各分野、トップクラスの講師の授業が受けられる。これが一番の魅力。

(この記事は5分で読めます。)

写真:佐渡島 (新潟県)

Date:2020/2/20

この記事は筑波大学理療科教員養成施設

(自立教科教員免許一種を取得できる世界で唯一の施設)

が在学生の声をまとめたものです。

大渕  真理子 さんへのインタビュー

全盲の彼女は東京で一人暮らしをしながら

教員を目指しています。

彼女の作るお弁当も掲載しています!

出身校:筑波大学附属視覚特別支援学校

2019/4 入学(一般入試合格)

2021/3卒業見込み

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インタビューした人・記事を作成した人

 Kubota Satomi

はじめに

インタビューを引き受けてくださった際

「ここでの学びや生活は、とても有意義です。

もっと多くの学生に来てもらえたらと思うので

喜んで協力させていただきます。」

そう答えてくださいました。

大渕さんのこの言葉が

公式の「note」「YouTube」twitter

を同時に誕生させてくれました。

また、事前にお知らせした質問内容に対しては

「1つ1つが深い内容なので、しっかり考えて回答したい」

そう返事をくださりました。

インタビュー当日、やわらかい香りをまとって

肌色に似合う口紅をされていて、

いつもと違う雰囲気にドキドキしてしまいました。

インタビューの中にお弁当の写真があります。

マカロニサラダと卵焼きは手作りです。

特に「卵焼き」

わたしは目を閉じて卵焼きに挑戦しましたが、

想像以上の惨事でした。

フライパンがまだ温まっていなかった

卵がまだ固まっていなかった

これで、ご想像ください


一人暮らしの心構え

Q.1
東京で一人暮らしを始めた頃、街を歩いていて感じた事を教えてください。

駅や街で声をかけてくれる人が多いです。買い物の際にも、障がい者の対応に慣れている人が多くて安心でした。また都会の視覚障害者もフットワークが軽くてアグレッシブだなと驚きました。私も積極的に外出し附属視覚時代の友人と定期的に会い、交友を深めています。


Q.2
何度か危ない場面があったそうですが、どのような場面でしたか?今も多いのでしょうか。

新潟の時もそうですが赤信号を気づかずに渡ってしまう事があります。また、東京は人が多いので人や自転車と白杖が接触する事もありました。一番怖かったのは走ってきた小学生を白杖に引っ掛けて転ばせてしまった事です。東京キャンパスの周りは学校が多く、登下校の時間帯は多くの子どもたちが歩いているので、いつも注意を払ってゆっくり歩いています。その他では、東京の横断歩道は長いので渡りきれない事もあります。

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Q.3
全盲の大渕さんが、住み慣れた場所を離れて東京で生活する事にご家族の反応はどうでしたか。

初めて家を出たのは高校生の時です。その時の家族の思いは、住み慣れた場所を離れて、知らない土地でいい事も悪い事も含めた多くの経験をしてほしいというものでした。最初は寄宿舎での生活だったため、家族の不安は少なかったようです。社会人の時と理療科教員養成施設在学中の今、一人暮らしをしていますが、家族は不安なこともある一方、自立の為の一人暮らしなのだと割り切っているところもあるようです。

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大渕さんの手作り弁当。ただ感動です。元気をもらえるので私の永久保存画像です。


Q.4
新潟で社会人をされていた時に一人暮らしの経験をされているそうですが、寮生活を一度挟んでからの東京での一人暮らしは、新潟と比較して戸惑いはあったのでしょうか。

新潟なら何かあれば親に頼れるという意識がありましたが、東京ではそうはいきません。例を挙げると、台風19号の時は本当に困りました。お年寄りや体が不自由な方への早期避難の勧告が出ても、暴風雨の中で外に出る恐怖と避難場所がわからないこと、行ったところで人の手を借りないといけない事、様々な不安要素があり自宅待機をしていました。今は、災害や不足の事態には自分で対応しなければならないと気を引き締めています。

