映画「劇場」の感想

友達が、映画を見に行かないかと誘ってくれたので、又吉直樹原作の「劇場」を見に行った。

今どきの恋愛映画の感じと思っていたが、思ったよりも強烈だったため、鑑賞して一日たった今でも感情がぐちゃぐちゃではあるが、感想を残したいと思う。(※ネタバレあり)

まず、このお話は小さな劇団で脚本を書いている男性と、

女優志望の女性の物語だ。

二人は出会いこそ街中での声掛け(俗に言うナンパ)から始まるが、ほどなく、恋人同士になる。

その恋人同士での日々を重ねていくなかで、もちろん2人とも年齢を重ね、キャリアプラン、ライフステージが変わっていく。

そこで、互いのボタンのかけ違いが目立つようになる。

変わらない男性と、先を見据える女性、

先を見据える女性はそのかけ違いに焦りや不安感を抱き、どんどん自分を保てなくなり壊れていく。


私には、きっと こんな我武者羅な恋愛は出来ないだろうから、ある意味でその真っ直ぐな危うさが尊かった。


ただ、好きだった。でも、互いに幼かった。

主人公の男性は、いつまでも不安定な足元ではいけないと分かってはいても、自分の存在証明のために夢にしがみつく。

もしかすると、もう執着に近い感情かもしれない。途中でそれをやめてしまうと、自分のこれまでを否定することになる。

演劇に向き合うことが、彼が社会と繋がりを持つ唯一の方法であり、生きている価値だったのだと思う。

そんな不器用な彼にとって、観客や団員の率直な意見はいつだって凶器だろうし、一番その意見の意味に気づいてるのは、きっと本人だ。

一方、彼女はそんな彼に寄り添う慈悲深く、心の広い包容力のある女性として、描かれている。

正直のところ、映画で描かれた女性は、とても優しい女性だったので、終始男性の方に嫌気がさしてしまった。

ただ、女性側は最後に「あなたが居たからこの街でここまで頑張れた」と言う。

つまり、不安定な彼と自分自身を重ね、同調し、ずっと前に進むための「励み」にしていたのだ。

そして、「あなたは何も悪くなくて、何も変わっていない。私が勝手に変わってしまっただけ」と言って、田舎に帰っていく。


完全に、私の主観になってしまうが、他人の人生を自分が生きることはできないし、他人をコントロールすることはできない。

誰かと寄り添って生きるとき、どちらかが自立心を失うと、きっといつか どちらかが支えられなくなり、ポキっと折れてしまう。

だから、いつだって互いを尊重し、時には協力し合い、自然に高め合えることは必要だ。

才能に嫉妬するだけでは、何も得られない。

前に進むために必要なことを、その時々で吸収していきたいと強く思った。


東京は、夢に溢れた街だ。

夢を持った人が集まる街だから当然だけれど、その夢を掴めるのは一握り。

夢に破れた人を、指差して笑う人もいるだろう。

けれど、笑われたことに心傷めなくていい。

夢を掴もうと、重ねた日々が尊いのだ。

泥臭くたって、自己嫌悪に満ちたって、マイナスの感情に押しつぶされそうな日々だって、真っ直ぐになりたい自分を描いていたはずだ。

それが出来る人すら、一握りだ。

私は、夢でなく普通の人生を歩むことを選んだ人間だから、夢を追う人々の目の輝きがいつも眩しい。

そういう人たちが夢を語るこの街が、

にくくて大好きだ。





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