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【後編】東京から島根へ。耕作放棄地の再生に挑むスパイスの作り手・山田健太郎さん

ふだんの生活の中では、あまり意識することはないけれど、物が生み出され、私たちの家庭に届くまでには、それを生み出す人と想いがあります。「つむぎの時間」は、実際の作り手をゲストに迎え、暮らしや想い、ものづくりの生態系についてゆるっとおしゃべりするラジオです。

第一回のゲストは、スパイスの作り手・山田健太郎さん。
島根県でスパイス栽培とスパイスを使った商品開発を通して、耕作放棄地の再活用をされています。

後編では、兼業農家としての健太郎さんの暮らしぶり、生産者の立場になって感じた安すぎる野菜への危機感、そして健太郎さんが100年先へ残したいものについてお伺いしました。

▶ 前編はこちら

兼業農家・山田健太郎さんの一日

—— 健太郎さんの1日の暮らしについて教えてください。

僕は1日がっつり農業をしているという感じではなく、他にもいろんな仕事をしています。世間のイメージでは農家さんってすごい早起きだけど、僕は朝苦手だから、朝7時とか7時半くらいに起きます(笑)

最近では、午前中は農作業をしよう、午後は〇〇をしようと、1日の働き方を決めて取り掛かることが多いですね。例えば、午前中起きたら、今日は草刈り!1時間しかないから、まずはこの畔の一本だけを刈ろうとか。スパイスだけじゃなくて、サツマイモやトマトなど他の野菜も育てているので、それらの草抜きをここまではやろうとか。

健太郎さん農作業風景

帰ってきて、畑仕事すると汗をかくのでシャワーを浴びて、昼飯を取って、午後からはパソコン仕事をします。ちょっとホームページの草案を作ったり、パッケージデザインのことを相談したり。

でも、天気にもすごく左右されるんですよね。

—— 天気、そうですよね...!

たまに、草が伸びたりしてると「あんた草刈らんといけんわね」とかって、地域のおじいちゃんからお声がかかるんですよ。それで「ヤベッ、刈ります!!」ってなるんだけど、「あれ、でも明日雨だぞ?じゃあ今日は日が暮れるまで草刈り頑張るか...!」みたいな(笑)

—— 面白い、地域全体で育ててる感じですね、他の人の畑もちゃんとみて、気にしてくれてる...!

それがいいところでもあり、窮屈な部分でもあるんやけど(笑)
当初は、地域の方も僕が何してるか知らなかった人も多かったと思うんですが、農業をやっているということを知ってもらってからは、育て方を教えてくれたりとか、本当にお世話になっています。

—— ちなみに、食事はどんな感じなんですか?

去年は冬に畑作業ができなくて、今ストックの野菜がないんですが、地域のじいちゃんが作ってる作物が普通に近所のスーパーで売られたりしてるんです。

産直市のようなところで、野菜に作った人の名前が書いてあって。そういうところで、一緒に有機農法塾をやってる人の名前を見つけて買ったりしています。

—— 作った人の顔が見えるっていうのはなかなか東京ではないですよね。

そうですね、逆にこうやって顔が見える分「農薬結構使ってます」っていう話もすごく早く出回るから、自分も常に誠実でありたいって思いますね。

生産者になって分かった、おいしい野菜が安いワケ

こっちではめちゃくちゃ野菜が安いんです。それは、実は、年金暮らしの農家さんに支えられているから。

現在島根で育てている野菜写真③

地域のベテラン農家さんたちは年金という生活の足しがある中で野菜を育ててる人も多いんです。そういう方々は、割と安価な価格設定をしても生きていけちゃうんですよね。しかも長年の経験や知識もある。

一方、若者の農家は経験も未熟だし、年金だってない中で、農業だけで生計を立てないといけない。ベテラン農家さんの安価で美味しい野菜と勝負させられてしまうと、やっぱり厳しいという現状があります。

農業全体の未来を考えたときに、若者の新規参入者のことや、農業だけでちゃんと生計を立てていけること意識した上での価格設定をしないといけないこういうことは、実は外部からきた自分たちだから気づけることかもしれない。