※文京区避難場所はコチラ


社会人からの受験の難しさ

Q.1
社会人からの合格者も施設には多いですが、もし社会人の時に出願していたら、どのような勉強方法をしましたか。

卒業して数年後、正社員として働きながら独学で合格することは難しいと、私は実体験から思います。実は1度不合格になりました。最初の受験は正社員からパートに雇用形態を変えて時間をつくり勉強しましたが、過去問と学生時代の教科書とノートしか頼れるものがなく、小論文、英語や実技などの傾向と対策が不十分でした。翌年2回目の受験のために筑波大学附属視覚特別支援学校に入学し再挑戦の後、合格した経験があるので、そう思います。


1年生のカリキュラムを振り返って


Q.1理療科教員養成施設で1年過ごし、授業の事や施設の事で、戸惑いやイメージと違ったことはありますか。


スライドを使用する授業が多い事に最初の頃は戸惑いました。スライドが見えない事が試験で不利になるのではと心配していたからです。実際はそんな事はなく、点字で配られた資料とスライドは一致していますので大丈夫です。
もう1つは、ノートパソコンが必須だと感じました。授業中に使う事もありますし、授業ファイルがアップロードされるシステムにアクセスする必要もあります。私は入学前に購入しましたが、持ってない人は困っていました。すぐにノートパソコンの購入ができない場合は、大学のパソコンを使用するか、家にあるデスクトップパソコンを使用するという手もありますが、必須だと思います。

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「点字情報処理室」内部をYouTubeで紹介中 コチラ


Q.2本施設の授業は専任教員4名と多数の外部講師で行われており、各分野のエキスパート揃いです。受けてみてどう感じましたか。

これが一番、理療科教員養成施設の魅力だと思っています。醍醐味です。まさしくエキスパートの先生の授業ですし、ここでないと聞けない話が多く、濃密な2年になると思います。


Q.3 1年のカリキュラムを振り返って、特に魅力を感じた授業を教えてください。

理療基礎実技、特別支援教育概論です。
理療基礎実技は教員に必要な知識や技術が学べて魅力的でした。座学も大切ですが、治療室や臨床に関わる授業で、実技の大切さを実感できます。
また、ワゴンにぶつかったりベッドにぶつかったり、全盲の学生には空間把握が難しいのですが、授業の中で感覚認知を鍛えられると思いました。
特別支援教育概論は視覚障害だけでなく障がい児全般の勉強ができます。現場の先生に教授いただくため、新鮮な情報に触れられ、基礎的な特別支援学校の概要を知ることができ、考えさせられる授業でした。

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魅力を感じた授業「理療基礎実技」は「実習室」で行われます。内部をYouTubeで紹介中 コチラ


Q.4 2年生を前に特に気になる授業、力を入れたい授業を教えてください。

教育実習です。教員養成課程の根本となる授業のため、1番の柱だと思っています。学校での座学や実技では教授いただく立場ですが、現場に立ち、教える側に回りますので、本課程の目的を実感できると重要視しています。
一朝一夕でできる事ではない、社会人マナーを日頃から意識して実習に臨めるよう、備えています。


Q.5 卒業後の進路はどのように考えていますか?

教員一択です!希望する勤務地もありますが、1年目で希望地にというわけではなく、長い目で見て5年程は経験を積みたい思いもあります。理療科教員養成課程の学生は年齢も幅広いのですが、私は社会人を経てから教員になりますので、希望は出来るだけ早い段階で安定した環境に身を置き、仕事と生活を充実させることです。



受験生へのメッセージ



理療科教員養成施設は専門知識だけでなく、責任感、社会人として、教員としてのマナーが学べる場所だと私は思います。
もちろん一概には言えませんが、本施設に2年在学し教員になった場合とそうでない場合とでは、今後に違いがでるのではと過ごしてみて感じています。
トップクラスの先生方にご指導いただき、臨床、教育実習、研究と具沢山で全てが有意義です。確かに、いい事もある反面大変な事もあります。ですが、2年間の全てが自分にプラスになる経験だと思って過ごして欲しいです。


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