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知らない秋の香りがする


ハロー。みんな元気? こちらは相変わらずだよ。

真夏の暑さにすっかりやられて、しばらく素麺ばっかりすする毎日だったけれど、噂の「経験したことのない夏」をそこそこ楽しんだよ。ビアガーデンも行ったしね。花火大会にも海水浴にも行けなかったけど、それは来年の楽しみにとっておこうと思うよ。


年明けから未曾有の事態が起きて、正直、塞ぐ日もちょっと自暴自棄になった日もあった。やんなっちゃうよね、どこにも行けない誰にも会えない、今日もどこかで誰かが苦しんでいて、びくびくしながら生活しなくちゃならないなんてさ。
でも最近やっと「生活はもとには戻らないんだな」という事がわかってきた。そしたら座り込むのをやめて、よっこいしょと立ち上がって、とぼとぼ歩き始めた。「ウィズ」とか「アフター」って言われてるやつだね。


進んでいく毎日の中で何か悲しいことや、つらいこと、情動を抑えることができない事態が起きたときに、人って生き物はその先に「元通りの生活」を望んでしまう。
でもよくよく考えたら、何かが起きた後に「元通り」になることなんてほとんどなくて、何かを乗り越えて(もしくは乗り越えられなくても共にあって)また生活をしていく、ということばかりなんだと思う。



すこし前のことになるけれど、とても悲しいことがあった時のはなし。

毎日そのことに頭も気持ちもとらわれていて、いつも悲しい、楽しいことがあっても思い出して苦しい、そんな日が続いていた。眠っているときだけは考えるのをやめていられるから楽だったんだけれど、目を覚まして「あれは夢じゃない、現実にあった本当のこと」と思い出す朝のその一瞬、本当に本当に気持ちも身体も、全部がバラバラになりそうだった。

その「悲しいこと」は起きてしまったからにはどうにも解決しようのない、ただ時が過ぎて気にならなくなるのを待つばかりのことだった。そうして毎朝思い出しては悲しい気持ちになる日々をしばらくやり過ごして、少しずつ心が「だいじょうぶ」になった。でも、その事実はなくなったわけではないし、今は思い返しても悲しくも苦しくもないけれど、綺麗さっぱり忘れてしまう事なんてやっぱりできないね。
そういえば地面が大きく揺れたあの日以降も、黒くて毛むくじゃらで陽気な四本足の妹を失ったあの冬も、そんな風にして毎日生きていたんだったなあ。


きっと今過ごしている毎日もそれとおんなじなんだな と、ようやく理解できた気がする。頭ではわかっていても、どうも気持ちがついていってなくてね。ようやくこの事態の中でどう豊かに、こころ穏やかに生活できるかを考えるくらいには立ち上がれた気がするよ。



経験したことのない夏が終わって、顔も見たことのない秋がきた。
すっかり朝晩は冷え込んで、数日前からストーブの電源を入れてしまいたい気持ちと相当戦っている。

友人から金木犀の香水をもらった。北海道は金木犀が咲かないから、知らない香りがする。少し大人っぽくて、落ち着く匂いだ。むかし母が使っていた香水に、すこし似ている。


知らない秋をこの香りと過ごす。
雪が降り始めるまであと少し、短くても色濃い秋にしたい。

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ハシモト ツグミ

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