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ボトルネックをコミュニケーションで解消する(2)〜伝達指示係を決め生産性3倍

こんにちは。企業変革コンサルタントの小野司です。

企業変革に取り組む若きリーダーさん、そしてコロナ禍で、企業変革に取り組まれる企業さまに、変革のヒントをお届けしています。

前回はタテ型組織をヨコ型に変えるということを書きました。

今日は、ボトルネックの伝達指示係を決めてコミュニケーションを図る方法について書きます。

ボトルネックは、現場を熟知しているリーダー、ベテラン、エースのカンや経験からもある程度は分かります。

しかし、多くのメンバーは分からないことが多いです。受注状況の全体像が分からない。各工程の作業時間が分からないなどです。そもそも他工程の作業自体が分からない方もいます。

作業者は自分の工程の状況は分かっている必要があります。しかし、他工程は分かっていなくても支障がない場合も多いのです。

一方、現場からは、全体の状況がわからない、情報がない、という「不」(不平、不満など)はよくお聞きします。

それに対し、リーダーからは「伝えているのに、、」「影響がないから伝えていない。」ということは聞きます。

現場の「不」を解消する。コミュニケーション方法を変える。それは、現場のモチベーションアップにつながります。

その方法の一つとして、ボトルネックの伝達指示係を置くことを紹介いたします。

ある会社の事例です。工程が1階から始まり、2階で次の作業をし、1階に戻り終了するいう流れになっていました。1,2階とも複数の工程がありました。メンバー各自の担当工程を持っていました。
手すきの時間が発生すれば、1階グループ内、2階グループ内、それぞれで忙しい工程の助けに入っていました。
しかし、1、2階間の相互に行き来しての支援は行われていませんでした。

作業者が、階をまたいで助けに行っている間に、自分の工程で新たな作業が生まれることがあります。それがおろそかになるのが心配ということもあります。

多品種少量生産で、イレギュラーな生産も時々入りました。また、特殊なスキルを必要とする生産、緊急対応もよくありました。
しかし、ルーチンに近い作業は、1日の作業のピークとしては、1階グループは始業後と定時前、2階グループは日中、という大きな傾向はありました。
1階グループの作業員は、日中は手すきの時間があるにもかかわらず、残業になることがありました。
作業員の多くが、30〜40代の奥さま方がメインでした。退社後、保育園に子供を迎えに行く方、スーパーなどに買い物にゆきご飯の支度をされる方、介護されている方など、定時退社を希望される事情をお持ちの方が多かったです。

家でも家事に追われ忙しく働かれていました。ちょっとのムダも起きないようにしていました。

会社では、手待ちの時間があり、しかも残業になることに、大きなムダを感じていました。それが、最大の「不」でした。
現場からのアイディアの一つが、情報指示係をアサイン(配置)することでした。役割は、ボトルネックを見つけること、非ボトルネック工程の作業員をボトルネックにつれてくることでした。

情報指示のネーミングの意図は以下です。「情報」がボトルネック情報を伝えること、「指示」が非ボトルネックの作業員の他の工程への作業指示をすることです。

一方、特殊スキルを要する作業や緊急作業により、製造の流れが乱れることに対しては、それ専門の担当者をアサインしました。ルーチン作業とは別にしました。
製造のナンバー1とナンバー2が、特殊スキル作業、緊急作業の担当になりました。なぜなら、ナンバー1、2でないとこなせない作業が多いからです。
作業指示係はナンバー3が担当しました。ボトルネックを見分けられること、非ボトルネックの作業員を見つけられることができるのは、ナンバー3くらいの熟練したスキルのある人が必要でした。

ナンバー1、2、3が抜けますと、ルーチン作業の実作業者が不在になります。ナンバー1,2,3がもっとも生産性が高いのにかかわらず、ルーチン作業から抜けるのです。

これで現場は回るかという問題がありました。白熱した議論になりました。しかし、やってみますとできました。

ナンバー1、2、3が抜けても、その作業時ができないだけで、周りで別の作業はしています。ですから、いつでも聞けますし、教えることもできます。
また、1階グループの人が2階へ行ったり、その逆も生まれました。みんな作業を広く覚えて行きました。自然と多能工化が進みました。
また、奥さま方の家事で養われた知恵が、工程の随所に生まれました。残業なく作業を終わらすという奥さまパワーも大きくなりました。子供のご飯支度のために早く終わらそうとするパワーなどです。

その結果、変革活動前は600ピースであった一日の製造量が、5ヶ月後には2000ピースを超えるようになりました。

若き変革リーダーのみなさま

伝達指示係をおいてコミュニケーションの仕組みを作るイメージはつきましたでしょうか。

ボトルネックを見えるようにすること、非ボトルネックの作業員に助けに入ってもらうことの効果はわかりましたでしょうか。

何度か指示を受けて助けに入ると、ボトルネックに入るタイミングがわかるようになりました。ボトルネックがわかるようになりました。そして、自発的に助けに入るようになりました。

現場作業者の「不」の解消がモチベーションにつながるイメージはつきましたでしょうか。

上の事例では、生産量が3倍以上になりました。ヒト・モノ・カネを使わず、さらに残業時間を減らしてです。

本事例の場合、奥さま方の定時退社するというモチベーションはありました。それとともに効果的だったのが情報伝達係をアサインしたことによるコミュニケーションの仕組みを作ったことです。

最終的には、メンバー全員が、ボトルネックを意識し、それが明確になりました。ボトルネック解消のために主婦の知恵が結集されました。

参考になればありがたいです。




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