見出し画像

1手詰から始めるフェアリー超入門 安南編1

はじめに

普通の詰将棋では1手詰の本がいくつも出版されています。しかしながら、フェアリー詰将棋では1手詰のコンテンツはかなり少ないように思います。

普通の詰将棋を経験してからフェアリー詰将棋に触れる方が大多数なので、比較的簡単なフェアリールールであれば特段1手詰は必要ないのかもしれません。しかし、駒の性能が変化するルールなど、普通詰将棋から大きく変更されたフェアリールールの場合、ルールに慣れるのに1手詰は大いに役立つと思います。

本連載では、特定のフェアリールールの1手詰をたくさん掲載します。

初回は「安南」を扱います。安南は、性能変化系のルールで最もポピュラーなフェアリールールの一つです。

前提知識

協力詰(ばか詰)のルールを知っているものとします。ご存じない場合、例えば下記をご参照ください。

Web Fairy Paradise 第162号 pp.53-55(PDF)

ルール

【安南】味方の駒が縦に並ぶと、上の駒の利きは下の駒の利きになる。

例えば左下図のように23歩と打ったとします。23歩はその下の桂の利きになるので、王手になっています。例えば右下図のように22玉と指せば、これは王手を回避しています。歩頭に玉が出るのでちょっとドキッとするかもしれません。

※右上図で、オレンジ:23歩の利き、水色:24桂の利き

補足

3駒以上縦に並んだ場合

下図のように味方の駒が縦に並んだとします。

このとき、各駒の性能は
 34歩:桂
 35桂:飛
 36飛:飛
となります。

「35桂は飛車の性能になっているから、その桂の上にある歩も飛車の性能になる」と解釈するのは誤りです。下に位置する駒の元々の性能に変化します。

行きどころのない駒

一段目への歩打など、通常ルールで行きどころのない駒の着手は安南ルールでは禁じ手ではありません。性能を変化させれば動けるようになるからです。

打歩詰

安南ルールでも打歩詰は禁じ手です。通常の詰将棋とはちょっと感覚の異なる打歩詰のパターンがあります。

左下図で22歩と打てば、玉が詰んでしまいます。このように、打った歩が別の駒の性能になったとしても、歩を打つ着手で詰んでいるので打歩詰の禁手です。

また、歩を打つことで別の駒の利きを変えて詰む場合も打歩詰の禁じ手です。

二歩禁

安南ルールでも二歩は禁じ手です。歩が歩以外の駒の性能になりうるので、盤上の歩が動いて二歩になるパターンが発生します。

例えば、左上図で34歩は金の性能になっていますが、24歩とは指せません。23歩成は可能です。また、右上図で25歩は玉の性能になっていますが、36歩や35歩などは二歩のため指せません。

利き二歩有効/無効

左下図の通り、34歩と打ったとします。34歩は飛車の利きになるので王手が掛かっているように見えます。しかし、もし玉を取ったら二歩になってしまいます(右下図)。果たして34歩で玉を取ることはできるのでしょうか。

実は2通りのルール設定があります。34歩で玉を取ることができるとする立場を利き二歩有効、取れないとする立場を利き二歩無効といいます。

フェアリー詰将棋を扱うWebマガジン『Web Fairy Paradise』のWFP作品展では、基本的に利き二歩有効です。利き二歩無効を前提とする作品の場合、その旨の注釈を付けます。

本連載も基本的に利き二歩有効とします。つまり、上左図の34歩は王手です。

二歩禁についてまとめると、下記の通りです。

  • 二歩は禁止

  • 玉を取る手が二歩になる場合、

    • 玉を取ったことが優先される(利き二歩有効)

    • 二歩であることが優先される(利き二歩無効)

例題

上図は22王迄の1手詰です。後手玉は歩の性能になっているので、王で王手ができ、22王で詰んでいます。

1手詰 練習問題

以下はすべて 安南協力詰 1手 です。協力詰なので、すべての合駒が有効であることに注意してください。

解答は下記をご参照ください。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?