ためらわない、ためらう

雨の日の夜は苦手です。どこにも行けないような気がして。お水が上手く飲めなくなる感覚が嫌いで。

生まれつきの皮膚病、今夏はとても酷いです。
痒みや痛みはいいのです。いっそ。そういったことはどうでもよくって。
掻き傷や炎症のあとが嫌で、嫌で。醜くって、醜くって。
人のことは何も思わないのに、自分のものは醜く思えて堪りません。
わたしのことを見ないでほしい。なるべくひとを不快にさせたくない。夏はそればかりです。

小学生の頃、同級生の男の子に「アトピーがなければクラスで一番可愛くって、一番好きな女子なのに」と言われたことがありました。
今思えば笑い話の類なのですが、その時は相当のショックを受けたのを覚えています。
「それだけが残念」ではなくって、「それがあるからどうしたって駄目なんだ」というように聞こえたんですね。

結局、母の田舎の温泉も、陽に当たるといけない軟膏薬も、無駄に種類のある飲み薬も、薬用の乳液も、全部駄目でした。
わたしは今でも、クラスで一番可愛い女の子になれず仕舞いです。
思い出の中の少年、わたしは君の一番には、いつまで経ってもなれないや。

それでもこの夏も、半袖のワンピースを選んで着るんだもの。わたしはワガママです。
人の多いところにはあまり行かないかもしれないけれど、やっぱり着たいものは、着たいんだもの…。
生脚はさすがに出せません。そこは壁があります。
でも、やってみたかったなあ、流行りの格好。ミニスカートに生脚。それに合わせて、白くて短い、可愛いリボンが付いた靴下。
棺桶に入る時は、白無垢か、ウエディングドレスか、流行りの格好がいいです。
いざ行かん、勇ましく。地獄の花嫁、またはハイカラお嬢ちゃん。閻魔様とイイ仲になってやるのです。

アイロンは凶器に見えます。アイロン台も、凶器に見えます。怖いです。日常は凶器で出来ている。
もう、7月です。
いつまで好きな人の好きなわたしでいられるだろう。そんなことばかりを考える夜です。

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