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「家電塗装」という新しい趣味。

人には〝体験重視型〟のタイプの人と〝思い出重視型〟のタイプの人がいる。体験重視型はその瞬間瞬間で感じられる経験を大切にするタイプで、思い出重視型は体験したことを振り返るのが好きなタイプである。夕日を眺めて楽しむ派か、写真に撮って楽しむ派かだ。

私はプラモが好きで、かれこれこの5年でガンプラF1戦闘機等ジャンルにこだわらずさまざまに作った。100個か200個ぐらいに及ぶのである。

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が、制作したプラモをあまり取っておいたり飾ったりしておらず、ほとんど捨てているから私も体験重視型と言える。

そんな私が「飾らなくていいけどとにかくなんか作りたい、でも捨てるのは若干もったいない」という矛盾した欲求の果てに行き着いた答えが「家電塗装」なのであった。

最近アマゾンで注文したプラモがなかなか届かなかったことがあって思い付いた。非プライム会員への風当たりが日増しに強くなっている。プライム会員のサービスがいいのではなく、非会員へのサービスが悪くなっているだけなのであるが、うれしさもかなしさも結局相対的なものだから仕方ないのかもしれない。いずれにしても暇なのでちょっと扇風機の羽でも塗ってみようと思ったら意外と面白かったのでちょっと君にも紹介しようと思ったのである。

トラブルで目的地まで到着できず停まってしまった、しかしそんな場所に、生涯忘れられない風景が広がっているということは往々にしてあるのだ。

■扇風機の羽は最初の家電塗装に最適

家電塗装はプラモ塗装と違って破壊してしまうことが怖い。プラモなら「あ、失敗したー。」で済むが、たとえば炊飯器の色を塗って失敗したら今後米が一生炊けなくなるなど日常生活に影響が出る。

そこで白羽の矢が立ったのが、扇風機の羽である。取り外しも簡単、精密機械でもない。

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👆2000円ぐらいでよく家電屋で売っている安物のユアサというメーカーの扇風機を私は使っていた。綺麗とは言いがたい。(ちなみに私はフロントカバーはしない主義。)

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👆羽。

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👆こんな風にメタリックに仕上げられる塗料が今はあるのだ。扇風機をこんな風にきんぴかにしたら面白そうでしょ?

■まずサーフェイサーを吹く

塗装をする前に下地を吹くと、塗料の〝のり〟がよくなるのである。

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しかしサフの役割はそれだけではなく表面の傷を〝四捨五入〟する、すなわち浅い傷は埋めて、深い傷を残す傷を目立たせてくれる役割もあり、それによって、ぱっと見きれいに仕上がっているように見えても、塗装をしてみたら傷があった……。という展開を防ぐ役目もあるのである。

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👆実際扇風機のプロペラも一枚一枚の羽の間に、いわゆる成型の際に生じるパーテーションラインという出っ張りが。(写真じゃ見えにくいが)。

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👆早速パーテーションラインをやすりで削って平滑に。削りながら、「パーテーションライン」という言葉は「パンティライン」と少し音が似ていると思った。

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👆全体の色々な傷を平滑にして

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👆再度サフを吹く。

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👆こちらは中心部の留め金だが、「とめる」「ゆるめる」みたいな指示も流石に覚えたので、ヤスリで削った。

■ツヤあり黒

メタル感が出せるのは、「プレミアムミラークローム」なる塗料である。

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この塗料はつやありの黒に乗せると一層キラキラ感が出る特質があるので、まずツヤあり黒であるが、しかしさらにその前に一工夫。

羽の一枚に、控え目に、青色の細いラインを一本入れたらお洒落な感じ涼やかな感じに仕上がるのではないかと私は考えたのである。

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👆まず青色を吹き、

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👆その上にこのように細いマスキングテープを貼って、これですべての塗装が終わってからこのマスキングテープを剥がすことによって青色のラインを出すわけだ。

■誤算

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👆黒を吹いた。醤油を塗料にしてもよかったかもしれない。

ここで2つ誤算が生じたのである。

1つ目は扇風機の羽の「でかさ」で、普段プラモなら車のボディの全体を塗ってもまだ半分ぐらい余っているはずなのに、あっという間に黒の塗料が無くなったのである。

黒ならまだいいけれども、この面積に高価なメタル塗料を乗せると大赤字なので、そこで羽をメタル塗装に仕上げることは中止し、中心部の留め金部分だけにした。

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👆留め金部分だけメタルに。

■第2の誤算

2つ目の誤算はマスキングテープである。

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👆ここまではいい感じに青色が出た。

かなり羽の表面が汚なかったらしく、マスキングテープを剥がして行くと、一挙にサフ、黒塗料もろとも剥がれてしまったのである。

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👆少し新潟県である。

他の部分はとりあえず綺麗に黒く塗れているのではめ込んでみたら、留め金のメタリック感もなかなかいい感じだった。

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👆これで新潟県さえなければと思うと非常に悔やまれる。

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👆プラモ制作で余っていたデカールを貼って誤魔化そうと試みる。

■さらに別のところも塗る

デカールを貼ったことで、偶然なんだか羽の中心がF1のタイヤのように見えなくもないことに気付いた私は、ここでむしろもっとF1カーを意識して、扇風機の土台部分の色も塗ってみることにしたのである。

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👆イメージするF1カーは、このTyrrell003というマシン。1971年モナコGPを制覇した伝説の青だ。

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👆大企業のスポンサードを受けないプライベートチームでありながら、他チームを圧倒したティレル・ブルーの残影は、企業の進出が激しい今のネット世界を生きる僕たちも見習うところが多いのではないだろうか。

このマシンのデザインで一番目立つのは、なんといってもフロントウィングのカーナンバー、少し傾いた11である。それを扇風機の土台の部分で再現したら面白そうである。

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👆早速マスキングして

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👆黒を吹く。

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👆出来たのである。

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👆いつもほこりだらけだった扇風機から一転、磨き上げられたプロペラは少し風が強過ぎて寒かった。

■終わりに――家電塗装の未来

今回はたまたま途中からF1カーみたいなイメージで配色を決めたが、今度は配色のコンセプトみたいなを最初から決めるとよさそうで、そんな風に今後は炊飯器やプリンター、時計などもこれから挑戦したい。

君も暇ならやってみよう。

👆家電塗装シリーズ第2回。キーボードをドット絵風に塗装することに挑戦。

👆第3回。プリンターをコンクリ打ちっぱなし住宅に挑戦。しかし……

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