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【大人の教養建築】曲線美が人を惹きこむ 大倉山集合住宅

1.はじめに

この大人の教養建築シリーズでは、建築学生ならではの視点を踏まえて、建築がなぜ、そしてどう美しいのかを考察しています。

この視点が共有できれば、皆さんの日常をより華やかなものにできるのではないかと考えています。

詳しい経緯や背景は第1回の記事に書いてあります。

2.概要

設計者:妹島和世

この方は、非常に有名な女性建築家です。
プリツカー賞や日本建築学会賞、吉岡賞など権威ある賞を総なめにしています。伊藤豊雄建築設計事務所出身。
西沢立衛さんと共同でSANNAを運営していることでも知られます。
代表作としてロレックスラーニングセンタ―や隅田北斎美術館が有名です。

こちらの書籍では妹島さんの建築の設計プロセスが詳しく載っています。
天才的な造形の裏にある根源的な思考プロセスが分かりやすく解説されています。

場所:神奈川県横浜市港北区大倉山3丁目5-11 

もとは集合住宅として建てられましたが、現在はカフェやオフィスとして使われています。

3.魅力

妹島和世さんの設計手法として特徴的なのは、
膨大な数のスタディを行い、案を決めていくことだと思います。

この設計のミソは
「みんなの中庭」があることです。

各住戸は中庭に対してひらけており、
中庭を軸にしてヴォリュームが上下にずれています。

こうすることで空間が混じりあい、
内外が混ざるような構成になっています。

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視線の先には常に曲線が存在し、
空間が無限に広がっているのではないかという錯覚を覚えました。

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様々な向きに設けられた開口は開放感を感じさせます。

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また、が多く取り入れられており、
中庭には植栽も多く取り入れられていました。

周囲には線路や住宅街が存在する中でこの敷地だけはまるで別世界のよう。

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住宅の一階部分にはカフェがあり、ここで一服。
2階にはトイレがあり、カフェでありながら空間全体を楽しむことができました。

ここのコーヒー、プリンは絶品です。

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4.「機能」と「デザイン」の共存について

ここまで読んでくれた方には、
この建築の魅力や美しさを感じていただけたかと思います。

しかしながら、居住性すなわち「機能」には議論の余地があるかと思います。

この施設の方の話では、ほとんどの方が契約更新をせずに退去されるそうです。

また、冒頭にもあったように現在は住宅というよりカフェやオフィス、店舗などに使われており、
住宅としては使われていない実情があるようです。

私自身の見解としては「別にいいじゃん」です。

安藤忠雄さんの「住吉の長屋」のように、
機能を犠牲にしてでも実現したデザインが評価されることはあるわけで、
このような前衛的な試みがあるからこそ、建築は廃れないし楽しいのではないでしょうか。

5.まとめ

曲線が惹きこむ建築は一見に値します。
また「デザイン」と「機能」の両立についても考える機会となりましたし、通例を恐れず設計するいいきっかけになりました。

ぜひ訪れてみてください。

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