「ある女王様からの誘い」の話
あれはまだ独身の頃……
ウチのお店に、ある一人の女性が現れた。
黒髪で少し焼けた、健康的な艶を纏った肌。
瞳も黒目がちで、意志の強そうな眼差し。
知的な雰囲気は話してもそのままに、可愛らしさも上乗せされ、割とすぐに仲良くなった。
ある日、彼女からこう告げられた。
「実は私、趣味と実益を兼ねて副業でSMの女王様をやってるんですけど……」
「へぇ、……えぇっ!?」
「お姉さん……向いてると思うんで、良ければ一緒に働きませんか?」
「……はぃ?」
彼女の表情は清々しく、一切の陰りもない。
更に彼女は続けた。
「人手不足なんですよ」
「ほぉ……」
「別に今すぐとかでなくて、いいんで」
おぉ……すごい……こんなの初めてじゃ。
うーん……
少し考えて、こう答えた。
「イヤ、あのさ。まずいくつか聞きたいんじゃけど……」
「はい」
「SMの女王様って、私の中にあるの、かなりコテコテのイメージなんじゃけど……」
「あー、所謂ボンテージ(ボンデージ?)着たりアイテム使用とかは、それぞれの好みですね……ウチのお店は基本、綺麗めの格好で、言葉で責める感じです」
「へぇ〜。客層は?医者とか弁護士とか、社会的地位高めの人とか多いイメージあるんじゃけど……」
「あぁ……割と多いです。普段『先生』って呼ばれて、怒られる事もほぼ無い生活送ってると、めちゃくちゃ叱られたい!って思う人も結構いるみたいで……子供みたいに、わんわん泣いたりするお客さんもいますよー」
「へぇ〜」
「……結構、興味あるんじゃないです?」
「あぁー、まぁ興味はある」
「本当ですか!」
「向いてるとも思う」
「じゃ、ゼヒ……」
「けど、私、今の生活気に入っててさ。自分のお店とお客さんが大事なんよー」
「はい」
「で、私、女王様するとさあ……きっとハマってしまうと思うんよな。そしたら、多分……紫色とか、赤とか黒とか、玉虫色に妖しく輝くオーラ的な物が出て……私がこの店の雰囲気にそぐわなくなるかなーと」
「あぁ……確かに……お店もお姉さんの作られてるアクセも、可愛い雰囲気ですもんね」
「うん。誘ってくれて、嬉しかったんじゃけどなー」
(岡山の)歌舞伎町の女王……爆誕ならず。
しかし、たまに思うのだ。
あの日、あの時、あの場所で
彼女の手を取っていたならば。
今このnoteに書いてる記事は
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軽く妄想しては、顔がニヤニヤしてしまうのだった。
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