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読むこと

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本のことや、日々の読書の記録です★
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和泉悠『悪口ってなんだろう』|悪口の正体とその対処法

和泉悠『悪口ってなんだろう』|悪口の正体とその対処法

悪口っていけないこと?なぜいけないことなの?
そう聞かれると、確かになんでなんだろう?と思う。

人を傷つけるから? 空気を悪くするから?
いいえ。本当に悪口が悪いのは“p.30 序列を作り出し、誰かを劣った存在として取り扱うこと”にある、と著者は説きます。

だれかを「アホだよね」「バカだよね」「ノロマだよね」と言う時。それを言う本人が、言われる相手と比較して「アホでなく」「バカでなく」「ノロマ

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石沢麻衣 著『貝に続く場所にて』|記憶は惑星のように巡ってくる

石沢麻衣 著『貝に続く場所にて』|記憶は惑星のように巡ってくる

165回芥川賞受賞作。難解な小説なのに、心に残った。たぶんこの本は、難解なままで、感想なんて文章にしなくてもいいくらいの作品。だけど、ちょっと言葉にしたいからちょっと書く。

本書『貝に続く場所にて』は、ドイツ在住 & 東日本大震災の被災者である著者が書いた震災小説。

主人公は、ドイツに住んでいる。震災で行方不明となっていた野宮が、主人公のもとへ幽霊となって訪れるところから物語が始まる。オカルト

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坂元裕二『初恋と不倫』|初恋って覚えてる?

坂元裕二『初恋と不倫』|初恋って覚えてる?

初恋って覚えてる?

僕は小3のとき。
確か、男女4〜5人くらいで皆んなで勉強しよ〜みたいなことになって、学校が休みの日に女の子の家へ皆んなで行った。

一通りガチで勉強して、でもやっぱり小学生だから、暫くしてもう遊ぼう〜ってなって遊び部屋に移動することになった。

小学生の時からデリカシーのない僕は、初めてお邪魔した家にも関わらず、真っ先にその部屋へ移動した。次に入ってきたのは、その家主の女の子

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169回芥川賞受賞作をガチで予想する

169回芥川賞受賞作をガチで予想する

〈追記〉
7/19(水)夕方に169回芥川賞が発表されました。
芥川賞は市川沙央さんの『ハンチバック』!!
おめでとうございます!!🎉🎉

***

168回から始めた趣味「芥川賞受賞作を予想する」。
今回は候補作5作品全て読めたので、noteに講評をまとめて、ガチで予想してみようと思います!!

まずは各書の講評!その後、予想を載せています。
*読了した順です。他意はありません。

① ハン

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〈第169回芥川賞候補作発表〉純文学にハマるなんて思ってもみなかった

〈第169回芥川賞候補作発表〉純文学にハマるなんて思ってもみなかった

6月16日。この日は、朝4時30分に目が覚めた。

二度寝をしたいのに、なかなか眠りに落ちてくれない。少しずつ心臓がトクントクンとして、全身に血を送る力が強くなる。手や足のほうに血が行き渡るのを感じ、これは起きろの合図だなと、体にしたがって渋々起きる。

今日は芥川賞候補作発表の日だ。

芥川賞・直木賞の候補作は、なぜか毎回朝5時に発表される。誰が起きてんねん。と思うが、発表を楽しみにしていたので

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140文字の読書感想文Ⅲ

140文字の読書感想文Ⅲ

コンビニ人間 / 村田沙耶香

再読。2016年の芥川賞受賞作。思えば私と村田さんとの出会いの書でもある。初読の時点でも、まあ衝撃だったけど、コンビニ人間はまだまだ序の口だったと、のちに知ることになります。初読の時には気づかなかった主人公 古倉の普遍性や強さみたいなのに、再読することで気づけました。

死にたくなったら電話して / 李龍徳

あー初美が魅力的すぎる。幻想に誘われてついて行ったら、そ

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井戸川射子 『この世の喜びよ』|“私”を取り戻す物語

井戸川射子 『この世の喜びよ』|“私”を取り戻す物語

オンラインで読書会をした。課題本は『この世の喜びよ』。168回芥川賞に選ばれた作品だ。私はこの作品が大好きで、文章に仕込まれた仕掛けに震えた。

ところが、この作品は結構好みが分かれる作品で、「理解できない」「意味がわからない」と評する人も多い。今回の参加者の方の中にも同じように「理解できない」という方がいた。

