第3回 トーラス盤
前回の続きです。
第1回で$${(a,b)\textrm{-Leaper}}$$、第2回で複合八方桂$${P(n)\textrm{-Leaper}}$$を定義しました。これらは無限に大きい盤($${\mathbb{Z}\times\mathbb{Z} }$$)を前提にしていました。
最終的にはトーラス盤上の$${(a,b)\textrm{-Leaper}}$$と$${P(n)\textrm{-Leaper}}$$を考えます。今回はその準備としてトーラス盤を紹介します。
トーラス盤とは上下・左右が繋がっている盤です。スマブラのマリオブラザーズのステージで、右端から画面外に出ようとすると左端から出てくるのと同じです。
$${9\times 9}$$のトーラス盤に駒を置いて利きを確認しましょう。
38角を置きました。右上方向の利きを確認します。
通常の$${9\times9}$$の盤では16で利きが止まりますが、トーラス盤には行き止まりがなく、95から出てきます。
そのまま51まで進むことができ、今度は49から出てきます。
38角に戻ってきました。
今度は右下方向の利きを確認しましょう。29の次は11に進みます。
11の次は92から出てきます。
矢印の逆向きを辿ってみると、同じ軌道になることが分かると思います。よって、上図で矢印のあるマス(と38の地点)がトーラス盤での38角の利きになります。
ちなみに「トーラス」は数学の用語で、ドーナツの表面のような曲面のことをいいます。
将棋盤で実際にトーラスを作ってみましょう。
まず、よく伸び縮みする将棋盤を用意し、「0筋」の表側に「のり」を塗ります。水色の「のり」を塗りました。
そして、のりを塗った部分を9筋の裏側に貼り付けて筒を作ります。
0筋と9筋を貼り合わせました。38角の右上方向の利きを見ると、「26→16→95」となっていることが分かります。
次に筒の上と下を繋げます。「0段目」の表側にまた「のり」を塗り、筒をぐっと伸ばして9段目に貼り付けます。
トーラスができました。筋も段も「9=0」で貼り合わせているのが大事なポイントです。
「9=0」という考え方を使うと、トーラス上の駒の利きを次のように知ることができます。
$${9\times9}$$の盤の周りに8枚の盤を用意し、$${27\times27}$$の盤だと思って駒の利きをマークします。
次に、周りの8枚の盤を真ん中の盤にぴったり重ね合わせます。
そうすると、9枚の盤に記されたマークが1枚の盤に集まります。そのマークすべてが、トーラス盤での利きになります。
この方法は汎用性がありそうですが、大きな問題があります。
盤の周りに8枚の盤をくっつけて38角の利きを考えましたが、どんな駒に対しても8枚で足りるでしょうか。
例えば、$${(1,100)\textrm{-Leaper}}$$のように極端な例を考えれば、必ずしも8枚で足りるわけではないことが分かります。
この問題は、トーラス上の駒を数学の言葉で表現することで解決できます。
次回はトーラス上の駒を定義することから始めます。
次回はこちら。
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