そういう意味で、僕たちが地域に働きかけるのは大事なことだなと思っています。

—— そういう現状があるということを知るだけでも選ぶ基準が違ってきますね。ストーリーを聞くと意識も変わって、応援の気持ちも込めた購入もありうるし、消費の仕方も変わっていかないといけないですよね。

だからこそ、僕らも応援されるものを作っていきたいなと思っています。

健太郎さんが考える100年先へ残したいもの

地域の田園風景③

—— tsumugiでは「100年へ暮らしをつむぐ」をテーマにしているんですが、健太郎さんは100年先に何を残したいですか?

うーん、純粋に美味しい食べ物かな。

スペインのサンティアゴ・デ・コンポステーラっていうキリスト教の巡礼地があるんだけど、僕そこを2回歩いたことがあるんだよね。9年前と、2年前。フランスの国境から、800キロくらいかな、30日間くらい歩くんです。

そのときに歩きながらすごく色々考えていて、なぜか仏教の教えがすっと入ってきたんだよね。「色即是空」なんでも形があるけど、実態があるわけじゃなくて、実際は「空」なんだよっていう教え。

例えば、車っていろんな部品が集まって作られるけど、その車を分解してバラバラにしたら、全部の部品が揃ってたとしても、それを車とは呼ばないですよね。実態としては空であると。

それをひたすら歩いているときに、「あ、人間もそうだな」って思った時があったんです。

今、山田 健太郎という人間が、あと何年生きるかわかんないけど、ちょうど僕が僕という実態で生かせてもらっているけど、それがバラッと解体されて、また地球の一部に戻っていく。きっと僕の前も、きっと何か違う物質だったし、それが僕になって、また別のところにいく —— とすると、今の自分は完全なつなぎ役、大切なのはいかに次に繋いでいくかだなあ、とすごく思ったんです。

そう考えるとあんまり気張らなくてもいい。自分が生きている間にちょっとでも「あ、これはいまいちだな」って思うものがあったら改善できたらいいし、「いいな」と思うものがあったらいいものをそのまま次に繋いでいく、そんな風に生きたいってすごく思ったんです。

それがベースにあって、食べ物っていうところに繋がるんですけど。

例えば、その育て方ってちょっとどうなの?とか、その食べ物、他人に食べさすのってどうなの?って思うことがあって...。もちろん、価格の面とか、それを食べないといけないって人たちがいることも重々承知してるし、全否定するわけじゃない。

けど、自分の価値観としては、やっぱりそこは真っ当に行こうぜとか、そこは地球の環境のことを考えて、手間隙かけてちゃんと作ろうよって思う。

そんな思いが出雲SPICE LABや宮内舎に繋がっています。それもまたどんどん形が変わって潰れたりすることもあるかもしれないけど、地球環境から恵みをいただいて、ちゃんとまた還っていくっていう考え方や、美味しいと思える食べ物を100年後にも、自分の子、孫の世代にも紡いでいけたらいいなって思います。

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100年先へ美味しい食べ物を残したい —— 最初から最後まで、素直な思いで語ってくれる健太郎さんにとても共感しました。私たちtsumugiも100年先も美味しい食卓がここにあり続けられるように、「食卓から、Well-Beingを」をテーマに体験作りや、発信を続けていきます。

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クラフトコーライメージ①

思いの込もった健太郎さんのプロダクトは、オンラインショップからご覧いただけます。現在、クラフトコーラ、こどもコーラ、クラフトエナジー、ジンジャーチャイの4種類を販売中だそう!炭酸やミルクなど、お好みの飲料で割って飲むことができます。(ちなみに私はジンジャーチャイがお気に入り!)

▼ 出雲SPICE LAB. オンラインショップ
https://spicelab.thebase.in

▼ 出雲SPICE LAB. ホームページ
https://www.izumospicelab.com
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食卓から善い暮らしを。 Well-being starts from the table. TSUMUGIは自分にも地球にも「善い暮らし」を探求し、 未来へつむぐ、食卓を軸とした「生活共同体」です。