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ツナ好きニート、社会の歯車・それぞれのスピード

人には人の成長スピードがある。多くの人がさらりとできることを、時間をかけてようやくできるようになる者もいる。

言葉ではそれを理解していた。
それが「個性」というもので、良い悪いなんかではないと。

けれど実際には、社会にはそれぞれの場所に適していると思しき歯車の回るスピードがあり、それについていけないものや遅れをとるものは「できない」「使えない」「役に立たない」の烙印を容赦なく押されてしまう。

預かりボランティアの保護犬カン君が、一人前……いや半人前……いや半“犬”前に散歩ができるようになったのは、彼を預かって4か月目に入ろうという頃だった。

「人間だったら君もドロップアウトコースだな」

お散歩“上手”とはお世辞にも言えない。往路はやはりびくびくして3歩進んで2歩下がる、365歩のマーチ方式。

しかしなぜか復路はやけに軽やか。スタスタスタという効果音をつけたくなるくらいだ。ただし人の姿はやっぱり怖いようで立ち止まって、その人の出方をジッと観察している。

「はいコレ、プレゼント。お散歩がうまくなってきたからね」

カン君からすればなんら嬉しくもないだろう、新しいレザーのリードと日本綿100%の帆布のハーネス。

「君のその毛の色にきっと似合うから、近所をぐるりと1周だけ回ってみようよ」

動かないこと巨大岩のごとし
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