささやかな可能性の芽だけど。とりあえず、の体験だけれど。
そうあの場は「リアルsoar」だった。

だから、帰り際、スタッフさんに名刺を渡して「ライターとして関わりたい」と自然に肩の力を抜いて口にしている自分がいた。

もちろん、寄付だけで活動している団体で高い報酬が得られるわけではないだろう。本当ならもっと確実に稼げそうなライティングをやるのが筋ともわかってる。ギャラリーとの両立も考えねばならない。でも、たとえ少しの報酬でも「ここで意味のある仕事をしたい」と強く思ったのだ。さて、どうなることであろう。とりあえずは、連絡待ちである。でも帰路のわたしの心は軽くなっていた。なにか重しがとれたかのように。

------------------------------------------------------------------------------------

ここからは余談である。
そうして意気揚々と帰宅したわたしを迎えたのは夫の浮かない顔だった。
どうしたかと問えば、会社で障害者の方が仕事上で大ミスを起こして社内パニックだったのことだ。話を聞くと、どう考えその方の仕事内容は、その人に合ってない。「それさ…もっと本人の適性を考えて可能性を引き出すべきじゃない?」「でもさ、もう本人、会社長いし、高齢だし、うちの会社の環境でしか生きられないと思うんだ。会社には本人がやれるの、あの仕事しかないし。路頭に迷わすわけにはいかないよ」。

その話が揚々としていたわたしの頭を冷ました。可能性、と軽々しく口にしたが、現実にはもうその開拓も難しく、現状に甘んじながら生きていかざるを得ない人もいる。希望を提示されてもどうしようもなく、また、高齢でネットでの情報にコミットしようともしない人もいる。
そういう人をどう助けられるだろう、soarなら。

現実は厳しい。理想なら誰でも語れる。

でもそういう困難に頭でっかちにならず、立ち向かってるのが、まさにsoarなのだ。そのやり方はすべての困難を持つ人を救えるわけではないだろう。だけど、あのワークで感じた「可能性のやりとり」。そのsoarの力を信じたい。そして「可能性」のリンクがいつか、そういった方や周囲の方に「希望」「そのひとのより良い生の選択」と手助けとして届くように願うばかりだ。いや、自分がそのリンクの一環となれるように、生きていきたいのだ。


この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?気軽にクリエイターを支援できます。

note.user.nickname || note.user.urlname

いろいろがんばって日々の濁流の中生きてます。その流れの只中で、ときに手を伸ばし摑まり、一息つける川辺の石にあなたがなってくれたら、これ以上嬉しいことはございません。

Thank you.Be alive! ♡
11
ハンドメイド変態、高じてハンドメイドライター、更に高じギャラリー主。精神障害者・モー娘。ヲタ・ぬこ絵描き。徒然の濁流の中暮らす。『ハンドメイド日和』コラム連載終了有難うございました。Twitter・Instagramで#今日はこんなハンドメイドアクセサリー着けてます 毎日更新中。
コメント (2)
ツルカワさん、昨日は活動説明会に参加してくださりありがとうございました。

また、このような形で活動説明会で感じてくださったことを率直な言葉で丁寧に綴っていただき、本当に嬉しく思っています。soarの公式SNSでも共有させていただきます!心よりお礼申し上げます。

今回の縁をきっかけに、ぜひ様々な形でsoarに関わってくださると嬉しいです。今後とも、どうぞよろしくお願いします✨
soarのみなさま、こちらこそ昨日は暖かい時間をありがとうございました。
思った通りのことを正直に綴った文章ですので、そのように喜んでいただいて非常に光栄です。シェアも有難うございます!
わたしも様々な形で関わらせていただきたいと望んでおりますので、こちらこそ引き続きよろしくお願いします!
コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。