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ある雨の日の歩荷①

お盆も終盤のある日、山麓の小屋へと歩荷と登山道整備に行ってきました。

背負子と呼ばれる器具に今回はダンボール一箱10kg分くらいの荷物を詰め、
下で1泊するための着替え等と
登山道整備グッズをザックに入れて合わせて、高さは80cmくらい、重さは20kgほどでしょうか。

一般的な登山者と比較すると重いほうですが歩荷と言うには、やや物足りないくらい。


行きは昼頃に出発し、雨に打たれながら登山道に雨水が流れないようにする作業を粛々と。
プライベートの登山で強い雨に打たれるのはあまり好きではありませんが、仕事となると別で
必死に土を掘っていると雨の強さも気になりません。

登山道を小川のように流れる雨水も、
不思議なもので少しだけ別の流路を設けるだけで、いとも簡単に消えてしまいます。

そういった登山道上に溜まっていた雨水がうまく抜けるとスッキリします。

なぜそのような作業をするかというと、
登山道を水が流れるとせっかく整備した道も流されてしまったり、地盤が緩んで崩れやすくなってしまうため。
必死に岩を運んで作った段差もすぐに壊れてしまったらたまりません。

↓登山道整備の話




そんな作業をしながら下っていく途中、
「登山道にクマがいた」と話す登山者に出会いました。

最近はクマの出没情報が例年よりも多いので、あまり驚くことでも無いのですが、
「クマがいる」という恐怖感より、「今日こそは会えるだろうか?」と、
日々クマの生活圏で暮らしているが故の思考になります。

ちなみに今年は山小屋に入る前に登った燕岳の第一ベンチ付近でお会いしましたが、残念ながら今回はお会いできませんでした。

以前書いたクマの話↓


そんなこんなで本来であれば4時間足らずで下れる道のりを倍くらいの時間をかけて、
山麓の小屋についたのは空も暗くなった頃。

基本的な登山のルールであれば「16時までに目的地に着かなければいけない!」と言われますが、

この本来歩いていてはいけない時間に歩くのが私はけっこう気に入っていて。

誰もいない山中で「自分たちだけがこの景色を享受している」という感覚がたまりません。

疲れて降りてきて、最後の林道を歩く時に木々の合間から見える夜空が、
山小屋生活で見る景色の中でも特に好きな景色の1つです。
(普通に山小屋泊まりの方は小屋のスタッフが心配したり、実際に危険が無いわけではないのでマネしないでくださいね)


無事に山麓の小屋に到着後は、
普段食べることができない魚等を使った夕食をいただき、
これまた1ヶ月ほどお預けだった湯船に浸かります。

標高を1300mほど落とすと木々が生い茂っていて、「人間の住む所に降りてきた」という感覚になって少し安心します。

日々、ハイマツを中心に背丈の低い高山植物しかない2600m付近で過ごしていますが、
山麓に来ると本来人が暮らすべきではない特別な場所で暮らしているんだなぁと実感します。

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