見出し画像

ランニング中のプレイスタイル。

「体がなまってきたな…」
そう自覚すると、思い立ったように走ることにしています。健康への意識です。だいたい深夜が多いのですが、近所をランニングしていると、体を動かしているうちに自分が一番体を動かしていた頃の思い出が蘇ってきます。そうです。「テニスプレーヤー」としての血が騒ぐのです。私はかつて、テニスプレーヤーでした。中・高・大とプレーヤー時代を過ごしてきたおかげで、ランニング中に抑えきれないテニス熱が爆発すると、私は人通りの少ない細道に進路を向け、そこで「ボレー」のステップをしながら走り出すのです。右に左に打ち分けるイメージをしながら、踏み出した前足を進行方向と垂直に、かかとから着地、踏み込みと同時に自然と開く体と共に腰も回転させ、ラケット化した腕と手のひらでもって飛んでくるボールをミートさせます。もちろん目線はミートした手のひら。面がブレたりあちこち向いていたら相手のコートに返りませんから、丁寧に狙いを定め、ミートの瞬間のインパクトも意識して打ちます。そして、ボールの行方を追いながら再び体を正面に戻すと、今度は逆サイドを同じく踏み込みから行い、逆、またその逆と繰り返しながら前進していきます。その間、たとえば二、三人の方とすれ違っても、もうそれはなんか、「しょうがない」ということにしています。こちらはテニスプレーヤーですから。プレーに集中しなければなりませんので。「人にみられているので試合を棄権します」なんてテニスプレーヤーの話は聞いたことがありません。そんな考えはプレーヤーバイブスに反します。別にロッキーだってシャドーしながら走っていたわけですから、ツカモトだってボレーしながら走ったっていいじゃないかと、そういう心でランしているわけです。

そうして走っていると、「おいプレーヤー。おまえ、ボレーだけでいいのか?」という内なる声が聞こえてきます。確かに、ずっと左右に打ち分けるボレーのステップで走り込んできましたが、イメージの中ではずっと相手に打ち返されていることになっています。勝敗や試合展開めいたものはどこか棚に上げて考えていました。これではテニスプレーヤー失格です。こちらはテニスをしているんだから。ちゃんと決着をつけないと。ここで、相手とのラリー展開を意識します。まず、ベースラインから相手のバックサイド深めにボールを打ち込み、そのスキにネット前に出る。すると相手がこちらのバックサイドの足元辺りにボールを沈めてくるので、それを腰を落としてちゃんと拾い上げるイメージでボレー。今度はフォアサイドに来た球を、相手の体ド正面深くにボレーで流します。すると、相手はフォアかバックかどちらで返せばいいのか一瞬迷いが生じるので、甘めの浮き球が返ってきます。…きました。チャンスボールです。高校部活用語で言えば「チャンボ」です。ここでチャンボが返ってきました。やっと掴んだチャンボです。一気にスマッシュでショット、したいところですが、ここで忘れてはいけないのが、今はランニング中だということ。ランニング中のテニスプレイ中なんだから、急に腕を高く振り上げて、その体勢をキープしたまま二、三歩走り、その後に「しゃっ!」みたいなプレーヤーバイブスで振り下ろしてしまうと、流石に通行人に引かれてしまいます。ランニング中の「しゃっ!」は許容されていません。せっかくここまで完全完璧な許容範囲内で来ているというのに。スマッシュではすべてが台無しになってしまいます。別のウィニングショットを検討する必要が出てきました。ガツンと決めたい…でも普通に強打のボレーではどこか物足りない…ここで、日本を代表する決め球が浮かんできました。そうです。「エアK」です。錦織圭選手の決め球、エアK。これならランニング中の前方へ踏み出す動きを生かして繰り出すことができます。強く踏み込んだ前足でそのまま軽く飛び上がり、空中で体の回転を利用して、テイクバックしていた手のひらでもってボールを強打しながら一気に体重もインパクトの瞬間に乗せていきます。もちろん目線は手のひら。体の軸はブラしてはなりません。神経を集中させ、シュミレーションを開始します。するとどうでしょう。流れるような一連の試合展開から、見事なウィニングショット「エアK」が決まったとともに、知り合いの後輩芸人に遭遇したのです。

後輩「え、あ、、」
自分「あ、、おぉ、」
後輩「おはようございます…」
自分「…あれ、前に無限大行ったとき、ライブあったでしょ?その後のライブに呼んでもらってたから、すれ違いになっちゃったからあれだけど、楽屋いるかなと思ったらいなかったから」
後輩「ああ、はい、、」
自分「この辺なんだもんね。今度ごはんでも行こ、お疲れ」
後輩「はい、ありがとうございます…」

有無を言わさず走り去ります。やや距離遠めの後輩芸人に見つかり、一番言い訳のつかない状況。まっすぐ引いていたその目は、間違いなく一連の謎行動からのエアKを捉えていたはずで、こちらもそれを踏まえた上で、どうにか平常心であることを見せたいがためにダラダラと意味のない言葉を並べる始末。これ以降、ランニング中のテニスを自粛しています。そんな、ラブゲームで完敗した話ですが、そんなことよりも連日ライブで新ネタをおろし続けていますので、よかったらご覧下さいませ。


#ラブレターズ #習慣にしていること #エッセイ

この記事が参加している募集

習慣にしていること

少しでも感想、応援いただけたら嬉しいですし、他の記事も合わせて読んでいただけたら最高です!