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鳥・虫・草木と楽しむ オーガニック植木屋の剪定術ーおわりに

この3年、本書を書くために、頭の中はいつも剪定のことでいっぱい。
道を歩けば住宅街やカフェ、街路樹に植えられている木々が気になってしかたない。
実際、仕事で剪定をしているとイレギュラーなことばかり。ひとつとして同じ枝ぶりの木はないし、毎年新しい枝が伸び、ふりかえ剪定をするたびに少しずつ樹形を変える。これが同じ樹種かと思うほど枝ぶりの違う木に出会うこともある。
つまり、剪定に関してはなかなか教科書どおりにいかないということだ。
それでも、あえて私たちが剪定の本を書いたのは、剪定の基本的な考え方や樹種ごとの基本情報とアドバイスをもとに、みなさんに木とのつきあいを楽しんでもらいたいから。

本書を書くにあたって、とくに大変だったのは、庭木の剪定前後の写真だ。仕事に夢中で剪定前の写真を撮るのを忘れたまま切ってしまえば、もう後の祭り。その逆に、帰り支度に追われ、剪定後の写真を撮り忘れたり。そうかと思えば、無事にビフォー・アフターを撮れたものの、帰宅してから落ち着いて見てみたら、まわりの樹木の緑と重なり合い、シルエットがよくわからなかったこともある。
それでも、締め切り間際になって、写真がほしいと思っていた樹種が現場にあったときの喜びと言ったら言葉につくしがたい。まるで、庭のすべてのものたちが、この本を世に送り出すために総力をあげて協力してくれているかのようだった。
そして、本書を書くことで、私たち自身もあらためて木と向き合うことができ、また、オーガニック・ガーデンの可能性を再発見することもできた。(中略)

木に「こんなにされちゃってね……」と言われるよりも、「剪定してもらってさっぱり気持ちよくなったよ!」と言ってもらいたい。そんな思いを込めて、紹介した92種類。私たちの長年にわたる植木屋人生で、自分たちが知りえたこと、経験してきたことを出しきったつもりである。このような本を書けたことを本当に幸せに思う。そして本書がみなさんのお役にたてれば幸いです。

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