初雪とともに

雪が降る時、静まり返る街が好きだ。
肌を刺すような寒さが好きだ。
白く濃い吐息が、まつ毛に引っかかる結晶が好きだ。

なぜだかはわからないけど、初雪が降ると
記憶の弔いが始まる。
亡くした人や動物たち、失くしたものたちの記憶を
引っ張り出しては悼み、弔う。
初雪が降る間だけの、理由のない懐古。

多分、悲しみって寒いから。
心の底から冷えて震えた記憶が、身体の冷えに引っ張られて蘇るんだろう。
そして思い出した悲しみから、暖かかった思い出も一緒に出てくる。芋づる式に。

雪かきする父の横でカマクラを作ったこととか
おばあちゃんの作る鍋とか
正月の集まりの間中構ってくれた叔母さんとか
私の腕の中でしか眠らないミルク
落ち込んだ時にのしかかってきたいっちゃん
こたつに足を入れたらキレてくるレイくん
寒い朝に一緒に散歩に行ったリリー
雪が降るとよりハイテンションだったクン
静かな街を見ながら思い出しては、ちょっと悲しくなる
忘れてしまっては生きていけないものたち。

ちなみに2度目の雪からはこの現象は起きない。
おセンチに浸るより、雪かきという現実の方が目に写りやすくなるし
雪が降る度にこのおセンチやってたら冬しんどいて。

初雪とともに蘇って、またしまった、アルバムみたいなものたち
次の初雪でまた会いましょう

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