普通のレズビアンなんて存在しない
私はレズビアンの社交場にときどきお邪魔しています。
そこでは「この界隈は普通の人が少ない」という嘆きを聞くことがよくあります。
確かにレズビアンの世界は濃いです。
本当に色んな方がおられます。
しかし「普通」ってなんでしょうか。
何をどうもって「普通のレズビアン」に認定されるのでしょうか。
私はレズビアンの人たちに聞いてみました。
返ってきたそれぞれの答えは…
・ 定職に就いている
・ 激体型じゃない
・ メンタル病んでない
・ 依存・束縛癖がない
・ 喫煙していない
・ 借金していない
・ 夜職していない
・ 会話のテンポが噛み合う
等々でした。
レズビアン界隈の人たちが「普通の人が少ない」とよく口にする背景について私は一つの仮説があります。
前提として、レズビアンの世界には、恋愛対象が同性であるという共通点だけで多種多様な人間が集まります。
私はレズビアンの世界を「公立中学みたいだな」と思います。
公立中学って、たまたま同じ年に同じ地域に生まれたってだけで、本当に色んな人間が集まっていますよね。
しかし私たちは、高校、大学、就職と進むにつれて似たような価値観の人間同士で固まっていきます。
交友関係も、自分と波長の合う人間が残っていきます。
例えば安定志向の人は、真面目に勉強する学生時代を送り、安定した大企業や資格職に就くことになるので、普段の生活で顔を合わせるのは堅実な価値観を持った人間ばかりになります。
私たちは大人になればなるほど、自分と合う価値観が集まっていき、その状態に慣れていき、それぞれの考える『普通』が確固としたものになっていくように思います。
だからこそ、色んな世界で生きている人間がごちゃまぜになったレズビアンの世界に来たとき、「あれ、私の普通とは違う…」と思うことが多いのではないでしょうか。あくまで仮説ですが。
私個人としては、
「そもそも普通のレズビアンなんて存在しない」
と考えています。
私たちはみんな違ってみんなどこかヘンです。
私からすれば、自分ことは普通だと思って「この人は普通の人、あの人は普通じゃない」ラインを引いているその姿こそがヘンに見えます。
私たちは各々の「普通」の基準によってあちら側、こちら側と、そう簡単に区切られる存在でしょうか。
私はそうは思いません。
私は自分自身が、発達障害や夜職など複数のマイノリティ属性を抱え、様々な階層や社会集団を転々としてきた経験から、どんな人間も属性も価値観も、分断された存在ではなく地続きに存在していると捉えるようになりました。
私たちは生まれたときはまっさらな赤ん坊です。
そこから各々の家庭環境や社会集団の影響を受け、個々の経験を経てパーソナリティーが作られていきます。
「普通」というのは、この時代にたまたま多くの人が支持しているだけの価値観に過ぎません。
自分を普通だと思っている人だって、たまたま今の時代に多数が支持している価値観に沿った環境下で生きてきただけに過ぎません。
真に「普通」といえるものなんて存在しないと私は思うのです。
おしまい。