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新しい時代の共同体と創造的なつながり「クリエイティブコモンズ」とは? 廣水乃生さんワークショップレポート

2021年6月からスタートした「TSUNAGU FASHION LABORATORY」。「個人の心の在り方からファッションの世界を再生する」をテーマに、毎月多彩なナビゲーターによるワークショップを行っています。

今回は、現サステナビリティ・コンサルタント、元パタゴニア日本支社の外部戦略である廣水氏より新しい時代の共同体として注目されているコモンズをテーマにコミュニティの在り方を学びました。

強いリーダーシップで固まる組織ではなく、それぞれが意思を持ち、それぞれを尊重する上で成り立つ創造的なつながりから生まれるコミュニティを作るために、個人はどのような在り方である必要があるか、また、コミュニティはどのように発展していくのかをワークショップで学びました!


廣水乃生

廣水乃生さん
ビジネス・コミュニティ(国・自治体・地域)、教育の分野に焦点を当てたSustainability (持続可能性)を実現する活動を推進。ビジネス分野では、 国連の環境に関する最高賞である地球賞を2019年に受賞したアパレルメーカー『Patagonia』の日本支社 戦略策定に、唯一の外部ファシリテーターとして10年間従事。現在は、その経験を活かしてSustainability Transformationを推進。業界問わず想いで繋がる企業に対する導入コンサルティング、研修・セミナー講師として活動中。

「持続不可能」の打開策、Sustainability Transformationとは

近年、気候変動問題などの影響で私たちの生活の基盤である社会インフラが脅かされています。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)によると、気温2度と1.5度のわずか0.5度の違いでさえ、海面上昇や酸性化、干ばつや洪水を引き起こす極端な気象変化を増加させると警鐘を鳴らしているそうです。

また、気温上昇で表面化するリスクとして、極端な気象現象によるインフラ機能停止、気温上昇や干ばつによる食料不足や食料安全保障の問題、水資源不足と農業生産減少、生物多様性への影響など、課題は多岐に渡っています。(※1) 

わたしたちの暮らし・ビジネス・カルチャーの持続可能性(Sustainability)を脅かすものが次々と現れてきている中、廣水さんが提唱しているのが、「持続可能性を高める変容」を意味する「Sustainability Transformation(サステナビリティ・トランスフォーメーション)」です。

グローバル社会において、世界中の様々な影響がローカルな領域まで及んでくるため、もはや独立的に影響を受けない存在はない。そうした意味で、『システムに埋め込まれたわたしたち』は、システムの変化を無視して自分たちの持続可能性を保持することはできないと廣水さんはいいます。

地球の限界を可視化する「プラネタリーバウンダリー」

こうした中で、近年国内で注目されているのが「プラネタリーバウンダリー(地球の限界)」です。プラネタリーバウンダリーは、ストックホルム・レジリエンス・センターのヨハン・ロックストローム博士(現ポツダム気候影響研究所所長)たちによって開発された概念で、「気候変動」や「成層圏オゾンの破壊」、「海洋酸性化」などそれぞれの項目におけるリスクの状態を示しています。この「プラネタリーバウンダリー」は、環境省や国立環境研究所でも資料の中に使用されるようになってきているそうです。

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こうした地球の限界を超えると、気温上昇や洪水、水不足、食糧不足
、さらには大型台風や熱波など、様々な問題が生じてくると予想されています。そうした中でポイントとなるのが、どのように持続可能な社会へと変容していくか、すなわち「サステナビリティ・トランスフォーメーション」をいかに起こしていくかということなのです。

自分たちの手で生活インフラを取り戻す。「コモンズ」のヒント

そうした危機的な状況を打開するためサステナビリティ・トランスフォーメーションを進めていく中で、キーワードとなるのが「コモンズ」だと廣水さんは話します。コモンズとは、資本主義経済に対して過剰に依存せず、「コモンズ」という共助コミュニティの中で生活に必要なインフラを自分たちで作り、管理する形だといいます。

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もともと地域コミュニティの中に生活インフラが根付いていた時代、水路を作ったり畑作業をみんなでやったりと、小さいコミュニティのレベルでインフラが整備されていました。

しかし、今ではビジネスが生活インフラの領域に入っていき、拡大されたことで、生活インフラ自体が商品化され、企業が担うものになっていきました。地域コミュニティの人間関係に関しても、中央集権型のトップダウンなものから逃れようと、地域から人がいなくなっていき、お金を媒介に企業に任せる形に。すなわち、時間・自由(意思)を企業に捧げ、企業からお金もらって働くシステムになっていったと廣水さんは話します。

この状態だと、「お金は自分で稼ぐべき」といった人々の孤独化や孤立したループを招いてしまいます。だからこそ、この時代において自分たちの手で生活インフラを取り戻していくのが大切だといいます。

自律分散型のコミュニティへ

かつてのコミュニティは中央集権型であり、「義務と責任」がつきまとうものでしたが、廣水さんたちは自治・自律をキーワードとした自律分散型のコミュニティを目指していると話します。自分たちで考えて物事を決め、動きながら分かち合ったり、自分は何を差し出せるかをともに考えていくことが大切だといいます。実際に廣水さんも「友部コモンズ」をつくり、家を一緒にリノベーションしたり、間伐のワークショップや農業を実践されているそう。

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自分に正直に他者へ開示していきながら会社を作っている廣水さん。自分の外にすでにある何らかの「正解」に合わせざるを得ないこの社会の中では、自ずと失敗を怖れるようになってしまいます。

しかし廣水さんは、そうした「適用」ではなく自分の内側から出てくる感覚に従って個性を尊重しながら、未知なるものに挑戦することを喜び合い、支え合うことが大切だといいます。

まさに、「コモンズ」という共同体のあり方こそ、個々人同士の真の結びつきに繋がりあっていくのではないでしょうか。

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今回廣水さんのお話を聞いて、プラネタリーバウンダリーが示すように環境問題などの深刻さを感じると同時に、コモンズという人々とのポジティブな繋がりへの希望も見えたような気がします。

特に印象に残ったのは、「生活インフラを私たちの手に戻していく」という言葉です。廣水さんが説明されていたように、歴史を振り返ってみると私たち人間は、企業などの他者に対して金銭を対価に生活インフラを享受してきました。しかし、こうした細分化された社会システムは、自ずと生活インフラと私たちの生活との繋がりを実感しにくくなってしまいます。まさにコモンズはそうした繋がりを実感するだけでなく、強固にすることができるのではないでしょうか。

興味がある方は、ぜひ下記の廣水さんのコモンズの取り組みをチェックしてみてくださいね!

☆廣水さんたちの取り組みは、ADS株式会社のnote「コモンズのつくり方(ADS株式会社)」で発信されています!
「空き家と畑から始める共助コミュニティ」の記事はこちらから!


<出典・参考>(※1)WWF「地球温暖化が進むとどうなる?その影響は?
※この記事で使用したスライドの出所:廣水乃生さんの資料

<関連URL>
廣水乃生さん https://www.facebook.com/norio.hiromizu/
廣水さんのnote https://note.com/noriohiromizu/
ADS株式会社 https://a-d-s.solutions/
ADS YouTube チャンネル「SX BATONS」
https://www.youtube.com/channel/UCLNA3-uoDA8Qg71uvrB2uaw

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