別段それが嫌というわけではなく、ケンカするわけでもなく、それぞれの意見の相違を擦り合

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村田沙耶香『コンビニ人間』|対話のなさを描いた作品だと思う

村田沙耶香『コンビニ人間』|対話のなさを描いた作品だと思う

再読。あーやっぱり好き。
数年前。初めて読んだ芥川賞作品が『コンビニ人間』⁡だった。その頃、貪るようにビジネス書ばかり読んでいた私は「おれは、芥川賞だって読めるんだぜ?」ということを誇示することを目的に、芥川賞受賞作を読むことにしたのだ。それはつまり、世間からどう見られたいかを意識した結果だった。しかし、私のそんな浅はかな考えを見抜いていたように、見事にムラターワールドに引きずり込まれることになる

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140文字の読書感想文Ⅱ

140文字の読書感想文Ⅱ

ゴリラ裁判の日 / 須藤古都離

ごめんなさい。序盤、私は退屈して読んでいました。それはきっと、ゴリラの物語だと思って読んでいたから。でも、違いました。これは「私たち」の物語だったんです。

マザーズ / 金原ひとみ

とってもきつい読書体験でした…。特に子どもの虐待シーン…。でも、子育ての苦しみや孤独は、私たちのすぐそこにあって、それを解像度高く描いた作品だと思いました。この本に救われる人もきっ

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大谷朝子『がらんどう』読書感想文|「わたしには」選べない?

大谷朝子『がらんどう』読書感想文|「わたしには」選べない?

**

とある理由で恋愛ができない平井と、死んだ犬のフィギュアを作り続ける菅沼。アラフォー女性2人のルームシェア生活を描く本作。
『四十二歳と三十八歳。アイドルの推し活が繋いだふたりのコロナ禍でのルームシェア』って帯に書いてあって、どんなのほほん小説だと思って読んだら、ぜんぜん違った。淡々と描かれる日常と心理描写は、なんだか読んではいけない日記を読んでいるようだった。最後は泣きたくなったよ。

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140文字の読書感想文

140文字の読書感想文

がらんどう / 大谷朝子

とってもよかった…。
物語にはずっと平井の焦燥感と寂しさが漂っています。ラストは、泣けました。だけど、「よかった」と、私は思います。すばる文学賞受賞作。この賞の作品群、好きすぎます。

変身 / フランツ・カフカ

説明不要の古典的不条理小説。
主人公グレゴールが「変身」した理由。それは一切明かされません。意味も理由も与えられない物語は、逆に読者が作品に与える意味の自由

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自分に合った学び方

自分に合った学び方

いま『宇宙兄弟とFFS理論が教えてくれる-あなたの知らないあなたの強み』という本を読んでいる。

この本の骨子であるFFS理論とは、人のストレスを感じる事象の分類から、その人の強みや性質を5つの特性とその組み合わせで見抜く、といったもの。

その5つの特性には、先天的な2つの特性と後天的に身につく3つの特性があると記されている。

先天的な特性には拡散性と保全性の2つがある。
その2つの特徴はそれ

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デジタル社会と「深い読み」

デジタル社会と「深い読み」

いま、『デジタルで読む脳 × 紙で読む脳』という本を読んでいる。
タイトルの通りデジタル社会となっている昨今、デシタルが「読む脳」に及ぼす影響を脳科学の観点から述べている本だ。

結論を端的に述べてしまうと、デジタルで読むことのデメリットは「深い読み」が減ってしまうことにある。メリットは、ほぼない。

「深い読み」とは何かというと、文章やその行間、登場人物の行動や感情について深く考え、推察しながら

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「多読」について思うこと

「多読」について思うこと

僕は月に大体10冊程度の本を読みます。

読んだ累計数は覚えていないのですが、社会人2年目になってから読み始めたので800冊くらいは読んでるんでしょうか?(計算はザルです)

これだけの本を読んできて、思うことは「多読」ってほんとに良いものなのか?ってことです。色んなところで読書は推奨されているし、僕も読書はオススメしたいと思います。
しかし一方で、本を多く読むことの弊害というのも少なからずあると

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